神宮川本谷ゴルジュ帯にて

神宮川本谷


(天候)9月24日:晴

前日夜甲府駅に集合し、伊藤さんの車で道の駅はくしゅうに向かう。車から外へ出ると風が少し冷たい。ダウンジャケットを羽織って、いつものごとく軽く前夜祭。都会ではまだ暑い日が続くが、空気に秋の気配が漂い季節の移り変わりを感じた。

翌朝は道の駅から国道を少し進み、神宮川沿いの林道へ入る。昨年ヤチキ沢を遡行した時と同様、林道のゲート前に駐車して支度をする。ゲート前には、もう1台岐阜ナンバーの4WD車が停まっていた。

林道をしばらく進み、笹ノ沢出合先の堰堤を左から巻く。巻き道は明瞭だ。続く2基の堰堤は左岸側に階段が付いており、こちらも苦労せずに巻ける。
最後の堰堤の手前右岸からは日向沢が滝を懸けて出合う。

最後の堰堤と日向沢
最後の堰堤手前に日向沢が滝で出合っている

堰堤地帯が終わるとすぐに三連瀑が懸かる。高森リーダー少し思案していたが、左岸のルンゼから高巻きに入った。藪をガサガサさせて沢に戻ると、最上段の滝の上は岩盤が発達した沢床になっており、落ち口の先はトイ状の流れになっていた。

連瀑を越えると岩盤の発達した沢床
連瀑の上には岩盤の間をトイ状に水の流れが…

少し沢が明るくなると左右にガレルンゼが広がり、正面に15m滝が懸かる。直登している記録もあるようだが、今日は右岸のガレルンゼを上がり、適当なところから右へトラバースして高巻き、最後は懸垂下降で沢へ戻る。

さらにいくつかの小滝を越え、蛇行する7m滝を登ると超特大のチョックストンが乗った滝が目に飛び込んでくる。手前で右岸から鞍掛沢が出合うのだが、目は大岩に吸い寄せられる。チョックストンと書いたが、もはや挟まってないし滝の上の岩盤に特大岩が乗っかっている感じである。
周囲を観察した感じだと、右手の岸壁から落っこちてきたとしか思えないのだが、何だかまだ落ちて来そうな岩もあり下にいると落ち着かない。ここは、滝を直接登るのではなく鞍掛沢との中間リッジを登った後、右手へトラバースして滝上に出る。

神宮川のランドマーク特大チョックストン滝
鞍掛沢出合の本流に懸かる特大チョックストンの滝

大岩を越えると両岸が立ち上がって、ゴルジュ帯となる。ゴルジュ内は傾斜が急で、岩の積み重なった滝やハングした滝など連続した滝場となって切れ目が判別できない。詳細に遡行図を取ることも諦めて、自分のメモには「←→れんばく」と書いて誤魔化す。

とにかく、よじ登ったり、小さく巻いたり、時にショルダーを使ったりとせっせと高度を稼ぐ。高森リーダーによると、前に来た時より崩壊が進んでいて難しくなっているということだ。以前は、ロープを出したり、荷揚げ・ショルダーなどしなくても登って行けたらしい。ということでゴルジュ帯を抜けるのに2時間以上を要した。

ゴルジュの途中で振り返ると日向山の山頂部雁ヶ原一帯がよく見える。今日は天気もいいし、誰か人がいそうなのだが、遠いせいかよく分からない。帰ってから写真を拡大すると、ぼんやりと人影が写っているのが確認できた。

ゴルジュ内から望む日向山の雁ヶ原
ゴルジュを登りながら振り返ると、日向山の山頂部が見える

ゴルジュ帯で奮闘中は、水をかぶったり高い位置に手を置いて手首から水が入り込んだりすることも多くて、結構濡れる。寒い寒い日向に行きたい~と思うのだが、谷の切込みが深いのでなかなか陽が差し込まない。振り返って見える”日向”山のビーチに行きたいと、益体もないことを考えながら、陽の当たらないゴルジュの遡行を続ける。
日向を求めてゴルジュをせっせと登り、凡そゴルジュ帯を抜けたCo1480辺りで大休止になった。陽も高くなってきて、何とか渓の中にも日光が差し込んできてほっとする。太陽の力は偉大だ。

休憩地点の前後からは沢筋に苔むした岩が多くなり、渓の雰囲気が変わる。いくつか小滝を越えて、右岸にテン場によさそうな砂の台地を見ると、その先に逆相で黒光りした滝が懸かる。この滝を左岸の樹林から巻き上がると、上には傾斜の緩いナメ滝が続いていた。

逆層のスラブ滝
逆層のスラブ滝は左岸から巻いて越える
上部に続く傾斜の緩いスラブ滝
上部には傾斜の緩いスラブ滝が続いていた

スラブ滝の上で渓が少し狭まる。小滝をいくつか登ったところで、高森リーダーが何やら立ち止まって星野さんと話をしている。覗き込むと、赤茶色い岩盤から水が湧きだしていた。鉱泉のようだ。近隣の尾白の湯の源泉が赤湯なので似た成分なのかもしれない。
そして、この辺りからは傾斜の緩いスラブが続く渓相になる。ところどころで小滝が懸かりアクセントになっている。

鉱泉が湧き出していた
赤茶色の水が浸み出していた。みんなで鉱泉観察会
ナメが多くなってきた
ナメ勝ちの渓相になってきた
ナメが続く
上流部はナメの続く渓相

スラブ帯を登っていくと目の前に見るからに悪相の30m滝が現われる。とりつきはハング気味で黒っぽい岩質だ。直登せず、少し戻って左岸より巻く。巻き道は明瞭だが、巻いている途中から眺めると上にも滝が続いている。全部合わせると50mくらいになりそうだ。思わず「うわぁでかい滝…」と口をついて言葉が出た。ただ、よく見ると途中にテラス状のところがあるので、2つの連続した滝と見る方がいいのかもしれない。その場合は下段30m、上段15mくらいか。巻き道が分かり易いので、まとめて巻くいても15分ほどで上段の落ち口にピタリと出る。落ち口から上は再びナメが続く。

下部がハングしたスラブ滝
下部がハングした黒々とした滝が懸かっている
50m級の2連瀑
下からは見えなかったが、高巻きの途中で見ると50m級の大滝だった

大滝を越えてからさらに10分ほど歩くと、左手にところどころ草の生えたスラブの大きな斜面が広がり、その斜面の右懸崖から滝が落ちている。何とその滝が本流なのだが、初見ではなかなか見破れないような気がする。確かに、よく見れば足元の水流はその細い滝から続いているのだが…。

細い水流で落ちる本流の滝
スラブ斜面右手の崖に懸かる細い水流の滝が本流だ

本流の滝は登れないので、右から入るガレた枝沢を詰める。枝沢は、下から見ると狭まった先が絶望的な傾斜に見えるのだが、突っ込むと難なく(いや、息は切れるけど)登って行ける。10分ほどガレを上がると、左の斜面にうっすらとした踏み跡が出てくるので、そちらへ進むとすんなりと本流へ乗っ越すことができた。

行く手が狭まり傾斜が増していくが...
行く手が狭く急傾斜に見えて心配になるが、進んでいくと意外や、普通に登れる

降り立った本流は、すぐ上流で沢幅が狭まり3mの滝を懸けるが、右の乾いた壁から越えて進む。その上部も小滝が続くが、水もだいぶ細くなってきた。下山もそこそこ時間がかかるので、涸れる前に水を汲む。正真正銘の南アルプス天然水である。

本流に復帰した箇所に懸かる滝を登る
本流に復帰したところに懸かる3m滝は、乾いた右壁を登る

最後はザレザレの斜面をヒーコラ登り、続く草の生えた急斜面の踏み跡を辿って日向八丁尾根の登山道へ飛び出す。ここで、15時20分。ちょっと時間が押しているなあ…。ということで、急げ~と休憩もそこそこに日向山を目指す。

最後のザレた斜面を黙々と登る
最後はザレた斜面を、足元に気を付けながら登る
日向八丁尾根のしっかりとした登山道
八丁尾根の登山道は、思った以上にしっかりとした道だった
日向山手前からの富士山、鳳凰山、そして月
日向山の手前で見た富士山と鳳凰山。そして空には月が懸かっていた

登山道は立派で歩きやすい。鞍掛山との分岐15時55分。雁ヶ原着17時10分。まだ明るいが、秋の日はつるべ落としである。15分ほど休憩して下山を再開。北東尾根の山道を辿るが、途中でヘッデンを出す。

日向山手前の鞍部
日向山山頂も近い
夕刻の雁ヶ原
昼間は賑わったことだろうが、この時間には誰もおらず静かだ
雁ヶ腹から八ヶ岳を望む
日向山雁ヶ原から夕景の八ヶ岳を望む

ヘッデンを着けて下降を続けるが、真っ暗で周囲の細かい様子までよくわからないからか、1221.5mの三角点手前で北方向への尾根に乗るはずがどうも見逃してしまったようだ。三角点ピークを越えた辺りで方向を北に転じて降るが、最初は道もはっきりしているようにも見えたもののだんだんと不明瞭になり傾斜も増してきたので、やむを得ずロープで下降。尾根左手の沢に降り立つが、すぐ下流に堰堤マークが付いており素直に降りられないと面倒だ。いや堰堤なら階段なり梯子なりが付いていて簡単に降りられるのではないか、とひとまず沢型をそのまま下降していくとすぐに堰堤が見えた。上流側はほぼ埋まっている。左岸から巻き降りれないかと堰堤を乗っ越すと、上流との高低差は殆どなくそのまますたすたと歩いて行ける。その下にも古い堰堤(の跡)があるが、同様にすたすたと越せる。林道までは思ったより時間がかかったが、最後に少し急な斜面を数m降りると無事に林道へ復帰した。19時50分。やれやれ…。林道を急ぎ足に上流に向けて進むと、10分でゲート前に帰着。20時下山完了。

ただ、山行はおうちに帰るまでが山行である。今日は、東京まで電車で帰らなくてはならない…。電車はあるのか?
片付けは駅に着いてからということで、ひとまずみんなで車に乗り込み、40分ほど車に揺られて韮崎駅着。
特急は終わってしまったが、次の電車に乗れば全員家へはたどり着けそうなことが分かってひと安心。電車に乗れるよう全員身支度を整えるが、売店などは既に閉まってしまい食料などは入手できない。伊藤さんの車で近くのコンビニまで行ければよかったが、そこまでの時間もない…ということで、手持ちの補助食などを食べながら帰途に就いた。やあ疲れた。

ネットの記録などを見ると、神宮川本谷は1泊で歩いている記録も散見される。高森リーダーは、前回訪れた経験から余裕を持って下山可能と考えていたようだが、前回から比べても渓が荒れており、遡行に思った以上の時間がかかったように思う。
もともと花崗岩が主体のもろい地質なので、地形の変わるスピードは速いのだろう。遡行中に大岩の崩落などに巻き込まれると大事故になりかねないので、入渓には細心の注意を払いたい。…というか、会としてはこのルートはもはや入山自粛レベルの危険度だろうと感じた。


山行実施日:
2023年9月24日
メンバー:
高森(L) 星野 古巻 伊藤
山域:
山行形態:
コースタイム:
林道ゲート前P(7:04)-笹ノ沢出合(7:26)-鞍掛沢出合(8:55)-Co1480付近(11:25/50)-50m大滝(14:00/15)-Co1950地点(14:20)-本流Co2000付近(14:45)-日向八丁尾根(15:22)-鞍掛山分岐(15:50)-日向山(17:10/20)-林道(19:50)-林道ゲート前P(20:00)
地形図:
長坂上条・甲斐駒ヶ岳
報告者:
古巻

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