北秋川シンナソー~ヒヤマゴ沢(川越沢)

天候:晴のち曇

シーズンも終盤。日帰りでどこか手ごろなコースを設定できないだろうかと、いろいろと頭をひねる。近場であまり濡れずに歩けて、遡下降のできるルートをと資料をひっくり返して、北秋川上流部がよさそうと目星をつけた。遡行は、シンナソーが面白そうだが、下降する手ごろな沢を見つけるのに少し悩む。尾根を挟んだ隣のヒヤマゴ沢とセットの記録をよく見かけるのだが、それではあまり芸がないので、悩んだ成果の”芸”を入れて計画書を提出。

アプローチ

当日朝、星野さんを武蔵五日市駅でピックアップ。Googleマップで目星をつけていた竹の沢バス停付近の路肩が広くなっているところへ車を停める。
そこから、車道を上流に向けて徒歩15分。従来使われていた入渓点は立ち入り禁止となってしまったようなので、少し下流からアプローチすることにした。日向平集落右岸側の民家脇の階段から北秋川の流れに降る。すぐに惣岳沢出合で、さらに上流へ数分も遡るとシンナソーが出合う。帰宅後、ネットの記録を見ると、出合の辺りにも車道から下降する踏み跡があるようだ。

シンナソー出合の滝
シンナソー出合は、2段の小滝が懸かっていて分かり易い。

シンナソー遡行

シンナソーは小さな2段の滝で出合っているので分かりやすい。まずは、この出合滝を水流左側から越える。さらに小滝が続くが、沢幅が狭く水に入らずに進むのはちょっと難しい。この時期なのであまり濡れたくないので極力水に入らずに…と思ったのだが、しばらく進んでからは潔く諦めて、”消”極的に水の中を遡行する。

20分ほど行くと、少し大きめの滝が懸かる。2段のナメ滝だが、のっぺり気味で滑りそうだ。今日は安全優先でザイルを引いて登る。さらに15分で10m3段の滝になる。各段の高さはそれほどでもないので、フリーで越えられるかと思い下段を上がって先を偵察するが、中段が少し難しそう。結局、星野さんからザイルを受け取り、ザイルを引いて上がる。上段ものっぺり続きだったので、ザイルを出してよかった…という感じか。

シンナソー10m3段の滝
10m3段の滝。中間部がのっぺりでちょっと微妙な雰囲気…

この滝を越えると、沢はしばらく伏流になる。左岸の斜面がだいぶ崩れて沢を埋めている。これ以上崩壊が進むと、下流部の渓相が変わってしまいそうだ。

10分弱で再び水流が現れ、2条の滝が懸かる。落ち口近くに細い木が倒れており、ちょっと煩わしい。この辺りの左岸は植林地だ。その先の、丸っこい特徴的な岩のある滝は、直登すると濡れて冷たそうなので、右から巻いて越える。その先、3段の小滝を越えるとトイ状4mの滝が懸かるが、ここも濡れるのが嫌なので右の乾いた壁から小さく巻いて越えた。

丸く飛び出したような岩に懸かる滝
特徴的な丸い岩の滝は右から容易に巻けそうなので、濡れを嫌って右から巻く。
4mトイ状の滝を右から小さく巻いて越える
4mトイ状の滝は、右の乾いた壁を登った。

さらにその先で、沢は極端に狭いゴルジュとなる。水量は多くないので、水線に沿って狭い溝を体をくねらせるように進む。

シンナソー極狭ゴルジュの通過
極めて狭いプチゴルジュの通過は、水線に体をねじ込むように…

極狭ゴルジュの先は小滝が続いて、ちょっと倒木が気になるものの変化があって楽しいところだ。そして、小滝の続く先に大きめの滝が見えてきた。最後の大物15m3段の滝だろう。全体としては高さもあるが、巻くより登っちゃった方が明らかに楽そうなので迷わず突入!…が、一番下が結構微妙だった。どうやって登ろうと暫し試行錯誤の後、少々強引に突破し落ち口の小釜へ。中段、上段はホールドが比較的豊富で、さほど労せずに突破できる。後続は、落ち口の太い倒木を支点にして確保した。

15m3段の滝の登攀
写真真ん中の丸岩のところまで登ってしまえば、あとは労せずに登ることができる。

大物を越すと、もう何もないのかと思いきや、小滝ながらのっぺりしていて通過に気を遣う滝がいくつか懸かっていて、結構楽しめる。ただ、間伐した丸太が沢の中に横たわっていたりして、越えるのが煩わしいのに加え、せっかくのナメ勝ちの渓相が残念な感じになってしまっている点はマイナスか。

15m3段の滝上部のナメ滝
15m3段の滝を越えても、ナメとナメ滝が続いていた。
間伐した丸太が横たわっている
間伐した丸太が横たわっており、ナメの沢がちょっと残念な感じに…

Co780二俣の手前で水が涸れるので、道に早く出られそうな左に入る。と、すぐにまた分岐になる。右が本流っぽいが、先がだいぶ立っていて、かつザレた斜面で登りにくそうだ。左の方がいくぶんか登りやすそう。とは言え、こちらもだんだんと傾斜が増してきて気を遣う。下生えが無く、まばらな立木と木の根を繋いで登らねばならないので意外と大変だ。短いが気合いの詰めをこなして尾根上に立つと、少し先に道標が立っていた。そこから5分ほど登ると、浅間尾根の登山道に合流する。

登山道を浅間嶺方面へ辿り、一本松の標柱の立つところで昼食休憩とする。
陽が出ていれば陽だまりになって暖かそうだが、冴えない天気で寒々しい風景だ。ただ、風はないのでそれほど冷えずに休憩できた。

「ヒヤマゴ沢」?を降る

地形図の911mピークは石宮ノ頭と言うらしい。そのピーク手前の鞍部から北東方向へ斜面を下る。枝打ちされた枝が散乱しており少々歩きずらいが、構わずずんずん降る。

ヒヤマゴ沢への下降
枝打ちした枝が散乱して足元を取られるが、とにかくずんずんと降る。

ちょっと急斜面で不安定な岩も多く、落石注意だ。15分ほど降るとはっきりした沢型となる。ただ、全く水はない。その水流のない足場の不安定な窪をなおも降る。と、何だか人工物が…なんとオフロードバイクが半分埋まって放置されている。びっくり!ここまで沢を下って来て放棄されたのだろうか?どこかから落ちてきたのだろうか?不思議なものを見つけてしまった。

埋まったオフロードバイク
過激なオフローダーが無念にも敗退をした遺物だろうか??

バイクから10分弱でCo650の分岐となる。ここで水が湧き出し、やっと「沢」らしくなる。この付近は苔の緑が美しく、もしかしたらこの先は綺麗な渓相になるのか…と、少しだけ期待を持たる景観だ。

苔の緑が美しい
岩の間から湧きだした水が緑の苔の上を流れて、なかなか印象的な風景である。

さらに下降したCo610で右岸から、Co600で左岸から流れを合わせるが、残念ながら平凡な渓相が続く。1m程度の落ち込みは時々あるが、滝と言えるほどの落差はない。

Co550付近からは両岸植林となり、ところどころで間伐した幹・枝が沢を塞ぐように散乱してており、通過に少々苦労する箇所も出てきた。同時に、何やら踏み跡らしきものも切れ切れに続いている。

Co480の二俣には「森林再生間伐事業」の看板が立っており、計画的に間伐されているようなので、踏み跡は山仕事用の道なのだろう。
二俣から少し降ると、黄色い受水槽が置いてあり、消防ホースの払い下げ品のようなホースで水が引かれている。

放棄されたわさび田跡を過ぎてしばらくで堰堤が現れた。堰堤付近は両岸切り立った壁になっており、素直には降りられなさそう。右岸側の斜面を登る踏み跡があり、巻いて降りられそうでもあるが、懸垂下降した方が安全だろうと立ち木にロープをかけて懸垂下降。
この堰堤、横格子の堤体に砕石を詰めたような作りになっていて、梯子段を降りるように降りられる。上から見たときはそこまでわからなかったのだが、降り始めてから初めて気が付いた。

梯子段のような堰堤
梯子段のような堰堤。ここを懸垂下降したが、登るのはここからフリーで行けそうでもある…

その後も堰堤が続くが、どれもトラロープが懸かっていたり、立派な巻き道で降りられたりと順調に進む。一番下流の堰堤の上では、現役のわさび田(「わさび田」と看板が懸かっている。)があり、消防ホースは、このわさび田に水を引くために設置されたものだと分かった。

導水用のホースが延々と続いている
導水用のホースが延々と続き、ある意味印象的な光景を作っている。
現役のわさび田
ホースの終点は現役のわさび田だった。わさびの緑に少し癒される。
わさび田の看板
何故か立派な看板が…。地元の小学生とかの見学用だろうか?

わさび田からは、今まで以上にしっかりした道が続いており、5分もかからずに北秋川本流に出合う。北秋川には丸太の橋が架かっているが、傾いでいて渡りにくそうなので、バシャバシャと徒渉して対岸に渡り、民家の間を抜けてバス通りへと出た。

北秋川本流と丸太の橋
わさび田から5分足らずで北秋川本流に出る。丸太の橋があるが、傾いていてちょっとデンジャラス。(落ちても何ともないけど…)

そこから駐車地点まではそれなりに距離があり、「飽きた~」といいながら30分弱の歩きで車まで戻って、本日の行動は終了!

シンナソーは、星野さんが「”山椒は小粒でピリリと辛い”沢の意味が分かりました~」と感想を漏らした通り、登り甲斐のある滝もあり、短いながら楽しい沢であった。一方、下降の沢は星野さんを”はじめてのスカ沢”に連れて行ってしまった…という感じ。まあ、スカ沢はこれからいくらでも出会うのだが…。えっ?(いや、「下降の沢も面白かった」という感想の星野さんの感性には、とても”渓人マインド”を感じます ^.^)v)

ほんとうのヒヤマゴ沢はどこだ?

さて最後に、下降した沢について少々。

奥多摩のバイブルとも言われる『奥多摩』(宮内敏雄・著)で「ヒヤマゴ沢」とされる沢を下降路に選んだ今回の”芸”のある計画だったが、想定とは異なり(あるいは、思った通り)、下降の沢にはあまり”芸”はなく、淡々とした下降に終始した。

手元の資料で下降した沢を確認すると、1987年版の昭文社の山と高原地図『奥多摩』と2014年版の『奥多摩登山詳細図(西編)』(吉備人出版)では、宮内の『奥多摩』に拠ると思われる「ヒヤマゴ沢」の名称が記載されている。
また、2010年版の山と高原地図『奥多摩』では「川越沢」と記載されている。最近の資料では『東京起点沢登りルート120』(山と渓谷社、2010年)、および『新版東京起点沢登りルート100』(山と渓谷社、2020年)もともに「川越沢」である。
因みに、宮内の『奥多摩』では、川越沢はヒヤマゴ沢と記された沢の左俣(Co480付近で分岐している沢か?)に付された名称だ。

そして、2000年版の『東京付近の沢』(白山書房)では、なんと「芋后沢」という第3の名称が登場する。実は、吉備人出版の詳細図も2011年発行の『奥多摩東部登山詳細図』では「芋后沢」となっているのである。もはや大混乱で、何が本当なのかさっぱりわからない。

シンナソー、ヒヤマゴ沢が人口に膾炙するきっかけとなったと思われる『日本の渓谷’98/’99』(白山書房)の中で、紹介者の寺田政晴氏は次のように記している。

「…しかし、今回登ってみた川越沢、芋宕沢、シンナソーの3本は思いがけず個性のある沢だった。」

シンナソーはおっしゃる通りで、短いながら滝が続き「個性的」と言っても差し支えない内容を持っていた。しかしながら今回我々が下降した沢は、「川越沢」であれ「芋宕(后)沢」であれ、この記述とは整合しない感じだ。…とすると、「個性的」な川越沢や芋宕(后)沢が別にあるのだろうか?大変気になる。残念ながら、『日本の渓谷’98/’99』には、「川越沢」や「芋宕沢」の記録は収録されていない。ヒヤマゴ沢に関して、前述の寺田氏は、地元住民に確認して、シンナソーと尾根を挟んで東隣の沢をヒヤマゴと呼ぶと確認しているし、近年の沢登り業界では、ヒヤマゴ沢と言えばその沢だというのが定着しているのだが、宮内はどういう経緯で、今回我々が下降路に選んだ沢を「ヒヤマゴ沢」としたのだろうか。

ともあれ、今回下降路を選定するにあたって、北秋川上流部の地図を改めてじっくり見てみたが、ほかにも面白そうな沢がありそうだ。ハイシーズンに行くのは勿体ないけれど、春先や晩秋~初冬にかけて歩くには手ごろでもあるので、また機会を見つけて、周辺を歩いてみようと思う。

遡行図(20211127_シンナソー~ヒヤマゴ沢)
遡行図(20211127_シンナソー~ヒヤマゴ沢)

メンバー:古巻(L) 星野
山域:奥多摩
山行形態:沢登り
コースタイム:
竹の沢BS付近駐車スペース(8:40)-シンナソー出合(9:00)-15m3段滝上(11:05/10)-Co780二俣(11:35)-登山道Co870付近(11:55)-藤倉分岐(12:00)-一本松(12:10/25)-下降点(12:35)-沢型(12:50)-Co650分岐(13:15)-Co610分岐(13:27)-Co590分岐(13:33)-Co550分岐(13:43)-Co480分岐(14:10)-出合(15:00)-駐車スペース(15:25)
地形図:猪丸
報告者:古巻

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