人の気配~大倉沢で見た人工物いろいろ

はじめに

2020年度は、新型コロナウイルス感染症を始めとして、会での活動を控えざるを得ない状況が続き、満足な山行がなかなかできずに日々を過ごすことになった。

年が変わっても、感染症の状況は相変わらずで先の見えない状況が続き、心から楽しく活動できるようにはなっていない。
この投稿も、昨年の遡行後すぐに公開の予定で書き始めたものの、何となく公開のタイミングを逸してしまって半年以上が経ってしまった。いつまでも下書きのまま放置するのも、何となくすっきりしないので、思い切って公開して、少しすっきりさせることにした。

大倉沢という名称の沢は数々あれど…

日本に大倉沢と称する沢は、あちらこちらにある。今回話題にする大倉沢は、群馬県みなかみ町にある藤原ダムのすぐ上流左岸に流入する沢だ。地形図を見ると、それなりの規模なのだが、奥利根と称するには少々里に近く、なんとなく中途半端な位置にあることが幸い(災い)して、沢登りのフィールドとして認知されてこなかったようだ。とてつもなく濃い内容の遡行ができるところなら、記録に残ってきたのだろうが、渓相もそこまでの内容ではない。日本全国沢だらけとの先人の言葉なれど、記録はどうしても有名な沢に偏りがちで、大倉沢のように沢登りの対象からは外れた沢に行く人は多くはないだろう。しかしながら、こうした沢はまだまだ残されているのではないだろうか。
2019年の11月と昨年9月に、それぞれルートを変えて訪れてみたが、沢登りとも釣りとも異なる不思議な人臭さを感じさせる場面もあった。前述の通り、里にはほど近いロケーションでもあるので、地域の方々には親しみのある身近な活動の場なのかもしれない。
そこで、二回の遡行で感じた「人臭さ」を、雑記として記録の補足に残しておくことにした。

過去2回の記録は、以下のリンクから…(新しいタブで開きます。)

利根川大倉沢~尼ヶ禿山(2019.11.02)
利根川大倉沢左俣左沢(2020.09.21)

大倉沢橋(旧道)の袂にある給水設備

まず、入渓点の大倉沢橋の袂にある小屋から。
この小屋は、入り口わきに表示板が掲げられており、藤原ダム管理事務所が建てた給水設備のための小屋であることが分かる。

給水設備全景
橋の袂の給水設備
給水設備に掲示された看板
この看板で給水設備であることが分かる

入渓すぐの滝の右岸沿いに伸びている導水管は、この小屋へ水を引くためのものだろう。しかしながら、上流の雪割滝の中に導水管はなく、滝を越えた先の穏やかな箇所に、再度導水管が現れる。
どこをどう高巻いているのかわからないが、山の中をうまいこと越えて続いているのだろう。

上流に続く導水管
導水管が上流に続いていた

下流部右岸の遥か高みに発電所の施設らしき場所があり、発電設備付近から流れてくる枝沢には、堰堤記号が書かれている。
流域の人工的な物と言えばそれくらいで、記録にも書いたが、少なくとも歩いた範囲で堰堤は一基もない。水も澄んでいてとてもきれいで、何だか嬉しくなるような貴重な流れだ。流域もブナを中心にした広葉樹林に囲まれていて、なかなか貴重な環境だと思う。
いつまでも、この環境が守られることを祈りたい。

下流部に続く踏み跡

下流部には、ところどころにはっきりした踏み跡が続いている。キャニオニングのための雪割滝の巻き道も、上流へ向かう仕事道を鉄パイプで補強したもののように思うし、滝からしばらくは左岸に踏み跡が続いている。見たところ魚もいないし(雪割滝を越えられる魚はいないだろう・笑)、山菜とかキノコ採りの路なのかもしれない。

こちらは、沢の遡行を目的に入り込んでおり、本気で踏み跡を追うわけでもないので、どこまでどう続いているのか全く分からないが、見た範囲、Co830支流手前くらいまでは、断続的に続いているような感じで、それなりに踏まれているようにも見える。

秘儀「倒木ショルダー」

倒木ショルダー
上手いこと考えたなあと感心した秘儀「倒木ショルダー」

2020年の秋には、Co830右岸支流(仮称・一ノ沢)より上流に踏み行ってみたが、越えてすぐの場所で不思議な発見をした。写真のように、大岩を乗っ越すための「仕掛け」があったのだ。最初は、写真の岩の上を越えるのに、いい具合に倒木があると思って、近づいたのだが、よく見ると倒木の下を石で押さえてずれにくくしてあるし、一番左の枝は、手の支えに非常に具合がいい、よく考えられた仕掛けであった。
明らかに、人が「設置」したもので、この技は、沢登りの技として使えるなあと感心した。名付けて「倒木ショルダー」といった感じである。深い釜に倒木を倒して越えたことがあったが、こういう仕掛けは初めて見た。

中途半端なトラロープ

さらに、Co930左岸支流(仮称・ニノ沢)の出合には、トラロープが設置されている。少し古い感じであるが、登りには特に必要な箇所でもないので、もしかすると下降用なのかもしれない。とは言え、少々場所が中途半端な気もするのだが。
他に、トラロープには気づかなかったのだが、ほかにもあるのだろうか。

木の根に括り付けられたトラロープ
仮称・ニノ沢手前の滝を登ると、右手の木の根にトラロープが括り付けられていた
トラロープの設置状況
下の滝はロープなしでも登れるし、下降用にしては、設置場所が下すぎる感じで中途半端…

砂地に残るはっきりとした足跡

また、その先Co1000付近では、ついに人の足跡を発見した。明らかに上流に向かっているし、それほど古いものでもない。数日しか経っていなさそうだ。何のためにこんな奥地まできたのかは不明だが、倒木ショルダーの仕掛けを施した人物のものではなかろうか。
残念ながら、その方の目的は沢登りではなかったのだろう。というのも、沢登りや釣りの人の足跡は、通常石の上に濡れた靴跡が残ったりするものだが、この足跡より前にそうした足跡は見られず、基本的に足を濡らさずに登って来たものと思われるからだ。途中それなりの滝があったりはするので、うまく巻いたりしながら上流まで登ってきたのではないかと推察するが、実際の経路は不明だ。
とは言え、以降は足跡も見えず、人の気配を感じられる人工物も消えてしまったので、足跡のあった辺りが目的地だったのかもしれない。

上流へ向かう足跡
どう見ても人間の足跡である…

稜線上は、藪山歩きの記録もあり、赤テープが下がっていたりするのは、記録にも記したとおりだが、沢登りの記録の殆どない地味な沢に、意外なほど人の気配を感じたので、冒頭にも記した通り、補足的に記録に残しておくこととする。

終わりに(渓人「流」へのお誘いも兼ねて)

今後の感染症の状況はなかなか見通せないが、昨年度は沢登りらしい活動が殆どできず、個人的には、沢の感覚もだいぶ麻痺してしまっているようにも思う。失ってしまった1年間を取り戻して、今年は沢の感覚を取り戻して行きたいと思うし、これからも大倉沢のような、沢登りの記録からこぼれた沢を見つけて歩いてみたいと思う。もし、そんな沢歩きに興味のある方がいらっしゃれば、渓人「流」で一緒に活動してみませんか。

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