(雪上訓練)谷川岳天神平

天候:晴

冬山のシーズン初めに行う雪上訓練を谷川岳天神平で実施。今シーズンは、12月に入ってから特に日本海側で降雪が続いている。天神平は日本海側ではないが、十分な積雪量になっており、訓練としては恵まれたコンディションである。

当日は、10時にロープウェイの山頂駅を出発。30分ほど歩いたところの斜面を訓練場所とした。お天気もばっちりの青空で、気温もさほど低くない。

お天気にも恵まれ、登り始めは行列になった
お天気にも恵まれ、行列が続く登山道

最初はつぼ足での歩行ということで、斜面の登り降り、トラバースとひと通り基本的な歩き方を練習。
伊藤リーダー曰く、「冬山の基本は歩行技術にあり。」
無雪期の登山や沢登りでも歩行技術は大切な技術だが、特に雪や氷の世界では、バランスを保って着実に足を運ぶ技術は大変重要である。訓練で一歩一歩確かめながら歩き方を会得し本番に活かせれば、安全性は大幅に増すことになる。

つぼ足歩行の基本動作を繰り返して練習
つぼ足歩行の基本動作を繰り返して練習

併せて、ピッケルワークも実習。まずは基本的な持ち方から始め、登高・下降・トラバースの際にどう構えるべきかを、伊藤リーダーが丁寧に説明する。長さや形状などもシーンによって使い易さが変わってくる。

次に、ワカンを装着。ワカン歩行では、足は開き気味に歩く。そうしないと足が絡まって転倒の原因にもなる。ここでも安全に歩くための基本をしっかりと身に着けよう。

ワカンを着けての下降
ワカンを着けて斜面を下降する
ワカンを着けて登る
ワカンを着けて斜面を登る

続いてアイゼンの装着、そして歩き方の基本を実習する。
装着は、グローブをしたままでもできるように練習したい。ワンタッチのものは、特にフィッティングの仕方をしっかり確認しておこう。現場でうまく装着できないと致命的である。

アイゼンの装着実習
アイゼンを履く時は、グローブをしたままで装着できるようにしよう

アイゼンを装着しての歩行練習も、登り・降り、トラバースと繰り返す。トラバースや斜行の際には山足を進行方向に向け、谷足はやや下向きに開き気味にすると安定した姿勢で登り降りができる。

アイゼンの爪を引っかけて転倒する事故が多いので、十分に注意するよう伊藤リーダーから説明があった。

訓練の合間に山座同定を楽しむ
尾根に上がり周囲の眺めが広がったら、思わず「この山は」「あの山は」と山座同定タイムに…

万が一滑落した場合の技術として、滑落停止もしっかりと身に着けたい。ただ、滑った瞬間に直ちに停止できないと、滑落を止めるのは難しいのも事実。反射的に動けるよう、十分に体に記憶させるよう繰り返し練習しよう。

滑落停止訓練
滑り始めたら、1秒でも早く止めることが重要だ

足を下にして滑ってしまった想定と、頭を下にして滑ってしまった想定の双方を練習した。

頭を下にして滑る
頭を下にして滑落した場合の、滑落停止動作を実習する
滑落停止訓練
体が覚えるまで繰り返しての練習が重要だ

そうこうしているうちに時間も13時近くになったので、昼休憩にする。今日はお天気サイコー!かつ寒くないので、休憩時にほんとうに寛げる。素晴らしい。

そして昼食後、そうだ耐風姿勢を練習してなかったねという事で、耐風姿勢について伊藤リーダーから解説があり、その後実習。両足と雪面に刺したピッケルの三点で安定した姿勢を作るのだが、足は肩幅より広く開き、手はピッケルのヘッドとシャフトをしっかりとつかんで、ピッケルと両足で二等辺三角形となるように。頭は風の吹いてくる方向に向けて、姿勢は低く…。

飛ばされそうな強風の稜線に上がらないのが一番だが、これもいざという時に反射的に動けるような、繰り返しの練習が必要だ。

そして、本日最後のメニュー。アバランチ・ビーコンの基本操作とプロービング、掘り出しについて体験した。

出発前にビーコンチェックは済ませたが、改めて発信モード・受信モードの説明や、電波の向きや電池についての注意点などを解説。実際の探索に際しての動きを簡単に説明した後、実際に発信モードにセットして埋めたビーコンの探索と掘り出しを、役割を交代しながら練習。

アバランチ・ビーコン実習中
埋没者の捜索には迅速さが求められる

ビーコンでの探索は時間勝負なので、素早くプロービングに移れるようにしたい。幸い、最近のビーコンはデジタル式3本アンテナが主流なので、液晶の表示を頼りにサーチすると、比較的短時間で一定の範囲に埋没位置を絞り込めるだろう。ただし、これも繰り返しの練習が必要で、機器の操作とともに、電波の特性もよく理解しておく必要がある。

プロービングも本当は組織的に実施するべきだが、今日は体験ということで、1本のプローブで位置の特定を試みた。ただ、新入会員はプローブの取り扱いにも不慣れで、セットに時間がかかったりもする。こちらも、道具を扱いなれるよう繰り返しの練習をしたい。

プロービング体験中
プローブの取り扱いにも慣れが必要だ

掘り出しも組織的な対応が必要であるが、今日は体験的に行った。また、掘り出した後の処置についても、一繋がりの動きとして練習しておくべきだろう。これは、今後の課題として積み残しに。埋没体験も一度実習してみると、雪崩の怖さを実感できる。

今回は、新入会員のための基本的な訓練が主となったが、今シーズンの実際の山行を通じてさらに経験を積み、また次回の雪上訓練でのスキルアップを図れれば、会としてのレベルアップにも繋がる。

訓練山行はついつい義務的になりがちだが、繰り返して実施し、それぞれの技術をしっかりと身に着けたい。


メンバー:伊藤(L) 坂部 高森 星野 綿貫 古巻
山域:谷川連峰
山行形態:雪山 訓練山行
コースタイム:
訓練開始(10:00)-訓練終了(15:00)
地形図:水上
報告者:古巻

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