川乗橋でバスを降り、歩き始めるとすぐに単独の男性に抜かれる。薄着で寒くないのかなと後ろ姿を見ていると、そのお兄さんも鳥屋戸尾根に入り、物凄いスピードであっという間に消えて行った。鳥屋戸尾根は、地図上は破線ルートになっているものの踏み跡は明瞭で迷うポイントはない。急坂となだらかな道が交互に現れ、リズム良く歩くことができる。トラロープのある急斜面を登りきると917地点に出る。うっすらと残る雪が先行者の足取りを所々教えてくれる。下界から救急車のサイレンが聞こえてきて何かあったのかなと考えながら登って行くと、笙ノ岩山に到着。頂上には単独のおじさんがいた。そのおじさんはすぐに鳥屋戸尾根を下山して行き、一人になった頂上で休憩するが、この日は風がないものの標高が1,200を超えているため、さすがにじっとしていると体が冷えてくるのですぐに出発する。ここから蕎麦粒山までの標高差は約200、地形図で見る限りなだらかであるが、実際はアップダウンが続き、しかも登るときはえー!と言いたくなるような急登になる。1時間半で踊平方面との分岐に出る。直進すると蕎麦粒山だが、巻道から一杯水方面にも行くこともできる。ピークは踏まず巻道を行こうかなという誘惑に一瞬駆られたが、道標を隠すように「道悪し!」と言う注意書きがあり、これは急がば回れだなと判断し、ピークに向かう。10分弱で、蕎麦粒山に到着する。
頂上で休憩していると雪が降り出す。最初は木の枝から雪が落ちているだけかと思ったが先行者の足跡の上にうっすらと積もっていた。背後から音がしたため、その方向を見ると、ゼーハー言いながら単独の男性が登ってきた。若そうだがだいぶ弱っていて心配になる。狭い頂上に二人でいるのも落ち着かないので下山を開始する。頂上直下はなかなかの急坂で、しかもうっすらではあるが雪があるため慎重に下る。とはいえ、滑る雪ではないし、これくらいはどさんこ的には楽勝。仙元峠との分岐を過ぎると、平坦な巻道となる。谷側はスッパリ切れており所々狭いところもあるが、通行に問題はない。棒抗尾根との分岐から30分程で一杯水に到着。あてにはしていなかったが、水が出ていないのはなんだかさみしい。一杯水から少し登ると一杯水避難小屋が見えてくる。小屋の中を見てみるつもりでいたが、誰もいなさそうな雰囲気で、しかも異様なオーラを放っていたので入る勇気が出ない。小屋前のベンチでザックを降ろしたが、小屋がこっちを見ているようで怖い。水を一口飲んだだけでそそくさと下山する。
あんな小屋に一人で泊まるなんて嫌だな等と考え事をしながらどんどん下って行く。道が右に大きく回るところで、アンテナのようなものが目に入る。何だろうと思ったが近づくのも面倒だったので遠巻きに見ながら通過する。しばらくすると電柱のようなものが何本が出てきて、さっきのアンテナと関係あるのかなと見ると、NHK TVとあった。九十九折の登山道を下っていくと、誰も住んでなさそうな民家が数件現れ、その脇を通過して山側に有刺鉄線が張られた坂道を下って行くと道路に出る。ここから東日原のバス停まではすぐ。バスまで20分あったので、ベンチで休憩していると、にぎやかな7人グループが下山して来た。一番年配のおばさんの荷物をみんなで分担していたようで、おばさんへの返却が始まる。このグループはバスのなかでもワイワイしていて、リーダー風のおじさんがどこか居酒屋を予約をしていた。「満員でカウンターしか空いてないって!」と言う声に、心の中で「7人でカウンターってないでしょ」と突っ込む。そんなことを考えていると奥多摩駅に到着。ちょうど東京行ホリデー快速に乗ることができ、最寄の二駅手前まで乗り換えなしで帰ることができた。
奥多摩駅(7:17/27)-川乗橋(7:40)-笙ノ岩山(9:57/10:03)-踊平分岐(11:29)-蕎麦粒山(11:40/11:50)-棒杭尾根分岐(12:27)-一杯水(12:54)-一杯水避難小屋-(12:58)-東日原バス停(14:30/14:50)-奥多摩駅(15:17)