7月の三連休は、昨年のリベンジ企画で大蛇尾川の予定だったが、天候不良のため中止となり、どうしても3連休沢を満喫したい私は、葛根田川まで行くことにした。
3連休の葛根田の天気予報は雨の可能性は少なかったため入渓中の増水のリスクは低いと予想したが、当日までに葛根田川水位情報は平常時の2倍近くになっていた。それでも行ってみないとわからないと思い、入渓点近くの駐車場に向かう。到着すると同時に雨が降り出す。休憩所には若い4人パーティが増水のため待機をしていると聞き、少し迷ったがとりあえず状況を見て引き返すか、行けそうなら行けるところまで行こうと話し合い準備をして10時15分出発。
地熱発電所辺りの水量を見るとかなり悩ましいというか、「これは諦めるしかないかな」とも思ったが、入渓したCo680付近の水位は特に問題なさそうだったのでそのまま進むこととした。
川幅いっぱいに水は流れ、何度も徒渉を繰り返すが単独徒渉で問題ない程度。天気も良くなり青空が増える。川と言うだけあって広々していて気持ちよく、左右から流れ込む枝沢からの水の流れやスラブから流れるスダレ状の滝がとても美しい。
「お函」手前で4人の先行パーティに追いつくが、4人スクラムで不安定に進んでいるのを見て一気に不安になる。我々は2名だし、この先どこまで進めるかわからないのと「お函」を越えられても今日の幕営予定地点まではたどり着けなそうだし、それまでに良い幕営場所がなかったら・・・と話し合い、今日はここまでにして明通沢手前の幕営適地まで戻ろうと決め、同行者は魚釣り、私は山菜探しを始める。程なくして男性2名のパーティが来る。声をかけると若い4人パーティも入渓したことや中ノ又沢くらいは行けると思っていると伺う。そして4人がスクラム徒渉した場所を普通に単独で進んでいく。
「あれ?行けちゃうんじゃないの?」とやっぱり先に進むことにする。我々も単独で問題なく徒渉を続け、程なくして「お函」に到着。
明らかに増水していたが、足を取られるような水量ではなく、へつりも足元が安定しているため楽しく進む。お函で4人パーティを追い越し、その後も左右から流れ込む枝沢の美しさや滑床を楽しみながら進む。15時、15メートルの滝に到着。
この滝を超えたら幕営適地を見つけようと話し、右岸から高巻いて少し進んだCo810付近で幕営した。釣りをしようと思って準備をしてきたが気分は山菜取りだったので、私はコシアブラとフキとウドを取り、同行者はあっという間に尺サイズのイワナを3匹ゲット!2匹塩焼きと1匹はお刺身で頂いた。美味しかったです~♪月明りと星が明るくて、ちょっと寒いので焚き火が身に染みる素晴らしい夜だった。
2日目。寒くて目が覚める。二人とも明るくなると目が覚めるタイプなので早々に起きてご飯を食べて6時15分出発。今日はCo928をほとんどの人が右に行くが我々は左に行き、八瀬森山荘に突き上げ、登山道で明通沢の末端まで行き、下降してCo1030付近に幕営するという、レスト目的の一日の予定だった。。。
滝之又沢を越えると急に沢幅は細くなり渓相を変えるが、それもまたあっという間に源頭部の渓相に変わる。
Co928を左に行くとしばらくは源頭部歩きで問題なかったが、Co1070でスラブ10Mくらいの壁に行き止まる。少し戻って二俣を左に進み、上がれそうな場所から藪漕ぎ開始。ルートに戻ろうと沢に懸垂で下りたり、木に掴まってトラバースしたり、藪を漕いだりすること約一時間で八瀬森山荘前の湿原に出た。
ひどい藪漕ぎだったけど、美しい湿原に出ると藪漕ぎも許せる気がする。山荘到着は10時20分。あとは登山道で明通沢末端まで行き、少し下降するだけ、今日は早めに着いて釣りしよう♪と思い、10時38分山荘出発。出発してすぐ、まさかの登山道藪漕ぎとなる。しかもかなりの藪になっていて思うように進めず意外なところで体力消耗となる。関東森も過ぎてCo1220付近で湿原となり、ようやく休憩できる広さになる。1時間半近く藪漕ぎ状態が続いて、「見晴らしの良い登山道でルンルン歩き」を夢見ていた私は夢破れ、疲れ果て、やさぐれた。しかも時間も12時半。帰りたい病にかかりかけたが、その先登山道は整備され藪がなくなり、気持ちも立て直す。
Co1450の分岐を小畚山方面に下り、Co1335付近を明通沢に向かって再び藪に突入。
この時14時20分となっていた。息苦しくなるような藪漕ぎをすると程なく沢に出るも、酷い藪沢が続く。藪が減りだすと小滝が連続するも笹を掴んだりしながら下れる。
この時すでに16時を過ぎ私は体力の限界を感じて、幕営地になり得る場所を探すが同行者はまだ元気なようで「焚き火が出来ない」と幕営適地を諦めない。17時には幕営地に着かないと・・・と進むと次第に沢が広くなり滑床が美しくなる。嫌な予感と思っていると、案の定大滝が現れる。17時に幕営地に着きたかったのに滝に着いちゃった~!と泣きそうになる。ロープ連結しても下まで届くか見当がつかない。途中まで下りてロープ架け替え等の作業を考えると時間的にも余裕がなく、自分の体力的にも技術的にも不安になり、同行者にトップをお願いする。幸い、支点に取った木からギリギリ滝下にロープがついたとのこと、懸垂で下りていく。しばらく笛の音がせず、ロープもほとんど動かなかったため不安になったが、笛の合図あり、下降開始。ロープが引けなくなったら大変なので、ロープが引っかからないよう慎重に下る。10Mほど下ると急にスラブになり高度感に焦るが、慎重に急いで下り、ホッとすると同時に冷たい雨が降り出す。見上げると25Mくらいの大滝だった。
急いでロープを回収しようとするが、ロープが引けない。二人で引いても引けず、お互い「登り返し」が頭によぎりさらに焦る。時間は17時半で雨のため薄暗い。不安と寒さで恐怖を感じた。二人だとロープが余計に引きにくいが私が引いてもびくともしないので同行者が何度も転びながら必死に回収。ロープが少しずつ動き出しなんとか回収できたが、17時45分になっていた。この先また大きな滝が出たらどうしよう。もう体力も限界だと思っていたら幕営適地とは言えないが何とか泊まれるスペースを見つけ、ここに泊まりましょうと伝えると「ここじゃ焚き火が・・・」つっこむ元気もなく、「何と言おうとここに決めます!」と後は無言の圧力で幕営準備を始める。疲れと安堵による猛烈な眠気に襲われながら焚火も何とか付き、暖を取ることが出来た。
三日目。早起きはしたものの、のんびり朝の準備をする。準備をしながら地図を見ると予定していたCo1020の幕営目的地だったとわかる。なんだ、今日はすぐ終わると7時過ぎ出発。天気は次第に良くなる。
明通沢の記録に何度も滝を懸垂下降と書かれていたので、期待しつつ広いゴーロの明通沢をぐんぐん下るも滝は現れない。7時45分Co920の枝沢との合流点に着く。
葛根田川からの下降に使われる枝沢だ。見るとナメがとてもきれい。それにしても滝が出ないなぁと、のんびり休憩しながら進むとCo828の林道にかかる橋が見える。
「あれ?滝は?え?終わり?」と言いながら休憩。どうやら明通沢に滝がたくさんあるのではなく、Co920の枝沢に滝がたくさんあるらしい。なんだろう、この損した感は。。。登山道の藪漕ぎといい、明通沢上流部の藪の酷さといい、やっぱり本に書かれた行程が一番面白いのかな、なんて思ってしまった。まだ時間も早いので、葛根田川に出ようと話し合い進む。途中胸まで浸かる場所が現れたり、へつったりする所もあり楽しい。
Co729に2段の立派な滝が現れる。右から降りられそうだけど、ずぶ濡れ必須のため、左から懸垂で下りる。釜の大きい見事な滝だった。
11時、葛根田川に出て遡行終了は12時。駐車場までやたら長く感じたが、この日は暑く夏の始まりを感じた。駐車場隣のリニューアルされた温泉で汗を流す。めっちゃ熱い湯だったが気持ち良かった。