尿前沢本谷

天候:(24日)雨ときどき晴;(25日)晴

夏山行後半戦は、2泊で双六谷本谷を計画していたが、残念ながら金曜の天候が思わしくない。転進先をさまざま検討した結果、1泊で焼石連峰の銘渓、尿前沢遡行に変更となった。
首都圏からの車のアプローチは少し遠いので、新宿を17時に出発。首都高の渋滞もあり、前泊した平泉の道の駅への到着は23時30分頃になった。軽く前夜祭の後就寝。翌朝は6時に道の駅を出発して、焼石岳の中沼登山口へ向かう。尿前林道の終点に着くと、既に10台くらいの車が停まっていた。意外と人気の山であるが、沢支度は我々グループのみのようだ。駐車場からは金明水への登山道を30分ほどで尿前沢徒渉点に到着する。ここから遡行開始である。

沢の水は白っぽく笹濁りの状態。なにやらの「成分」が溶け込んでいるのだろう。遡行を開始してすぐに5m斜瀑。リーダーは左壁をトラバースして行ったが、滝の手前で暫し思案してから、おもむろに釜の中へ…Oh…結局胸まで浸かって滝に取り付く。滝下のテラスに一旦這い上がり、右手のリッジを登って越えた。

最初の滝で胸まで浸かり、もう怖いものなし
最初の滝で胸まで浸かり、もう怖いものなし。水流は右手の岩の裏側に集中して落ちている

この先で、左岸よりハタシロ沢、フロ沢が続けて出合う。3x5m滝の左壁をへつって越えると、万円沢を左岸に分けた先に末広がりの5m滝が懸かる。ここは、nao氏がザイルを引いて水流右を直登。滝の上からはしばらくゴルジュが続く。

末広がり5m滝はnao氏直登
末広がり5m滝はnao氏直登

ゴルジュ内は大きな滝も無く順調。出口手前の2m滝は、プチシャワーで水流中のスタンスを拾って突破。

プチシャワーで越えるゴルジュ内2m滝
プチシャワーで越えるゴルジュ内2m滝

ゴルジュを抜けた頃、少し陽が差してきて気分が上がる。(ただし、この日は日差しは長続きせず、基本雨模様の天候だった。)沢も開けて右岸にはスラブが続く。スラブの先には、前衛3m滝を従えた15m滝(三ツ折の滝と名前がついているようだ)。直登は難しそうなので、右岸を高巻いて懸垂下降で沢に戻る。

三ツ折の滝を間近から
三ツ折の滝を間近から

三ツ折の滝を越えると再びゴルジュとなる。ゴルジュ内の2m滝は微妙なへつりで越える。続いて、2条に水を落とす10m滝となる。ここは、左岸を小さく巻いて越えた。
さらに進むと、いよいよ大滝の登場である。下から見ると25m位に見えるが、すぐ上に10mほどの斜瀑が続いており、全体で40m大滝という感じだろうか。当然に巻くわけだが、右岸のガレた斜面を上がって、途中で右へトラバースというルートがネットの記録などで見つかる。しかし、2011年の地震でだいぶ崩れているという情報も…。今回は安全を優先して、尾根まで上がる大高巻を選択。巻いている途中で雨が激しくなり、泥壁がぐずぐずになって登るのに苦労する場面もあったが、何とか尾根へ到達してトラバース。ルンゼを下降して、最後に30m懸垂で沢に戻った。

高巻き途中からの大滝
高巻き途中からの大滝

戻ったところからは、スラブの沢床が続く。スラブの滝がいくつか懸かるが、大抵は快適に越えていける。8mの少し立った滝のみ左岸を巻いた。8m滝を越えると、沢はさらに開けてナメが数百m続く。雄大な景観に暫し陶酔。

二俣手前の雄大なナメ
二俣手前の雄大なナメ
二俣手前のナメから、左俣の30m滝を遠望
二俣手前のナメから、左俣の30m滝を遠望

ナメのどん詰まりがCo1000の二俣である。左右とも滝で出合っている。左はすっきりとした30mスラブ滝、右は3段に落ちる15m滝である。初日は高巻きに時間を取られたこともあり、この二俣手前の左岸を若干整地してテン場とした。薪は、ナメの途中に引っかかっている倒木を切り出すなどして調達。雨で濡れているせいか火が安定するまで少し時間がかかったが、なんとか鎮火せずに火勢を保って濡れた衣服を乾かすことができた。

焚き火で始まる朝
焚き火で始まる朝

翌朝、燠になった焚き火を復活させて朝食を摂り出発。二日目は、左俣の滝の高巻きから遡行再開である。

Co1000二俣全景
Co1000二俣全景

前日下見をしておいたとおり、滝の少し手前の左壁を直登。スタンスはやや小さいが、思ったよりもしっかりと登れる。リーダーがザイルを引いてリード。途中荷上げをしたりもしたので、やや時間がかかったが、朝一番のひと仕事が無事終了。滝の上で少し休憩を取り、先に進む。

左俣出合の滝高巻き中
左俣出合の滝高巻き中

Co1000の二俣から上流は、地形図を見ると奥の二俣(Co1230)までに4つの滝記号が記されている。さてさて、どんな感じだろうか。まず3~4mほどの滝をいくつか越えると、見映えのする3段のナメ滝が登場。水流右を快適に直登できるが、少しぬめるので要注意。

少しヌメるが快適に越えられる3段ナメ滝
少しヌメるが快適に越えられる3段ナメ滝

その先で、2条10mの滝。ここは、nao氏が右壁を直上し、右側の下段を登りきったところで、ピッチを切り、さらに右壁から落ち口へトラバースをして突破。右上段のトラバースは少し緊張するところだ。

2条10mの滝は右壁を直登
2条10mの滝は右壁を直登

次は10mCSの滝、CSの直下まではフリーで問題なく登れるが、その先が少々嫌らしい。水流側は3mほどのかぶり気味の壁、正面はCSのある斜面で左壁は手足なし。かぶり気味の壁に残置シュリンゲがあるものの、どうもバランスが取れずに突破不能。止む無く左岸を巻くことになった。

最後の3mが意外と難航して、結局左岸高巻きに...
最後の3mが意外と難航して、結局左岸高巻きに…

その上の3mほどの滝も含めてゴルジュ状を巻いて沢に戻るところで、リーダーから叫び声が…。想定外のスノーブリッジが残っていたのだ。そこそこ安定しているようにも見えるが、かなり大きい。巻くのも乗るのも(特に下降が)やっかいそう。幸い、右岸寄りが短めに抜けられそうなので、順番に潜り抜ける。安全圏に達するまでは、生きた心地せずドキドキであった。

奥の二俣手前に残るスノーブリッジ
奥の二俣手前に残るスノーブリッジ

スノーブリッジを抜けるといよいよ奥の二俣に懸る15mのスラブ滝である。傾斜も緩く快適に登攀して二俣に到達。思ったより時間もかかり、ちょうどお昼前。ここで昼食休憩とした。

登ると奥の二俣である
登ると奥の二俣である

稜線も間近に望まれ、遠くには北上盆地が広がり、いい景色である。15分ほど行動食をモグモグしてから、nao氏のリクエストにより右沢へ進む。右沢の出合いは3mほどの滝となっているが、先は少し傾斜のあるゴーロが続く。分岐は水流の多い方を選び、息を切らせて登っていくとやがて水流も途絶えて笹薮漕ぎに突入した。首が出るくらいの笹薮から草原へ、草原からまた笹薮へ。最後は遠方に登山道を示すテープが見えたので、そちらへ笹薮ひと漕ぎで登山道手前の草原へ飛び出す。前方には焼石岳のピークが意外と高く望まれる。

登山道手前の草原
登山道手前の草原

登山道を示すロープを跨ぐと登山道。ここから銀明水避難小屋、中沼を経て林道終点の駐車場を目指す。初日と違い陽の射す時間も長く、また日を遮る樹林もないので少し暑い。避難小屋までは約40分。小屋の少し先に、銀明水が湧き出ている。誰の製作かゴツイ柄杓が備えられていた。水は澄んでいて、湧出量もかなりある。飲んでみると、冷たくて美味。下山の火照ったからだに染み入るようだ。誘われるように、広場のベンチに荷物を下ろして暫し休憩。クールダウンの後、更に下山を続けた。

銀明水の水場。頑丈な柄杓が目印です
銀明水の水場。頑丈な柄杓が目印です

上沼、中沼と過ぎ、最後の行程がなかなか長い。まだかまだかと高度計とにらめっこしながら下山を続け、稜線から2時間で駐車場に到着した。駐車場には、我々の車の他に宮城ナンバーのSUVが1台だけが停まっており、そちらも帰り支度中。我々も装備を解いて帰途に就いた。

途中、胆沢ダムの資料館に寄りダムカードを入手。以前からあった石淵ダムは、胆沢ダムのダム湖に飲み込まれるかたちで水没してしまったとのこと。最近の地形図の名称が「胆沢ダム」となっており、手持ちの「石淵ダム」と異なる理由がよく分かった。

入浴は、焼石クアパーク・ひめかゆ。ここのお湯は美肌の湯とのこと。ヌカカに刺されまくった腕や顔に効果があることを祈る。夕食は、帰路の車内で摂ることとしてコンビニに寄り道して、前沢平泉ICから東北道を南下。渋滞に巻き込まれることもなく、22時過ぎ新宿駅で解散となった。

尿前沢本谷は、短い中にもさまざまな要素の詰まった沢だった。初日の天候不順は残念だったが、充実した夏山行ができたことをメンバーに感謝する。

遡行図

記)F薪


山行最終日:2019年8月25日
メンバー:石田(L) 高森 古巻
山域:焼石岳
山行形態:沢登り
コースタイム:
24日:中沼登山口P(8:00)-尿前沢徒渉点(8:40)-ハタシロ沢出合(9:02)-フロ沢出合(9:10)-三ツ折の滝(10:20)-大滝下(12:15)-巻き終わり(15:55)-Co1000二俣(17:00)-C1(17:10)
25日:C1(7:00)-左俣出合滝上(8:45)-2条10m滝(9:40)-奥の二俣(11:55/12:10)-登山道(13:00)-銀明水(13:40/50)-中沼登山口P(15:05)
地形図:焼石岳・胆沢ダム
報告者:古巻

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