八久和川下流部~岩屋沢

昨年の夏合宿で天狗角力取山から中俣沢を遡行したので、今年は下流部に行くことにした。
八久和川下流部といえば、泳ぎの連続だと先輩方から聞いている。代表からは天気と水量次第だ、とのコメント。
ここ最近雨が降っていないこと、天候が安定していることから我々でもなんとかなるのではないかと思い、期待と不安とともに出発した。
(文中の沢名は「朝日連峰水源の沢」による。)

11日(晴れ)
前夜、鶴岡駅前のビジネスホテルに泊まる。朝7時に鶴岡駅前に集合、予約しておいたタクシーに乗り込む。
鱒渕林道で八久和峠を越え、猿倉沢手前でタクシーを降りる。アブは少ない。

八久和ダム湖 天気は最高!

高安沢を過ぎた先の小沢手前に、林道崩壊のため車両通行止めのトラロープが張ってある。ここまで車が入ってくることは可能。途中2台の車が駐車してあった。

幅の広い道型が続く。雑草が刈払いされており歩きやすい。

やがて細い山道となる。踏跡を何度か見失うが周囲を探せば見つけることができた。悪いトラバースもあり慎重に通過する。2か所ほど高巻くように登る所がある。

八久和本流を見下ろす

風が通らず、とにかく暑くてペースが上がらない。熱中症になりそうなので、小さな沢を横断する度に水分補給と顔を洗い、濡らした手ぬぐいを首筋に充てたりして体を冷やす。1日目が一番大変だった。

ようやくフタマツ沢に到着。

すぐ下に本流を見下ろす場所に出ると、「二松下ル」の切り付け。
矢印も刻まれており、判りやすい。

本流に降りると、予想した通りだいぶ水量が少ない。

右岸に徒渉し、右岸台地の踏跡を行く・・・つもりがここからは全く踏跡がなくなる。

台地上は割と歩きやすいが、地形図に現れない小沢(深さがある)を何度も横切るのであまり本流に近いほうを歩かないほうがよいことに気づき、以降は少し奥まった所を歩くようにする。
歩きやすい所を進んでいくと時々ピンクテープが出てきて、大体合っていることがわかる。
ここでも風が通らず暑さにやられる。

やがて右岸台地は狭くなり自然と本流に近づき、小ルンゼに導かれる。ここで一旦本流に降りる。

沢に降りると俄然元気がでる。沢を歩けるうれしさもあり、浸かるのも気持ち良い。先行パーティーの足跡に気づく。

ベン沢出合を通過。
ここから先は泳ぎになりそう。先行パーティの足跡はここを突破していったようだが、我々は手前のルンゼから右岸台地に上がることにした。

上がった所は木がまばらに生える平坦な場所で、踏跡とピンクテープがある。そこからすぐの小さな沢を横切る所で踏跡を見失う。その先は灌木がある少し急な斜面で、木を掴みながら降りていくと、草が生えるバンド状の部分が見え、そこまで降りると踏跡があった。

道があったと安心したものの、木を掴みながら急な斜面をトラバースする状態になり、小ルンゼを横切る所で足が止まる。よく見るとトラロープがついていてリーダーは通過したが、私には危険と思い斜面を登って巻くつもりで一旦上に上がる。

今日中にカクネ沢まで行くつもりだったがここで時間切れ。さっきの平坦地まで戻ってビバークすることにする。比較的斜度がゆるい斜面を選んでトラバースしていくと15分程でさっきの小さな沢に出て一安心。水を汲んだら平坦地はすぐそこだ。

タープを張り、やっぱ焚き火しないとね、ということで薪を集める。まもなく日が暮れる。

突然のビバークの割には近くで水も得られ、焚き火もでき、快適な幕場で、1日の疲れを癒すことができた。

12日(晴れ)
ラジオで5時のニュース・天気予報を聞く。西日本に台風接近のニュースを言っているが、この地は今日も晴れのようだ。
食事を済ませて、焚き火の消火のため水を汲みに行くと、小沢の下流側に昨日のバンド状に続く踏跡を発見。

6:30出発。道がつながったことで、まずはこの道?というか踏跡を行くことにする。出発してすぐ昨日の難所に出くわす。朝一で元気なせいか無事通過する。ここが一番の難所だったような。踏跡は本流を見下ろすような場所をトラバースしていく。滝を巻いているかのような状態の所もあるが進んでいける。地形図に現れない小さく切れ込む沢を何度も横切るがうまい具合に道がつけられている。1か所、砂地の斜面のトラバースで2歩位が悪い所があり、ロープを出す。アイスハンマーを使いながら通過した。

本流からこの位の高さのところに道はついている。

8:15ようやくカクネ沢に降りて休憩。ここから本流遡行かと思っていたが、まだゴルジュが続くのでもう少し右岸台地をいく。カクネ小屋跡と思われる場所を過ぎる。踏跡はないので適当に進む。「まだ降りない?」「もう少し」というやり取りを何回か交わし、もうそろそろという所でルンゼにぶつかる。ここから本流に降りる。

ようやく降りた本流は大きかった!
いよいよ遡行できることがうれしい。と同時に気を引き締める。

しばらくは河原が続く。芝倉沢出合の少し先で休憩していると中俣沢を遡行する予定という茅ヶ崎山岳会の3人パーティがやってきた。横沢を下降してきたが結構大変だった、今日は平七沢出合まで行くとのことで我々を追い越していった。

河原はなくなり川幅は少し狭くなる。へつりや浸かったりして通過。再び穏やかになるが栃ノ木沢出合でプールのようになり流れが狭まる。といっても見た目は穏やか、激流ではない。流れが速いところを避けて右の岩壁の末端から深い所に降りワンポイントの泳ぎで通過できた。

栃ノ木沢出合

この辺りが核心の1つだという記録を読んだのでまたゴルジュが出てくるかもしれないと気を緩めずに進んでいくが、結局ゴルジュは現れず、へつりと浸かりで越えられる穏やかな状態が続く。

小国沢出合に12時頃着く。小さいけれど砂地のテンバあり。水量が少ないおかげで順調にきている。昼食をとりながらどこまで行くか相談。茶畑沢出合の先にあるゴルジュの通過は明日の楽しみにとっておくことにし、茶畑沢手前で幕場を見つけることにする。

小国沢出合

左から入る小赤沢を過ぎると、水量は少ないが50mほどの滝が右から流れ落ちている。この付近に2か所ほど砂地のテンバ適地があるがもう少し進む。
右岸に大きさも申し分ない砂地が現れ、荷を下ろす。14時頃着。

タープを張って、薪を集める。時間があるので釣りに出掛ける。枝沢や茶畑沢出合の釜まで行ってみたが魚の影も形も反応も何もない・・・。

夏のお楽しみ。線香花火。

13日(晴れ)
沢の音で目覚まし時計の音が聞こえず、寝坊してしまった。朝食を済ませて7:16出発。

10分ほどで茶畑沢出合。少し奥まった所に滝が懸かっている。

すぐに流れが狭まる。ロープを出して右から通過する。どれが大ハグラ石滝なのだろう??

一旦穏やかな河原となるが、流れが左へ曲がるとクランク状のゴルジュとなる。

ロープを出し、左を尺取り虫のように進む。足がつかない所はわずか、意外と足が着いた。

癒しゾーンの後、大プールとなっているゴルジュ入口に着く。

ちょっと遊んでみます。
泳いで突破する気のリーダー。

穏やかに見えて意外と流れがあって敗退~

(リーダーがクロールができることを知る)

右の小さな水流沿いに登っていくと、ゴルジュを見下ろすバンドに出る。ゴルジュ出口は小滝となっている。

バンドの末端まで行くと残置ハーケンにシュリンゲが懸かっている。
懸垂で降りて突破を試みる。もし突破できなければ、ゴルジュ入口まで流れ下ればよい。

精神統一ののち、飛び込む。
あ!水中メガネつければよかった!

ザックピストンで正面の岩まで行く。そこからは足がつき左側を進むと、右壁奥に隙間があるのが見える。小滝の前を横切り、隙間から空身で這い上がった。

行けるのか?ドキドキの核心となった。

ここを越えれば難所となる所はない。達成感と安心感がやってくる。

平七沢出合付近は河原となっている。昼食をとりながら、作戦会議。天狗小屋まで行くこともできるが、せっかく八久和にきたのだから、3泊目も沢で泊まるのがいいんじゃない?ということで、魚影が見えたら竿を出して、釣れたら岩屋沢出合に泊まることで話がまとまる。

魚の姿が見え始めたので竿を出す。と!1匹釣れた。3回目に竿を出した場所で刺身にできる位の大きな岩魚をゲット。

途中で岩屋沢出合から下ってきた釣り師のお兄さんに出会う。

岩屋沢出合に着くと、昨年泊まった砂地のテンバは跡形もなく、岩がゴロゴロしている。1年でこれほど変わるとは。
少し戻った右岸の砂地にタープを張る。薪も豊富にある。

さっき出会った釣り師のお兄さんがやってきて大きめの岩魚を1匹分けてくれた。ありがく頂戴し、塩焼きで頂いた。
我々が釣った岩魚は大きいほうは岩魚寿司と刺身、中骨は骨せんべいに。中ぐらいのは塩焼きに。坂部さんが魚をさばくのが上手になっていた。

夜の気温が高く、焚き火にあたっていると暑い。台風の影響で風が強く、風向きもころころ変わり落ち着かないが、最後に盛大な焚き火で締めくくる。

初めて食べる岩魚寿司。

14日(曇り時々晴れ):
朝5時のラジオで天気予報を聞く。天気は下り坂だが雨に降られることはなさそうだ。

今日は下山するのみなのでゆっくり7時出発。岩屋沢に入る。
岩屋沢は昨年下降しているので大体様子はわかっているが、遡行となるとまた違った雰囲気を感じる。

810mの二俣を右に入りCS3mを登るとゴルジュとなる。長い淵の奥に7m滝が懸かる。リーダーが今日は泳ぎたくないというので手前のCS滝の下まで戻る。

あ~ここ降りてきたなぁという懐かしの土壁を登って巻く。固い土壁で足が入らないのでアイスハンマーを使う。
続く2段7m滝も巻いて、懸垂下降で滝上に降りる。

見覚えのある倒木にまたお世話になる。

少しのゴーロと小滝が続く。

860m付近に岩屋沢のシンボル的な滝では?と思う3条滝が現れる。昨年の写真と比べてみると、岩屋沢自体は昨年下降時と水量はほぼ同じだった。

900m付近の滝はツルツルなめらか、トイ状2m、5×6斜滝が続いてきれい。

920mの二俣に着く。左は幅が広くて明るい。右は狭くて側壁が立っていて暗い。
左に入ることも考えたが、大人しく右に入る。

1050mあたりから傾斜が増し一気に詰め上げ・・・たいところだが、蒸し暑く、休憩を多めにとる。空を見上げると、雲が急速に流れている。
ゴーロ、小滝、石滝、ナメを登っていく。最後の2m滝を越えると水は涸れ、落ち葉が積もる沢型を詰めていくと、ほとんどヤブ漕ぎなしで登山道に飛び出た。

10分ほどで天狗角力取山山頂、その先の土俵で昼食とする。ガスに覆われ周りの景色は見えない。風に吹かれて涼しいのは最初だけで、汗に濡れた体は強い風によってどんどん冷やされていく。カッパを着る。

ここでタクシー会社に電話して下山開始。

マツムシソウがきれいに咲いていた。

近くでヴィーンと草刈り機で草を刈る音がする。登山道脇に生える草を刈ってくれているらしい。その草刈り機はここまで背負ってきたのか?ボランティアで?など聞いてみたかったが、草刈り人には会えず残念だった。

当初下降する計画だった砂吹立沢の下降点。危険な匂い。

登山口に着いたが待っているはずのタクシーがいない。そして坂部さんがアブに取り囲まれ悲鳴を上げる。私のほうにはさっぱり来ないのが不思議。

とりあえず林道を歩いていると、岩屋沢で会った釣り師のお兄さんが車で通り過ぎていった。と思ったらバックして戻ってきて我々を乗せてくれた。大井沢温泉 湯ったり館に行くという。我々も湯ったり館に行くところだったので助かりました。ありがとうございました。
(予約しておいたタクシーとは途中ですれ違い、湯ったり館で無事合流した。)

湯ったり館の敷地ではこの町の夏祭りが始まろうとしていた。打ち上げ花火を見るためのゴザが敷かれ、焼鳥を焼くおいしそうな匂いが漂う。冷えたビール・・・。もう1泊したい気持ちを振り切り、タクシーで左沢駅へ。
駅のベンチでお疲れ様の乾杯。風に吹かれながら、今回の山行を振り返る。

近くにコンビニはないけれど、駅前のドラッグストアで冷えたアルコール類が買えます。

天候と水量に助けられ、3日間のんびり八久和で過ごすことができ、大満足の山行でした。
お疲れ様でした!

遡行図:八久和川下流部

遡行図:八久和川岩屋沢

nao


山行最終日:2019年8月14日
メンバー:坂部(L) 高森
山域:朝日連峰
山行形態:沢登り
コースタイム:
11日:八久和ダム林道(8:38)-高安沢出合(8:49)-二松沢(13:44-49)-二松下ル切り付け(14:03)-八久和本流(14:10)-ベン沢(15:37)-右岸台地に上がる(16:10)-幕場(18:03)
12日:テンバ(6:30)-カクネ沢(8:15-23)-八久和本流(8:51-9:01)-長沢出合(9:26)-芝倉沢出合(9:44)-栃ノ木沢出合(10:59)-小国沢出合(11:54-12:18)-茶畑沢手前幕場(14:10)
13日:幕場(7:16)-茶畑沢出合(7:24)-660m付近ゴルジュ(9:50-10:30)-平七沢出合(11:10-11:57)-岩屋沢出合(15:33)
14日:幕場(7:07)-岩屋沢出合(7:10)-910m二俣(9:43-51)-登山道(11:42)-天狗角力取山(11:53)-土俵(11:56-12:33)-粟畑(12:48)-猟師の水場(13:48-55)-焼峰(14:35-43)-登山口(15:25)
地形図:大鳥・大井沢
報告者:高森

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