沢に日が差し込む

小櫃川キンダン川


天候:曇のち晴

都内ではそろそろ桜の開花も話題になる早春、久しぶりに房総の沢を計画した。星野さんからのリクエストもあり、小櫃川の支流キンダン川をチョイス。房総ではメジャーどころだが、実はまだ歩いたことがない。

都内からアクアラインを使い、札郷トンネルの南口から少し先の空き地まで2時間弱。路肩が少し広くなったところへ車を停める。
今日は滝の登攀などはないので、ルートファインディングの練習にと、先頭を星野さんにお願いする。出発前に計画の概要をおさらいして、いざ出発!

まずは車道をトンネルの方へ少し戻り、川沿いの広場から階段で小櫃川の本流に降りる。

階段を降りて小櫃川本流へ
階段を降り、小櫃川本流へ入渓する。

目の前には幅広のナメが広がって、なかなか開放的。入渓点付近で、何やら排水管からの排水が合流しているが、上流の水は澄んでいてまあまあきれい。とは言え飲む気にはなりませんけれどね…。

幅広いナメ
入渓点から上流を見ると、幅広のナメが広がる。

ところで、この周辺一帯は東京大学の千葉演習林となっており、演習林のホームページには関連の資料が公開されている。資料によると、キンダン川を挟んで西側一帯が演習林のようで、資料には左岸の支流の名称なども記載がある。また、この付近の小櫃川本流は「七里川」と記載があり、下流の七里川温泉はこの川の名称から名付けられたのだと分かる。ところが、肝心の「キンダン川」は顕著な支流ではあるが名称が記載されていない。最上流部に、辛うじて「池ノ沢」との記載が見られるのみだ。キンダン川はどういった経緯で名付けられた名称なのだろうか。

さて、閑話休題、幅広のナメの広がる小櫃川本流を遡り、キンダン川の出合いを目指す。
本流の滑床は洗濯板状にデコボコしており、ところどころにポットホールがある。落ちないよう要注意である。また、この本流のナメはぬめっていてけっこう滑る。滑って転んで水浸しという事態も避けたい。落ちぬよう滑らぬよう、ふたりで慎重に歩を進める。

ポットホール
落ちると剣呑、ポットホールに注意!

少し歩くと、左手から川廻しのトンネルで支流が合流する。出合いには滝が懸かっていて、深い釜が形成されている。

川廻しで支流が合流
川廻しのトンネルから滝で支流が合流する。合流点の釜は、かなり深い。

さらに先に進むと、右手に円筒の構造物が見えてくる。構造物の根元から水が湧いており、湯の花のような白い物質も見える。鉱泉の源泉のようだ。触ってみると、水温も本流より少し高めに感じた。

本日の目的キンダン川は本流左岸から出合う。明瞭な支流なので見逃すことはないだろう。それに、分岐にはご丁寧に「キンダン川」と書かれた札が木から下がっていて、これ以上ないくらいに分かり易い。

キンダン川出合の木札
とても分かり易い、キンダン川の出合。

入渓点から寄り道しながらのんびり歩いて35分、いよいよキンダン川に入渓。しばらくはゴーロの沢だ。すぐに沢を黒いホースが横切っており、左手に小屋掛けが見える。右手へとホースの行方を追うと、何やら井戸のようなものがあり、ステンレスの蓋で覆われている。すぐ下の河原で水が湧いており、先ほどと同じく湯の花も見られた。ここも鉱泉の源泉だろう。

さらに進むと、左手に岸壁が現われ、裾には岩屑が多量に堆積している。よく見ると岸壁がくり抜かれており、川廻しになっていた。もっとも、崩落が激しくて川の流れは元に戻ってしまっているのだが…。いずれ、弘文洞のように完全に崩落してしまいそうだ。

崩壊した川廻し
一見、岩壁に見えたが、川廻しの跡だと気付く。
回り込んだ上流から見た川廻しの跡
上流方向からだと川廻しだと分かるが、崩壊はかなり進んでいる。

川廻しの跡から20分ほどで、左岸から二段の滝で支流が出合う。この支流は、千葉演習林の資料では「瀧ノ沢」とされている。出合が滝になっていることからの命名か。

瀧ノ沢出合
瀧ノ沢が二段の滝で出合う。

全体的にはもう少しナメがちの渓相かと思っていたが、意外とゴーロ歩きが長い。右手の岩肌からの浸み出しが見られると、続いて左手に黒っぽい岩肌を見せて10mほどの滝で枝沢が出合う。水量が極少なのでかなり地味である。よっぽどの大雨にならないと”滝らしい”状態にはならなそうだ。

そこから、またしばらく河原歩きとなるが、途中イノシシと思われる下あごの骨が落ちていた。このあたりから、少しナメが出てきた。このナメは、本流ほど滑らないので安心だ。倒木の箇所もそれなりに多いが、通過に困難と言うほどでもない。

キンダン川のナメ
少しずつナメが出てくる。

そして、この後はナメ、ゴーロ、倒木が交互に出てくる。倒木を越えるとほぼ伏流になって、砂利道を歩いているような感じのところもあり、以前に梨沢の右俣を下降した時に、同じような風景を見たことを思い出す。

倒木帯
ところどころ倒木が溜まっている。…さて、どうやって越えようかな?

右手から水流のある支流を入れてしばらく行くと、右手の台地に「これより先は東京大学の敷地です。無断での立ち入りを禁止します。」と書かれた看板が立っている。看板の根元には、川の方を指して「民地」、尾根の方を指して「山椒沢歩道」と目印も設置されている。「山椒沢」は看板から5分ほど、Co160の先で左岸から合流する沢である。水流はチョロチョロ程度。

東大演習林の標識
東大演習林の標識が立っている。山椒沢は、少し先で左岸から合流する。

そして、その先Co170手前で左岸から支流が立て続けに2本入る。「資料」によると、下流から橋ノ沢、檜尾である。ちょうど昼の時間なので、ここで昼食休憩とした。少し晴れ間も出てきて暖かい。ヒルがいないかよく見まわしたが、まだ大丈夫のようだ。

この辺りからはナメの箇所が多くなってくる。ナメをしばらく歩くと、水深が深くなって瀞状に。濡れたくないが、両岸とも立っていてへつっていくのは難しそう。意を決して壁沿いのなるべく水深が浅そうなところを歩くが、膝上くらいまで濡れる。さすがに、水はまだ少し冷たい。

そしてだんだんと谷が狭まり、両岸が立ってきてゴルジュとなる。威圧感はないが、なかなか見応えがある。傾斜も緩く、高さもあまりないが、滝も何箇所かある。そして、特徴的なのが、このゴルジュの中のナメはまるっきり滑らないのである。ふたりで「滑らないね~」と言いながら、フェルトソールに吸い付くようなナメの感触を楽しむ。

ゴルジュが始まる
ゴルジュの中には、緩い傾斜のナメ滝も…。
ゴルジュ内で出合う亀ノ沢
ゴルジュ内のCo190地点で出合うのは亀ノ沢だ。
ゴルジュの側壁を見上げる
側壁はかなり高い。
滑らないナメ
ゴルジュ内のナメはフリクション抜群!
フェルトソールに吸い付くようなナメ
見た目ぬるぬるだが、全く滑らずに吸い付くようなナメ床だ。

房総らしく,ステップを切ってあるところも何か所か見ることができた。

ゴルジュを抜けると、しばらくナメが続く。再度少しだけ狭まった箇所に、人工なのか天然なのかわからないが、滑床がトイ状に抉れている箇所があった。房総なので、人工的に掘った可能性もあるが、何のためだろうか?

造ったようなトイナメ
流れをよくするため?人工的に掘ったのだろうか…。

左手に鳥獣保護区の看板を見て、U字溝のような流れを少し遡ると、ピンクリボンが木に結び付けられているところが終了点だ。ここから、暫しの急登で尾根へ出る。ピンクテープがルート案内をしてくれるので、ルートファインディングと言うよりはテープファインディングなのだが、一箇所油断をしてルートミス。30分ほどあちこち歩きまわってしまった。低山だと甘く見ると、しっぺ返しがあるのも房総らしい。

U字溝のような流れ
U字溝のような側壁が出てくると、終了点は近い。
尾根まで暫しの急登
ピンクテープのある終了点からは、尾根まで暫しの急登だ。

何とか正しいルートに復帰し、民家の屋根が見えてくると、しばらくで農家の裏手へ出た。庭を突っ切らないと道へ出られないので、済みませ~ん通りま~すと言いながら道へ出ると、ちょうど作業中の農家の方が「ヒルは出なかったか?」と。「たぶん大丈夫と思います。」と答えたが、少し不安…。車道へ出てから、スパッツを外したが、今日は被害には遭わなかったようだ。よかった。

その後は車道歩きになるが、農家の庭先の土筆や花盛りのフキノトウを愛でながら、のんびりと車まで戻った。今回は、房総ではメジャーどころの沢を計画したが、ナメは思ったほど多くはなく終盤のゴルジュが見せ場と感じた。

土筆
早春の風物、農家の庭先に土筆が顔を出していた。
花盛りのフキノトウ
盛大に花盛りだが、フキノトウも沿道のあちこちに。

星野さんも、後半はだいぶ先頭を歩くのに慣れてきた様子だった。私自身は、2年前に袋倉川流域を歩いて以来の房総の沢であったが、鉱泉や地層を観察しながらの早春の沢散歩を楽しんだ。

遡行図(小櫃川キンダン川)

山行実施日:
2022年3月21日
メンバー:
古巻(L) 星野
山域:
山行形態:
コースタイム:
札郷トンネル南口付近P(9:10)-小櫃川本流(9:20)-キンダン川出合(9:55)-Co150先枝沢:瀧ノ沢(10:39)-Co170枝沢:橋ノ沢・檜尾(12:00/20)-Co190亀ノ沢出合(12:55)-Co210先終了点(13:35/40)-県道(14:40)-駐車地点(15:35)
地形図:
上総中野
報告者:
古巻

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