第2スラブルート終了点

越沢バットレス


2021.12.4 快晴

当会は、12月の第一週末に奥多摩の氷川キャンプ場で総会が行われている。
今回は15:30開始の総会前に氷川キャンプ場からも比較的近い越沢バットレスで岩トレが計画されたので参加した。

ネット情報によると「越沢」は正しくは「こいざわ」と発声するようだが私を始め地元の民は「こえざわ」また、大先輩たちは「おなざわ」、バットレスは「金毘羅さま」と呼んでいたと思う。
私が小学校に上がるくらいの頃、近所の「たけさん」という方がバットレスキャンプ場の営業を開始した。当時は越沢林道も無く雲仙橋に立っていた看板には御岳山への裏参道を徒歩20分と記載があったと思う。ゴルジュの出口の細長くささやかな平場に奇麗なバンガローが建ち、釣り堀風の池にはマスが泳いでいた。岩場までのアプローチは散策路としてワイヤー手すり付きの木橋がかけられ子供でも遊びに行くことが出来た。

バットレスキャンプ場が営業を止めてから散策路は荒廃し、いまでは木橋も腐ったまま取り換えられることも無く危なくてとても渡る気が起こらない。
もしかしたら昔からクライマーは下流のガーデンキャンプ場脇から仕事道を辿って岩場まで行っていたのかもしれないがこちらも1か所不安定な丸太橋を通らなければならないので注意が必要だ。

このバットレスに攀じ登るクライマーを子供のころから不思議に思っていた。岩を登る事に恐怖以外考えられなかったからだ。それもそのはず、当時毎週のように家の前を救助隊が通り過ぎて行ったから。
ところがそんな私が沢登りを齧るようになり、岩壁や滝に向き合うようになるとクライミング技術を学ぶ必要が出てきた。
もともと技術向上を目的にこの会へ入会したようなものだ。簡単な岩場から始め、いつか越沢バットレスに登る事を目標にしていたが突然その機会がやって来た。

前回の本棚沢ではダブルロープ登攀を教えていただいたが今回はさらにマルチピッチとなる。キモは高度感への対応と次のピッチへ移る際のロープの捌きだと意識した。本やネットでルートや注意点を見ると手にべっとり汗をかく位脅かされる。なにしろ「確実な安全管理や転落は許されない」などは当然のことと思うが「ミスを犯したときの許容範囲の低さ」といったワードに不安が高まる。

7:00にJR鳩ノ巣駅に集合し岩場を目指す。朝早くから電車内には登山客がちらほら乗車していた。みなさん楽しそう。

越沢林道から仕事道へ下っていきます
ガーデンカンプ場分岐 私有地には立ち入らないように注意です

林道から仕事道を辿り沢へと近づくとガーデンキャンプ場が見えてくる。この敷地は立ち入り禁止なのでフェンスに沿って右方向(上流)に進む。丸太橋を1本渡り右岸沿いに15分ほどで東屋のある岩場の基部に着く。まだ早いせいか1番乗りだ。当然、陽は射しておらず冷えているが歩いて温まったせいもあり震えるほどでもない。リーダーに至っては上着も着ていない。うーむ流石だ。

アプローチの核心 足元の悪い丸太橋
バットレス全景 ド迫力です
入山料案内 お一人200円です

荷を降ろしストレッチをし装備を付けると入山料200円を払い早速「第2スラブルート」へと向かう。えっ?いきなり?と面食らったがこのスパルタさが丸山リーダーのいいところだ。第2スラブルートはこの岩場で一番ポピュラーなルートで3P。セカンド以降で登るためグレードは深く考えないことにする。注意点を確認すると1Pの取りつきが見た目より悪い事、2P終点付近の右へコーナーを跨ぐところ、3Pのクラック上部とのこと。

丸山さんによるリード
高森さんスタート 下から見ると易しそうに見えますが出だしが思いのほか立っていて難しい

8:00にロープを結びリーダーが登っていく。ビレイ解除のコールを受け高森さんがセカンド、私がラストで登る。本チャンよりも本チャンっぽいとのアドバイスに従い、初めてチョークを付けてみた。パンパンと手を打ち余分な粉を飛ばすとさらに気分が上がる。高森さんが5mほど登ったころ、「ラスト登って」と指示があり、いよいよ私のバットレス登攀が始まる。岩へのファーストタッチはひんやりして硬く感じた。磨かれて滑るのはここではないのかなと思った。2人同時登攀は初めてだったのでペースが掴めず高森さんに近づきすぎてしまった。もっと周りをよく見ないとダメだ。不安定な場所でステイすることになっては疲れてしまう。檜テラスという1P登ったところから下を見て「あーもう引き返せないな」と腹を括り、上だけを見るようにした。

2P目に移ります

2P目は左に少しトラバースしてから右斜め上方向に気持ちよく伸びるスラブ起点に向け登る。このスラブは対岸の休憩所から見ると一番目立つカッコいいところだ。越沢のフロントマンのような存在。これを登るなんて1年前には考えも及ばなかった。
1Pに比べると高度感は増すもののホールドは分かりやすく配置されて私にも登りやすく感じられた。いま振り返るとこの比較的登りやすかった2P目があったおかげで落ち着くことが出来た気がする。

リーダーの登攀をよく見て学びます ロープがダマになりかけています 反省点

こじんまりとした2P終了点は3人立つのが精いっぱい。チャチャっとロープを整えて3Pスタート。ここは左のクラックを行くより右のフェースの方がホールド、ステップがあり登りやすいと調べていたがリーダーは左のクラックルートをチョイスした。心の中で「そっちですかー!」と叫んだのは言うまでもない。
万一の墜落に備えて準備はしていたが、流石リーダーはスムーズに登攀した。

思い切ってテイクオフ

リーダーの「ビレイ解除」コールのあと、いよいよセルフビレイを外しスラブへ乗り出す。このビレイポイントからは視界が開けているので上も下も良く見える。地面は遥か下だ。高度感に胃の辺りがもぞもぞする。だがビビって立ちすくんでいてもゴールに着かない。「ここは登攀を楽しもう」と上だけ見ることに集中し右へ一歩踏み出した。スタートして暫くはホールド(と言っても微かな凹凸)が沢山あり、それを頼りにテンポよく登って行けた。クライミングシューズは普段履いているフェルトの沢靴と違い突起への足掛かり具合が桁違いだ。しかし、5~6メートル登ったころからか段々と凸凹が少なくなってくる。そして見つけやすいホールドを追うと、徐々に左のクラックゾーンへと引き込まれていった。これが曲者で上部に行くに従い手が無くなるのが下方からも何となく分かった。後戻りなどできないところまで来ているので先に進むしかない。進むルートを見つけようと岩肌を観察するが私にはなかなか見えてこない。やっと見つけた微かなホールドは少し距離があり一手では届きそうになく難しい。さてどうしようかと途方に暮れかかった時、左上のクラックに新しそうなカムが残置されているのが眼に入った。垂れたスリングを左右に振って強度を確認したらとてもしっかり効いていた。「これを掴めば行けるかもしれない」、「いやそれはズルだ」と2秒くらい葛藤したがあまりもたもたしていると力が尽きてしまうと思いA0してしまった。この辺りが今後の課題だ。
このありがたい残置カムのお陰もあり無事に生きて「第2スラブルート」ゴール点に立つことが出来た。
登りながら、「手に頼りすぎている、足をもっとうまく使わないと上達しないな」と感じた。

第2スラブルート終了点
第2スラブルート終了点 高度感一杯ですが眺めも素晴らしいです

10:10に続く高森さんも到着し右側の「鋸ルート」らしいところから懸垂で戻った。他のパーティーが居なく貸し切りならでは。

第2スラブ終了後、鋸ルート上部より懸垂 貸し切りだったので出来ました
天狗の肩から懸垂
天狗の肩から懸垂2P 目

1Pで「天狗の肩」へ降りるといつの間にか1パーティがやってきていた。このパーティは「右ルート」をアイゼントレーニングするところだった。
2P目は邪魔にならないように降りて10:45から11:00まで小休止をとった。
2本目は少しレベルの上がる「左ルート」を登るとのこと。
このルートの特徴は、2Pながら後半のコーナークラックが傾斜が強く腕力を使うのでクラックゾーンに入ったら時間を掛けないで一気に登る事。
2本目は高森さんがビレイを担当した。
スタートから1P目は「第2スラブ」と同じだがピッチを2P終了点が確認できる檜テラスよりやや上部まで伸ばす。お昼近くになりようやく岩壁に陽が当たるようになって暖かくホッとする。

2Pの準備 難しいルートへ挑戦です
クライマー上部の木の元を目指しクラックを登ります

2Pスタート点からみると先ほどのスラブより登りやすそうに見えるのは恐らく見る目が無く見込み違いのせいだろう。中盤のバンドでレストし後半のクラック部を一気に詰めあがる。とイメージしていたがクラックゾーン一歩目が悪くてやはり一筋縄ではいかなかった。クラックに右手を差し込みジャムを極めたいが岩がツルツルですっぽ抜けそうな気がしてなかなか踏ん切りがつかない。下方から別パーティーの「ガンバ!」の声がまるで私に向けられたもののように聞こえ、「よっしゃ一発気合い入れてみるか」と力が湧いた。

左ルート2P目 ゴールまであと少し、ガンバレ

終了点地近くでは、リーダーから右にある木の根元のガバの存在を教えてもらった。これに手を掛けられたら一息つける。12:15「左ルート」も無事に終了点までたどり着けた。青空が気持ちい。短時間だが満足感一杯だ。

終了点の立ち木からやや斜めに懸垂して檜テラス経由で基部に降りた。
あまり格好いいクライミングでは無かったがリーダーに助けられとにかく2本登ることが出来た。これは今後の貴重な経験となる。
初めてのバットレス岩トレは無我夢中で反省点ばかりだが、一番はロープを受けとってからの送り出しがダマになってしまいスムーズに出せなかったことだ。
シビアな場面でロープ出しが滞るとリードが危険な状況になる。
平場でじっくり練習を重ねたいと思った。

13:00岩トレを終え氷川キャンプ場に向け岩場を後にした。

ありがとうございました

陽が当たり威風堂々なバットレスの全容 また次回よろしくお願いします

山行実施日:
2021年12月4日
メンバー:
丸山(L) 高森 牛久
山域:
山行形態:
コースタイム:
JR鳩ノ巣駅(7:00)-林道分岐(7:15)-東屋(7:30)-第2スラブ(8:00/10:45)-左ルート(11:00/12:30)-林道分岐(13:00)
地形図:
武蔵御岳
報告者:
牛久

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