一ノ沢のゴルジュ

笛吹川東沢鶏冠谷左俣一ノ沢


(天候)晴

アプローチ~失敗!集中工事だ!!

伊藤さんは笛吹川東沢一帯を精力的に遡行しているが、今回は鶏冠谷左俣の支流一ノ沢を計画。一昨年、二ノ沢の山行に参加した際に、ぼくが原因の落石で負傷者を出してしまい反省の多い山行となった。その苦い思い出の残る鶏冠谷だが、苦い思い出を払拭すべく今回も計画にエントリー。事故なく無事に下山することを誓って、前夜自宅を出発したのだが…。

自宅を出て首都高速経由で中央自動車道へ向かうが、なんと集中工事の最終日で大渋滞中。事前に情報をよく確認しておくべきだった。出発前にナビをセットした際、東名・圏央道経由で行けと言われたのだが、何をバカなこと言っているのかと無視して中央道方面に進んだ自分の迂闊を後悔した…orz。

と、最初から思ってもいなかった想定外(単に事前の確認を怠った結果であるが)に見舞われたために、予定よりだいぶ遅れて道の駅みとみ着。いつもの場所は風が通って寒い記憶があったので、ダウンジャケットを持って行ったが、予想通り風が冷たくダウンジャケットは大正解であった。山支度のパーティが何組か前泊していたし、夜中でも車の出入りは結構多い。

西沢渓谷駐車場から鶏冠谷へ

東沢出合から望む鶏冠尾根
東沢出合から見る鶏冠尾根は、何時見てもいい姿である

翌朝、周囲を見回すと、通常の登山者に交じって沢登りらしきパーティもちらほらと。道の駅から西沢渓谷入口の駐車場へ移動して身支度を整える。お天気はよさそうだ。駐車場から30分で二俣。東沢に入って15分で鶏冠谷の出合に到着。出合の河原で休憩中のパーティがいたが、写真撮影なのだろうか?あまり沢登りっぽい装いではなかったので鶏冠山方面だろうか?

さて、我々は予定通り東沢を徒渉して鶏冠谷に入渓する。最初は大岩を乗っ越して進むアスレチック遡行である。20分ほどで最初の滝。ここは左岸の踏み跡を使って巻いて越える。さらに20分ほどで右岸から飯盛沢が出合う。さらに4~5mの滝をいくつか越えると、頭上が少し明るくなって奥飯盛沢出合である。細い水流が、遥かな高みから滝となって落ちてくる様子は、やはり目を奪われる光景だ。本流はナメ床となっており、すぐ上流に8m3段のナメ滝が懸かっている。下段は右から小さく巻いて越え、その上は水流右を登る。ナメ滝を越えると、逆さくの字滝。直登ルートは同じく水流右だが、今日は時間節約のために高巻いて越えるという。巻く場合は、右岸の斜面を登るのだが、結構な急斜面で直登よりデンジャラスな感じだ。最後は、懸垂下降で沢に戻った。

奥飯盛沢出合先の3段ナメ滝
奥飯盛沢出合先の3段ナメ滝を登る
逆さくの字滝の高巻きから懸垂下降
逆さくの字滝の高巻きからは懸垂下降して沢へ戻る

逆さくの字滝の先はゴルジュになっており、入ってすぐ右岸から5mほどの滝で枝沢が合流する。ゴルジュ内は4m前後の滝がいくつか懸かる。出口の5×7m滝は深めの釜があり、右岸をへつって滝に取りつくが、最後の一歩のスタンスが水中にあり、足で探って見つけるのがなかなか楽しい。無事、スタンスを見つけてそのまま水流左を越える。

深い釜をへつる
最後の一歩は水中のスタンスを拾って滝に取りつく

ゴルジュを越えるとナメ床が続き、左俣・右俣の二俣に到着する。中央に平らな岩があり、ここで一息入れる。
ぼくはまだ右俣を遡行したことがないので、いずれ歩いてみたい。水量比は、2対3くらいで右が多いように感じる。

二俣の平たい岩
二俣中央の平たい岩は休憩に好適だ

休憩を終えて左俣に進む。右から細い流れを合わせると、しばらく大きめの滝が続く。最初の2つは右岸、次は左岸を巻いて越える。続いて、10×15mの斜瀑となるが、ここは右の岩壁との隙間のようなところをずり上がる。下から見ると岸壁から少し左を登れそうなのだが、ぬるぬるで足が決まらず、ずるずるドロドロの登攀となりカッコよく登るのは極めて困難なところである。…汚れるし。ある意味、左俣で一番精神力を求められるところかも・笑。

ぬるぬるの斜瀑
ぬるぬるの10×15m斜瀑は右壁を登攀
右壁の基部を慎重に
右壁基部の隙間を滑らないよう慎重に登る
足元はぐずぐずである
足元はぐずぐずである

ずるずるドロドロの滝を無事に越えると、じきに一ノ沢の出合となる。過去に左俣本谷、二ノ沢を遡行しているので、三度目だが、本流の3段15m滝と一ノ沢の40mスラブ滝の出合う光景は大変にダイナミックである。

左俣一ノ沢出合
ダイナミックな一ノ沢出合の風景

出合のスラブ滝を越え、一ノ沢の遡行開始!

さて、いよいよ一ノ沢の遡行が始まる。まずは出合の40mスラブ滝を越えなくてはならない。出合の大滝は下からは20mほどにも見える。右から巻くルート、左の樹林から巻くルートと巻きのルートはいくつかあるようだが、安全最優先で左の樹林を使って大きめに巻く。急斜面だが足場はしっかりしており、うっすらと踏み跡もある。逆さくの字滝より素直に巻けるので15分ほどで高巻き完了。落ち口を覗くと、傾斜が緩んでからもナメが続いており、本流の大滝落ち口が結構下に見える。ということは、やはり40mくらいはあるのだろう。
下から見ると、左を小さく巻けそうにも見えたのだが、巻けそうに思ったところから上部も微妙な傾斜のナメが続いており、登るのに神経を使いそうである。結果的に、大高巻きで正解だろう。

一ノ沢出合の滝を右岸から高巻く
高さはあるが、割合素直に高巻くことができた
出合滝落ち口
出合滝落ち口からは、本谷の大滝が下の方に見える

古いガイドブックを開くと、鶏冠谷左俣の各支流も紹介されており、かつてはよく登られていたよう。ただし、最近は本流以外はネットの記録もとんと見ない。どうしてだろうねぇなどと話しながら、出合滝の上に続くナメを歩いて行く。出合滝から上もナメ・ナメ滝が続く渓相だが、若干荒れた印象もあり”映えない”あたりが、不人気の所以だろうか。

出合滝の上から10分ほどで二俣。あれこんなに近いの?と思ったが、明確な分岐で二俣に違いない。
登山大系ではここを左に入るルートが紹介されているが、その後のガイドブックでは本流は右という見解が主流で、右が紹介されている。現場で見ても、水流の様子も沢床の高さも右が本流で間違いないだろう。登山大系の筆者はなぜ左を選んだのだろうか?少し不思議に感じた。

一ノ沢二俣
一ノ沢二俣は右沢へ進む

二俣を過ぎると屈曲したトイナメ滝、その先も3~5mほどの滝が続く。ただ、水流はだんだんと心細くなっていく。この先のゴルジュを過ぎると水が涸れるという情報から、水が涸れる前にと水をくむ。

その先、ゴルジュは岩の詰まったガラガラのゴルジュで、傾斜はそこそこあるのだが、滝らしい滝も殆どない。幅が極端に狭くなったところにチョックストーンを抱えた2mの滝が懸かる。ここは空身で無理やり登って荷揚げをする。足場が次々に崩れるので、後の人ほど難易度が上がる素敵な滝だ・笑。

ゴルジュを抜けると少し沢が開けるが、足元は傾斜のあるガレ状態。左に涸れた窪を分けた右に大きなスラブが駆け上がっている。一瞬、ここは左…と思いかけたが、高森さんの冷静な判断で右へ進むと、スラブの基部を横切るように沢型が続いていた。

見上げるスラブの基部を沢型が横切る
右手にスラブが駆け上がり、それを横目に左奥へ沢型が続いている

ただ、傾斜がさらに強まり全体が涸れ棚のような岩場になっていく。手も足もあり、登攀に問題はないので、どんどん登って行くが、振り返ると結構な高度感があり、「うわぁ高っ!?」という感じなので、なるべく後ろを見ずに前だけを見て登攀に専念する。

階段状の登りが続く
階段状の登りが続くが、振り返ると結構な高度感

少し沢が広がったような感じのところで一層傾斜が強まり、一旦ザイルを出す。途中のテラスでピッチを切り、さらに進むが、どうも行く手はふたつに分かれているようだ。細いクラックのある右の斜面を登るが、上部の様子がわからない。伊藤リーダーが「もうこれはクラック登攀だ~」と言いながら、ザイルを引いて登って行く。さらに1ピッチで次のテラスまで。
ここは、窪が1mほどに広がった安心できるビレーポイントになっていた。
ただ、これより上はこのまま登って行くのを躊躇うような斜面だ。行き詰まる前に左の尾根に逃げるという先人のアドヴァイスに従う頃合いだろう。

クラックに足をねじ込むように
右のクラックに足をねじ込みながら高度を上げていく
ザイル2ピッチ目
2ピッチ目は安定したテラスで確保できる

ラストの高森さんに少し左側の灌木帯に上がってもらい、ザイルを張ってそこまでトラバースし、さらに上のスラブに繋いで上の尾根を登ることにした。
が、樹林帯までの灌木帯は、スラブの上にうっすらと土が乗り、根張りの浅い灌木が生えているだけのような状態で、何一つ当てにならない。だましだまし樹林帯まで登ってほっと一息。傾斜は相変わらずだが、しっかりした木があるので精神的には楽である。

樹林帯へ到達するために、ザイルを伸ばす
そろそろ樹林帯へ逃げる頃合い
緊張する登攀中だが、石楠花の花が目を楽しませる
緊張する登攀中に目を楽しませる石楠花の花

詰めは奥秩父名物、お馴染み石楠花のヤブ漕ぎ

ただ、樹林と言っても石楠花が多く、藪漕ぎもちょっと大変だ。
ところどころ露岩帯を交えて藪漕ぎを続けるが、何となく径がついているようにも見える。人が歩いたのか鹿が歩いたのかは判然としないのだけれど。

樹林帯から望むスラブの斜面
逃げ込んだ樹林から右側のスラブを望む
斜度のある斜面を、灌木を頼りに登る
結構な斜度だが、灌木を頼りに登っていく
右側のスラブ上部
右側のスラブは急角度で稜線へと続いている
登攀ライン左側のスラブ
左側もかなりえげつない角度でスラブが続いている

途中の露岩帯からは、はるか下に道の駅や雁坂トンネルに続く国道のループ橋が見える。朝、東沢の出合から仰ぎ見た鶏冠尾根の側面を登っている実感が湧く。

振り返ると道の駅の駐車場とループ橋が眼下に見える
振り返ると道の駅の駐車場とループ橋が眼下に見える
石楠花のヤブ漕ぎが続く
花はきれいなのだが、石楠花のヤブ漕ぎはなかなかしんどい

1時間近く石楠花と格闘して、少しずつ尾根が広がり傾斜が緩んでくると終わりも間近だ。最後の石楠花を押し分けて、鶏冠尾根の登山道に飛び出した。あー疲れた…。手と言い顔と言い、枝に引っかかれて傷だらけになった。時刻は14時45分。何とか明るいうちに下れそうだ。

鶏冠谷出合から鶏冠山までの間の登山道は、一応一般登山道だが結構難易度が高い道だ。
難所にはしっかりとした鎖が設置されていて、ザイル無しでも下降できるのだが、高度感のある降りもあるので、古巻のみ安全優先で2か所ザイルで懸垂下降させてもらった。

鶏冠尾根の下降
鶏冠尾根の岩稜帯を降る

距離としては短く、さっさと下ってしまいたのだが結構時間がかかる。それにしても、こんなところをわざわざ登りに来る人がいるというのも奇特な事である。沢の下降だから仕方なく使っているが、わざわざ鶏冠山だけに行く気はしないよ・笑

詰め上げてから2時間近くかけてやっと第1岩峰のコルと書かれた鞍部に到達。その昔のガイドではチンネのコルと書かれていたところだ。その頃はここが道迷いの名所だったようだが、今はこれでもかというくらい案内板やピンクテープが付けられて迷いようがない。ここからも、少し急な岩場の下りなどもあるが徐々に穏やかになっていく。ただ、長い…。
朝の6時過ぎから歩いているので、間もなく12時間になる。「歩くの飽きた~~」と思わず言葉が漏れる。両側から沢の音が近づいて、下に沢の流れがのぞくようになると、道はジグザグを切って鶏冠谷へと降りていく。やれやれ。やっと出合に戻ってきた。

日没前に出合まで戻ってきた
長い降りを耐えてやっと出合まで戻り、ほっと一息

一昨年、二ノ沢を遡行した際は、事故の影響もあり日没後の下山となったが、今日は無事に下山できてひと安心。
それにしても、かな~り疲れました。やっとの思いで駐車場まで戻り、片付けてから花かげの湯で一日の疲れと汚れを落としたが、足もだいぶ傷だらけだった。

まとめ~はたしてシリーズ第三弾はあるのか?!

さて、鶏冠谷左俣シリーズ(伊藤さん的には、本谷遡行も含めて今回が第三弾というカウントのようだ)もあと三ノ沢(伊藤さん的には第四弾‼)を残すのみだが、実現するのだろうか?いずれにしても、遡行後の鶏冠尾根の下りが鬼門である。伊藤さんも「鶏冠尾根はもうこりごり…」などと漏らしていたので、自分で計画は立てずに誰かの計画に乗る方針のようである。個人的には三ノ沢は行ってみたいのだけれども…。


山行実施日:
2023年5月27日
メンバー:
伊藤(L) 古巻 高森
山域:
山行形態:
コースタイム:
西沢渓谷駐車場(6:15)-東沢分岐(6:45)-鶏冠谷出合(6:55)-飯盛沢出合(7:40/50)-奥飯盛沢出合(8:05)-逆さくの字滝上(8:45)-二俣(9:10/20)-一ノ沢出合(10:00)-出合大滝上(10:17)-Co1640一ノ沢二俣(10:28)-Co1800付近(11:30/50)-Co1900付近、詰めの尾根に入る(13:10)-Co2070登山道(14:45/55)-第2岩峰(15:25)-第1岩峰(16:00)-第1岩峰のコル(16:35/45)-鶏冠谷出合(18:00)-西沢渓谷駐車場(18:40)
地形図:
金峰山
報告者:
古巻

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