8m滝を近くから見上げる

利根川大倉沢左俣左沢


天候:曇のち晴

去年の11月に、大雑把な周囲の把握と下山路の下見を兼ねて、ショートカットなルートで尼ヶ禿山西方の電波塔マークのピークへ詰め上げる支流を遡行した。その支流にも20m級の滝が懸かるなど、変化に富む遡行ができたのだが、本流の奥がどうなっているのかはやはり気になる。当初、1泊での計画も考えたが、天候とスケジュールの兼ね合いから、結局日帰りにして、本流をなるべく奥地まで辿るルートで山行を実施した。
東京ナンバーの車も迫害されない雰囲気になってきたし、前回よりも少し早めに入渓したいので、前夜発として、みなかみの道の駅に前泊した。

【前回の山行記録はこちら

朝食を道の駅で済ませて、前回同様、長沢橋バス停脇の林道ゲート前に駐車。入渓は、前回より1時間ほど早い。出合からすぐの3連瀑は、全部をまるっと巻いてしまったが、左岸の崩壊した桟道の状況は変わっておらず、ありがたく利用させていただいた。

雪割滝も、同じく左岸上部の桟道を使って巻いたが、桟道が記憶より高いところにあり、撤去されたのかと思ったが、きちんと残っていた。無くても巻けないことはないが、少し不安定な箇所なので、あるとないとでは安心感が違う。
今回は、雪割滝をよく観察しようと、まず滝つぼ間近まで降りて見た。下段は7m、中段は5mないか…。見た目はそんな感じである。巻き終わって、上段の斜瀑の落ち口にも行ってみた。下から見ると、それなりに大きい斜瀑に見えたのだが、意外と小ぶりで4×8mほどである。落ち口の岩に、リングボルトが2ヵ所残置されていた。かつて、キャニオニングのポイントだったようなので、その際の遺物と思われる。改めて考えると、鉄パイプの桟道も仕事道としてではなく、キャニオニング用に整備したものではなかろうか。ここでのキャニオニングが廃れて、整備されないまま放置されている、と考える方が自然な気がする。もともと上流への仕事道は存在したように思うが、それを滝の上まで誰でも行けるよう、整備した…そんなことなのだろう。

雪割滝を下から
滝つぼから見上げる雪割滝の中・下段。上段の斜瀑は滝つぼからは窺えない。
雪割滝上段の斜瀑
雪割滝上段の斜瀑落ち口から中段落ち口を覗く。

さて、雪割滝を越えるとしばらくは穏やかな渓相だ。15分ほど歩くと、少し傾斜が出て来て小さな滝が続くようになる。前回遡ったCo830右岸支流(仮称・一ノ沢)の手前、大釜を持った2m滝は右から簡単に巻けるが、今回は濡れても問題ないので、直登にチャレンジしてみた。まず釜の左の縁を回り込んで、滝下まで行く。それから、水流がぶつかっている左側の岩に乗って越えようとしたが、岩の付近は腰くらいまでの水深で、しかも問題の岩の下がえぐれていて、結構乗り上げるのに苦労する。体が硬いので、余計…。支えになるホールドはないものかと左手の岩を探ると、ちょうど登ってくださいと言わんばかりのホールドがあり、無事に突破できた。
越えると、直ぐに一ノ沢が出合う。さて、ここから先は未知の領域だ。しばらく小滝が続くが、やがて両側に台地なども現れる。泊まるのにもよさそう。Co885付近で、左から枝沢が流入してくる。奥を覗くと目を惹く細いスラブ滝が落ちている。高さは15mほどか。思わず、近くまで行って観察。続いて、Co900付近にも枝沢があるが、こちらも少し奥に7mほどの滝が懸かっていた。この先、Co925で左岸に流入する支流(仮称・二ノ沢)の前後は、等高線の間隔が少し詰まり気味で何かありそうに思っていたので、この2本の枝沢の状況から、”何かありそう”の確信度がアップ。

Co885右岸枝沢
Co885右岸枝沢には、出合のすぐ上流に目を惹くスラブ滝が懸かっていた。
Co900右岸枝沢
Co900右岸枝沢も、出合から奥を覗くと滝が懸かっていることが確認できる。

Co900を過ぎると、何かありそうな気配が濃厚に。そして予想通り、谷が狭まり細長い淵を湛えたゴルジュの奥に水を落とすチムニー滝が出現。「おー、あった~」。高さは8mほど。一見、直登は難しいかと思ったが、よく観察すると、淵の左岸側が浅くなっていて、滝下まで行けそうだし、左右の壁も段があって何とかなる感じも…。ひとまず、淵をへつって滝の直下まで行ってみると、登れそうだ。まず右壁を一段あがり、中盤は左の段々を使って上部に到達。上部は、一部突っ張りを交えて無事に突破できた。巻く場合は、両岸とも切り立っているので、かなり大きく巻かなくてはならない感じである。

Co910付近の8m滝
何かありそう、と思っていたら、やっぱり何かあった。縦長の淵の奥に凝縮して水を落とす8m滝。
8m滝を近くから見上げる
淵の左岸をへつって近づくと、意外と簡単に登れそう。

さらに進むと、前方に3mほどの滝と、右手に支流が5mほどの高さから水を落としているのが見えた。支流は二ノ沢と思われる。本流の滝は、上部が20mほどのトイ状になっており、トイ状の途中で支流が滝で流れ込んでいた。なかなか印象的な風景だ。支流の滝は上段3m下段3mの2段に水を落としていた。下段は、本流の左岸バンドに落ちた水が流れ落ちているので、滝と言っていいか迷うところだが…。
地形図の様子から、この二ノ沢も滝で出合っているかもしれないと思っていたが、予想通りだ。

仮称・二ノ沢出合の滝
正面の滝は奥に20mほどのトイナメが続いている。右手から滝で合流するのは、仮称・ニノ沢(Co925付近)。

本流は、続いて3mCS、2×3mと滝が続くが問題なし。滝場を越えると、再び傾斜のない緩やかな渓相に戻る。この辺りにも、泊まれそうな台地が両岸に散在していた。二ノ沢から40分ほど歩くと、左手から二段の小滝を伴って支流が流入する。(Co975m付近、仮称・三ノ沢)

仮称・三ノ沢出合
仮称・三ノ沢(Co975)は、二段の小滝で出合う。

三ノ沢出合から10分で、30mほどの平ナメが登場する。この時は、ナメも出て来てなかなかいい風情だと思ったが、その先の状況は想像もしていなかった。平ナメから数分で、Co1005の二俣に到着。水量比は1対1である。ここは左俣へ入る。すぐに小滝とそれに続くナメ床が見えた。そしてここから、延々と続くナメ沢が始まった。想像もしていなかったことに、左俣は傾斜のゆるいナメの続く癒しの渓であった。

左俣に入って最初の2m滝
左俣に入ると、すぐにこの2m滝が懸かる。そして、ここから上流は全てナメの連続であった。
左俣のナメ
奥までずっとナメが続く。
ナメの途中に懸かるナメ滝
ナメはところどころ滝になっていて、変化を見せる。

しばらく行くとCo1040で左から支流(仮称・四ノ沢)が出合う。この支流は反射板ピークに直接突き上げているので、時間が押していればエスケープルートにと考えていたが、時計を見るとまだ11時20分過ぎである。しかも本流はまだまだナメが続いている。このナメがどこまで続くのか見極めないと後悔しそうなので、エスケープせず本流を詰めることにした。ナメをヒタヒタと歩いていくと、渓が狭まり前方に滝が見えたが、その滝の手前にも右岸から滝で枝沢が出合っている。双方5mほど。両門というより、二つの滝は並んでいるので双門の滝とでも言うべきか。

奥の二俣手前、双門の滝。
奥の二俣(Co1100)手前には、5mスラブ滝で枝沢が流入する。本流の滝と並んで落ちており、双門の滝とでも言う情景になっていた。(少し判りづらいが、枝沢の滝は画面の対角線に沿って落ちている。)

本流の滝を右壁から越えると、すぐにCo1100奥の二俣。水量比は1対1。右沢は地形図1257m峰の東鞍部に詰め上げている。今回の計画は、左沢から1316m峰北の稜線に詰め上げるコースなので、ここは左に。左に入っても延々とナメが続く、さすがに所々岩くずが溜まっているところや、倒木が目立つ箇所なども散見されるようになってくるが、トイ状の流れが数十m続く箇所もあり、ナメ主体なことは変わらない。

左俣左沢のナメ
奥の二俣(Co1100)を左に入っても、ずっとナメが続く。
左俣左沢の細いトイ状のナメ
1/100スケールの大ゴルジュ!!(実際は、幅20cmくらいか…)

奥の二俣から30分ほどでCo1215の分岐。左右の水量比は3対2。稜線へは右の方が近いが、稜線上は藪尾根なので、少しでも藪漕ぎを減らすべく、左へ進む。左はしばらくナメが続くが、10分ほどでさすがに水も無くなり土砂が堆積した窪を行くようになる。

左俣左沢最上流部のナメ
水の無くなる直前までナメの連続であった。

沢型が不明瞭になると藪が被ってくる。ただ、笹主体で、それほど密でもないので、藪漕ぎも楽だ。最後の分岐から30分かからずにCo1350付近の尾根に到達。さらに藪漕ぎ20分で反射板ピークに飛び出した。藪漕ぎは総計40分ほどで思ったよりだいぶ楽ちんであった。

稜線上の赤テープ
稜線上には、ところどろこ赤テープの目印があった。

反射板ピークで13時少し前だったので、昼食を…と思っていたが、前回と違いススキが生い茂っていて何となく寛げない雰囲気のため、そのまま尼ヶ禿山まで進み、誰もいない静かな山頂で、展望を楽しみながらのんびりと昼食を摂った。下山は前回同様、玉原越の登山道を長沢橋ゲートまで辿る。前回気づかなかったのだが、登山道脇を流れる沢(長沢というのだろうか)のCo900付近に20mの立派な2条の滝が落ちていた。滝のすぐ上流で、登山道が枝沢を横切っているので、もしかすると、右が枝沢の滝、左が本流の滝ということも考えられる。今回はそこまで拘って確認しなかったが、次回機会があれば、少し追求してみたい。

長沢、二条の大滝
長沢に懸かる二条の大滝。前回は気づかずに通り過ぎてしまったようだ。

大倉沢の本流は堰堤もなく、上流部まで気持ちよく遡行ができる。今回、改めて感じたが、水も極めて透明度が高くきれいな沢だ。ただ、人の歩いた形跡も散見され、地元の方が何らかのかたちで使われているようにも思う。
いずれ、そうした面からの情報も入手して、支流の名称なども確認できれば、遡行の充実度もアップしそうだ。そんな感想を抱いて、帰路に就いた。

【追記:2021年9月12日】
この山行から約1年後の2021年8月に、三度目の大倉沢来訪を果たした。過去2回で訪れることのできなかった右俣を遡行して、かつ沢中で一夜を過ごした。

記録はこちら:利根川大倉沢右俣

ひとまず、本流筋は一通り歩いたこととなるが、まだ気になる支流が少しあるので、また来シーズンも訪れてみたいと思う。
本流筋の遡行図も整理したので、ここにリンクを張っておくこととする。(上記記録でも、同じデータをリンクしている。)

遡行図(上州武尊・利根川大倉沢)
遡行図(上州武尊・利根川大倉沢)

山行実施日:
2020年9月21日
メンバー:
古巻
山域:
山行形態:
コースタイム:
長沢橋BP付近P(7:45)-大倉沢入渓(7:55)-雪割滝上部(8:30)-Co830:一ノ沢(仮)出合(9:25)-Co925:二ノ沢(仮)出合(10:05)-Co975:三ノ沢(仮)出合(10:48)-Co1005二俣(11:08)-Co1040:四ノ沢(仮)出合(11:22)-Co1100:奥の二俣(11:40)-Co1210付近分岐(12:12)-Co1350付近稜線(12:35)-反射板ピーク(12:58)-尼ヶ禿山(13:12/42)-玉原越起点(14:13)-長沢橋バス停付近P(15:35)
地形図:
藤原湖
報告者:
古巻

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