神子内川黒沢右俣(中退)

天候:晴

10月は台風等で計画が流れに流れて、月末になってようやく日帰りでの計画実施に漕ぎ着けた。若干でも滝の登攀練習になりそうなところということで、足尾の神子内川支流の黒沢の遡下降を計画した。
しかし、1時間半ほど遡行後の高巻き中の落石で同行者が負傷したため、途中撤退をして計画遂行とはならなかった。
本記事は、事故報告を兼ねての山行報告として公開するものである。

当日は早朝に都内を出発。渋滞もなく順調に神子内林道の入り口ゲート前に到着。林道をしばらく歩いて、黒沢を渡る橋の手前から、すぐ上流の堰堤を越えて入渓した。水量はかなり多いが、遡行できないほどではない。少し荒れた感じのする河原をしばらくいくと、水流が二分し、それぞれ3m、2mの緩い滝を懸けている。左の滝の水流左を越え、さらに先の4x7m滝を登ると、スリット堰堤が現れる。スリットの隙間を通過するが、水勢は足を掬われるほど強かった。

スリット堰堤
入渓後すぐに現れるスリット堰堤。コンクリートの上の水の勢いは、かなり強い。

堰堤を越えて、10分ほどで10mの滝が現れる。ネットの記録では水流右を登る記録が多いようだが、本日は全面に水を落としており、直登は危険と判断。右岸から高巻いて越える。越えると、すぐに二俣となる。

二俣手前の10m滝
Co940二俣手前の10m滝は、右岸を高巻く。

右俣に入り、緩い3段滝を越えていくと、深い釜の奥に水を落とす5m滝となる。本日はここも高巻き、右岸の踏み跡を上部のゴルジュごと巻いて越える。ゴルジュ内は水流が白く泡立ち、結構な迫力である。

ゴルジュを右岸の巻き道で越える。
ゴルジュを右岸の巻き道で越える。

ゴルジュを越えてすぐ、前方に連瀑帯が見えてきた。遠目にも今日は直登不能。1つ目の滝は右から越えられるが、2つ目滝の上部で先の様子を窺うと、とても行ける状況ではない。引き返して高巻くことにした。
高巻きルートは、連瀑に入る手前の左岸斜面を岩壁上部まで上がり、そこからトラバースで連瀑全体を越えるルートを考えていた。
ところが、1つ目と2つ目の間のルンゼ状の斜面を巻いても、岩壁上部まで到達できそうだったため、途中から斜面を登るルートに変更した。(後から考えると、この判断が基本的な誤りであった。)

連瀑帯
連瀑帯を最下段から。最下段の滝の右上斜面を高巻いている際に、事故が発生した。

最初は、同行者のリードでぐずぐずの泥と岩のミックス斜面を登って行ったが、ルンゼが狭まり岩主体になってきたあたりで、行き詰った。すぐ上の岩場がバランシーで直登が難しそう。かと言って、巻きようもないので、ここでザイルを出して先頭を交代。微妙なワンポイントを何とか凌いで、上部へザイルを延ばした。途中、支点がとりずらかったが、あと3mほど登れば確保点にできそうなところで、辛くも木の根に中間支点を取った。
そこで、下を見ると同行者が何かを訴えていることに気づいた。
最初は、かなり登ってきているのでザイルが足りないと言っているのかと思ったが、見たところそうでもなさそう。何度かやり取り(殆ど同行者の声は聞こえず)したところ、どうも負傷したと言っているらしいことがわかり、一旦下降することにした。捨て縄で支点を取り直し、ロアーダウン気味に、同行者のところまで降りると、眉毛のあたりから出血が認められた。
斜面がぐずぐずだったので、途中で、何度か石を落として「ラーク」とコールしたが、その一つが岩に跳ね返って当たったとのこと。
一見、重傷には見えなかったものの、本人が下山を希望した上、少なからず動揺も見られたので、そこからの撤退を決めて、斜面を下降。対岸の安全地帯で応急手当を行った。
傷口を消毒の上、傷テープで保護し、下降を開始。釣り師も入るようで、滝の巻き道は比較的はっきりしているので1時間ほどの下降で、車まで戻った。

軽傷とは言え、事故は事故である。今後のために再発防止を考えたい。
大きくは、高巻きのルートミスと考えている。迷ったら(行き詰ったら)もとに戻る(ここでは、連瀑帯の下まで戻る)という基本を実践していれば、落石に対しより安全なルートで高巻くことは可能だったろう。
また、高巻き中の落石は起こすべきではないが、起こり得る事象だという認識も必要だろう。それを予期して備える(フォールラインで確保・待機をしないなど)も直接的な原因への対策としては必要で、意識しておく必要がある。
確保者が重傷を負い、確保なしに下降(登り切って巻き下りることも含め)して、レスキューしなければならなくなる可能性もある訳で、今後の訓練等では、今回の体験を十分に活かして、さらに安全な山行を心がけたい。

なお、同行者の傷は、帰宅後形成外科で縫合したこともあり、1週間ほどで目立たないまで回復しており、それは不幸中の幸いだったと言えるだろう。

遡行図(神子内川黒沢)
遡行図(神子内川黒沢)

メンバー:古巻(L) K
山域:足尾山塊
山行形態:沢登り
コースタイム:
神子内林道ゲート前(8:30)-Co940二俣(9:15)-連瀑帯入り口(9:38)-事故発生(10:00頃)-下降開始(10:30)-Co940二俣(10:50)-スリット堰堤(11:20)-神子内林道ゲート前(11:35)
地形図:中禅寺湖
報告者:古巻

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