末沢川毛猛沢久右ェ門沢(中退)

(天候)曇

毛猛の沢に行きたい高森さんから、毛猛沢の支流久右ェ門沢を詰め大鳥沢を下降する計画が提出された。なかなか面白そうな計画で、自分では計画しなさそうなエリアなので同行者として手を上げた。

アプローチ

前夜に都内を出発し、関越道を小出ICで降りる。インター直近のコンビニで買い出しをした後、道の駅いりひろせで前泊したが、思ったよりも気温が低くテントを立てて仮眠した。

翌朝は朝食後、道の駅から六十里越を目指す。トンネル手前の駐車場に坂部さんから借り受けた自転車をデポし、車で少し戻った末沢川本流へ下降する小径の入り口付近に駐車する。と、先客が1名。山姿だが、単なるハイキングでもなさそうだ。先客は我々の支度中に出発していたが、どこへ行ったのだろうか?ともあれ、我々も駐車スペース奥に続くふみ跡を辿って末沢川の河原へ降りる。本流を少し下降すると左手から毛猛沢が合流する。
上流は支流も含めなかなか手強いと聞くが、この辺りは至って穏やかに平らな流れが続いている。ところどころ砂地に足跡が見られたが、先客のものだろうか。

穏やかな流れの毛猛沢下流部
毛猛沢の下流部はとても穏やかな流れが続く

少し遡ると壊れた堰堤があり、さらに進むと今度は現役の堰堤が登場する。左を巻きあがって堤体に上がり、流れへは梯子を使って降りる。

堰堤の梯子を降りる
堰堤に設置された梯子を使って降りる

久右ェ門沢に入渓

この堰堤から20分ほど歩くと、左から久右ェ門沢が出合う。崩れた岩と倒木の間からチョロチョロと水が出てきていて、何とも冴えない出合である。

目立たない久右ェ門沢の出合
久右ェ門の出合は地味で目立たない

久右ェ門沢に入って直ぐにゴルジュ状の中に4mの滝が懸かる。右に大岩が張り出している。左の水流脇を登れそうでもあるが、ここは無理せずに左岸を巻いて越えた。

最初の滝は左岸を高巻いた
左から行けるかな…と思ったがちと厳しく、左岸から巻いて越えた

その後いくつか小滝が続き、左手より水流比1対5で合流する枝沢の先で、大きめの滝が登場。7x10mといったところか。乾いた左壁が登れる。

7x10m滝は左壁から越える
7x10m斜瀑は乾いた左壁を登る

左から4x6mのナメ滝で出合う枝沢を迎えた先でゴルジュに突入…が、入り口の4m滝がつるつるで登れない。右岸から巻き上がりさらに3つほど滝を巻いて越えるが、ここで1時間ほどを費やす。その後、両岸のスラブ壁が少し高くなってトイ状10mの滝となるが、逆層で傾斜もあり直登は難しそう。手前の左岸スラブルンゼを上がって、そのまま左岸を高巻いて越える。越えた先は狭いゴルジュ状の流れが続き、トイ状の小滝をつっぱり気味に越えたり、釜をじゃぶじゃぶと腰くらいまで浸かって越えたりして進む。先に何が出てくるのかわからない楽しみもあり、せっせと課題を解決しながら進む。ひとつ一つの課題はさほど難しくないのだが、はてなと解決法を考えたり、やり直したりで意外と時間を取られる。

トイ状10m滝
トイ状10m滝は左岸から巻いて越える
狭いゴルジュの中を進む
狭いゴルジュの中にもトイ状小滝が懸かる

沢が開けてくると、両岸のスラブが小さいながら結構迫力のある姿を現す。右から細い水流の滝で枝沢の出合うところは本流に7m2条のつるつるスラブ滝が懸かる。ここを左から巻いて越えたところで、少し早めの大休止。左手の高みからスラブ滝が細い水流で落ちてきている。只見っぽいなあ…と思いながら行動食をほおばる。

開けてくると両岸にスラブ壁が広がる
スラブ壁の広がる只見らしい光景
7m2条のスラブ滝
7m2条のスラブ滝。右から枝沢がスラブで流入して3条の滝のようにも見える

休憩後遡行を続けるが、前方に大きな空間が広がると、いままでで一番大きいスラブ帯が始まった。一瞬、本流はどこかいな?と思うような地形だが、一番右の流れが本流のようだ。最初の7x12mスラブ滝は傾斜も緩く、左の倒木沿いに登って行ける。

スラブ帯最初の滝を登る
開けたスラブ帯の最初の滝を登る

次の4mもさほどの困難なく次の滝の基部に立てるが、その先がちょっと難しい。リーダーは何度か試行錯誤してはみたものの、高巻きが安全との判断を下した。少し戻って、左岸の草付に入ると何となく踏み跡っぽい踏み分けが続いていて、楽に落ち口へ立つことができた。この下でも、何か所か踏み跡のはっきりと分かる巻き道があったが、人の道なのか獣の道なのか判然としない。

登れそうで登れない
悩んだが、左岸からの高巻きを選択した

巻き終わってから2つほど小滝を越えると、二俣になる。ここは左に入りしばらく進んだが、既に13時を過ぎており、稜線までまだまだ時間がかかりそうだ。さらに大鳥沢を下降するとなると暗くなる前には降りてこられないだろう。止む無くリーダーは遡行を打ち切ることを決断。

遡行を打ち切り、下降を開始する

この辺りで遡行を断念
残念時間切れだ。この辺りでこれ以上の遡行を断念する。

少し沢を下降し始めたところで、リーダーより沢を下るより尾根を下った方がよさそうに思うという提案があった。地形図で見る感じでは、確かにそれほど下降が困難な尾根のようには見えなかったし、逆に沢の下降は結構めんどくさそうだ。ということで、沢下降ではなく尾根を降りることにして中間尾根を乗っ越し右沢へ入る。前後の登れそうな斜面を上がり、左岸尾根をめがけてトラバースを開始した。

左岸尾根に向けて斜面を登る
左岸尾根に向けて草付き斜面を登る

およそ1時間ほど藪漕ぎトラバースを続けて、左岸尾根の標高1000m付近に到達。思ったより時間がかかった。稜線上はしばらくふみ跡が続いているように見えたので、暗くなる前にできるだけ下ってしまおうと下降を開始した。藪をこぐスピードは高森さんに一日の長があり、少し遅れ気味に高森さんの後を追う。

ところで下降した尾根だが、地形図では傾斜もほどほどで下降しやすい尾根に見えるのだが、ここは山菜とスラブの国只見である。ところどころスラブのやせ尾根が出てくる。両側の切れ落ちたスラブのやせ尾根は、眺めはいいのだが通過はまあ緊張する。慎重に歩を運び安全地帯へ…という箇所を何度か通過。上を歩けないところは岩の基部をトラバースするが、そうしたところは、だいたい樹林があり、むき出しのスラブほどの緊張感はなかった。

スラブのやせ尾根
ちょっと緊張するスラブのやせ尾根
久右ェ門沢上部の様子
久右ェ門沢上部を見上げる。詰めるとどんな様子だったのだろうか

そして、岩稜の下降がほぼ終わりになるころ、前方の切れ落ちた岩場に出た。斜面は左右ともに下の谷に急傾斜で落ち込んでおり、懸垂下降をしなければ降りていけない。高森リーダー、左右を見比べてしばらく思案していたが、最終的には久右ェ門沢側の斜面を下降する決断を下した。2本のロープを繋いで1ピッチの下降。リーダーに続いて下降するが、斜度は上から覗いたほどでなく、20mほど下降すると立って歩けるほどの傾斜に落ち着き、その先の樹林帯へ抜けられそうな目途が立った。高森リーダーGJである。

岩稜帯の最後は懸垂下降で
岩稜は最後に懸垂下降して樹林帯へ入る

ひとまず、暗くなる前に樹林帯へ入ることはできたが、樹林帯は樹林帯で暗くなると先が見えづらくなって大変。地形を見ながら、リーダーのルートファインディング頼みで、とにかく尾根から外れないよう下降を続ける。

懸垂下降から20分ほどで734m標高点付近に達する。尾根はこの少し上で右へ方向を変えて、そのまま下ると久右ェ門沢に急激に落ち込んでいる。左の方向へ軌道修正して下る必要があるが、的確に地形を読むリーダーのおかげで何とか正しいコースを維持することができた。そこから出合までは、残り標高差200mほどだ。すでにヘッデン無しでは行動不能な暗さとなっており、黙々と下降を続ける。普通の登山道なら陽が落ちてもさほどの支障はないが、樹林帯のやぶ尾根を夜に下降するのは、先が見通せず難易度はかなり高い。

それでも、だんだんと沢の音が近づいてきてもう一息という地点まで到達した。ただ、そこから先は前方左右とも傾斜が急なようでもあり、沢床まで懸垂下降でくだってしまおうとするのだが、下を見ても真っ暗闇で沢床の確認ができずなかなか踏ん切りがつかない。意を決して久右ェ門沢側へロープを投げ降ろす。すると接地時に岩にロープが当たる音がはっきり聞こえ、ロープが届いていることはまず間違いないことが分かった。最初に高森リーダーが懸垂で下降し始める。ロープのほつれを直しているのか少し時間がかかったが、ほどなくokの合図があり続いてぼくも下降を開始した。一部垂直な岸壁の下降があったが、さほどの距離なく無事に着地。降り立ったところは遡行時に通った見覚えのあるところで、出合までわずかの地点であった。ここからはもう危険個所はないと分かりまずはひと安心。リーダーはぼく以上に安堵したことだろう。ほんとうにお疲れさまでした。

さて、しばらく気を落ち着かせてから下降を再開。下降点からは10分ほどの下降で毛猛沢へと合流した。あとは河原を歩けば車へ戻れる。連絡が少し遅れたので在京担当者は心配しているだろう。そして、これから東京まで車で帰らねばならないのも大変だ。

歩いている途中で、高森さんから今日はどこかで泊まって明日の朝帰った方がいいのではないかと提案される。確かに、これから車を運転して帰ると疲れからの事故などの心配もあるし、何より到着がおそらく24時を大きく回ることになり、公共交通機関が動いていない。その提案は安全優先の観点からも現実的だ。幸い、翌日は祝日のため仕事の心配もしなくていい。

ということで、車に戻るまでに、今晩は小出の道の駅(ゆのたに)辺りで泊まって、翌朝帰路に就くことに決定。結局車に戻ったのは20時を回っており、在京担当や自宅へ連絡ができたのは、電波の通じるようになった大白川駅前で21時ころ…。ご心配をおかけしました<(__)>

ほんとうは入浴ができるとよかったのだが、時間的に諦めざるを得ず、夕食を仕入れてからゆのたにのいつもの場所に腰を落ち着けて、体を拭いて着替えをするなどしてから、反省会を催した。

一夜明けて…

翌朝は「まつや」で朝食を食べたいという高森さんの希望で近隣にあるか調べたら、最寄りは長岡…。遠いよ。あ、すき家なら近くにあると向かったら、土日以外は9時30分開店とか…。今日祝日なんだから土日時間で開けてよ~と思ったのだが、まあ我儘なだけだし、開いていないものは仕方がない。お店は毎日早朝5時までやっているようなので、深夜トラックとかのドライバー相手の時間設定なのかもしれない。ということで、止む無くセブンイレブンで朝食を調達して、そのまま関越道に乗って帰路に就いた。

出発前に思ったよりも大変で、途中で引き返すこととなった山行になったけれど、いろいろと経験にもなり面白かったとも言えるような…言えないような…(笑。そして、高森リーダーは、きっとリベンジの計画を立てるに違いない。


メンバー:高森(L) 古巻
山域:毛猛連山
山行形態:沢登り
コースタイム:
駐車地点(7:35)-久右ェ門沢出合(8:17)-Co790付近(11:40/12:00)-Co860付近分岐(12:45)-Co920付近遡行打ち切り(13:30)-左岸尾根Co1000付近(14:30)-734m地点(17:05)-久右ェ門沢出合(19:25)-駐車地点(20:05)
地形図:毛猛山
報告者:古巻

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