レスキュー訓練・秋 B班(海沢三ツ釜の滝)

天候:晴

秋のレスキュー訓練、今年は奥多摩の海沢三ツ釜の滝で実施された。ワタクシ、実は海沢は初めてでございます。どんなところかと思っていたら、なるほど三つ釜の滝の左右の壁は、訓練に丁度よさそうだ。

海沢三ツ釜の滝
海沢三ツ釜の滝。左右の壁で訓練を実施した。

海沢園地の林道が広くなったところに車を止め、全体のブリーフィング後、2班に分かれて早速訓練開始!探勝路を5分ほど登ると、すぐに三ツ釜の滝だ。右左、どっちをどっちの班が使うかで、ちょっとだけ駆け引きが行われ、我々B班は左壁を使用することに。壁の直下に枝沢が流入しており、すぐ上はワサビ田だ。

まず午前中は、トップが滑落し斜面途中で行動不能となった場合を想定した、トップのレスキューを実施。
3人パーティの想定で、要救助者は上部からロープで吊り下ろす。その際、下部でもう一人が誘導するかたちで役割分担した。
要点は、ロープをどう使うかである。1本目のロープ(以下、メインロープ)は、リーダーが中間支点を介してぶら下がっている状態。春のレスキューの際にも実施しているので、基本的には同じ方法でレスキューを試みる。

メインロープは、要救助者がそれ以上落ちないように、下部で固定したと仮定。その後2人で斜面上部へ上がる。上部に残り、要救助者を降ろす役(A)、要救助者に吊下ろし用のロープをセットし、自分は斜面下まで降りて、誘導役となる人(B)に分れる。

詳細は長くなるので省略するが、
①上部で支点をとり、要救助者へ末端が届くよう長さを調整して一旦支点に固定。
②要救助者に結束しない側のロープを使い、Bが懸垂下降で要救助者まで下降。
③ロープ末端を要救助者に結束するが、その際、チェスとハーネスを作り、吊降ろし中に要救助者の頭が下がらないようにする。
④要救助者をメインロープから解放。(現場では切断する。訓練では取り外す。)
⑤Bは、そのまま懸垂下降で、斜面下まで下降。

凡そ、このような感じで、ロープをセットして、Aが吊り降ろし用ロープの固定を解除して、ディスタンスブレーキの要領で要救助者を吊り降ろす流れだ。しかし、このままでは鉛直方向以外には下ろせない。どう誘導するといいのか。

吊り降ろし用ロープをセット
吊り降ろし用ロープをセット。さて、どう誘導する?

メインロープは、下部で固定されているが、上部はフリーなので、これをうまく利用する方法はないか。滑落した想定なので、荷重はかけられないが、ガイドロープになら使えないだろうか。
山崎さんは、切断したメインロープの残りを使って、チロリアンブリッジ的に誘導できないかを試行錯誤。結果、一人の力では、どうしても十分なテンションを得られずギブ・アップとなった。

チロリアンブリッジ的な誘導にチャレンジ
チロリアンブリッジ的な誘導にチャレンジしたものの… (黄色のロープは、バックアップのロープです。)
ひとりでは限界が
ひとりでは限界が…

結論としては、メインロープを要救助者へ結束して、下から左あるいは右へ引っ張って、下降の誘導を行うのが現実的のようだ。この方法は条件が限られるものの、上部への引き上げが現実的ではないことは明白なので、今後も吊り降ろしの研究は続けて行きたい。

さて次に、介助懸垂を実施する。条件は、行動不能だが、意識はあり足は基本的に使える場合だ。春のレスキュー訓練では、3人パーティ想定でディスタンス・ブレーキでの介助懸垂を実施したが、今日は2人パーティを想定し、かつ振り分け救助システムの確認を兼ね、セルフ・ブレーキで実習した。振り分けシステムは、これまでも繰り返し実習しているので、スムーズなセットができた。ただし、体重差がある場合は、下降中に体重の重い方へと引っ張られる点は今まであまり意識していなかった。よく考えれば当たり前なのだが、情報として共有しておいた方がいいと感じた。

実戦篇最後は、一応、ライジングシステムの確認を行った。現実的ではないとはいうものの、いろいろな方法を知っておく、使えるようにしておくことは無駄にはならない。荷上げに使えるかもしれないし…。

ただし、1/5システムは沢登りにおいては実戦的ではないだろうということで、1/3システムに特化して実習。
まずは、支点等にカラビナを使い、マッシャーでバックアップを取る方式で、テラスから岩場の上まで要救助者を引き上げたが、かなりの力が必要で、実用には程遠い印象だった。
次に、支点をプーリー(マイクロトラクション等)に変更して、1/3システムでのライジングを実施したところ、体感でカラビナ使用の1/10くらいの力で引き上げることができた。プーリーの優位性は明らかだし、携行すべきものだと実感できた。

搬送については、テキストを使っての図上訓練として、注意点の確認を行った。
実習的なものは、例会の学習会などで実施してもよさそうだ。

以上、B班は吊り降ろしの実習に時間をかけたため、その他はそれほど時間をかけられなかった印象もあるが、繰り返して実習することで、身体に覚えさせることも必要だということで…。

今後は、違う想定も考えて、役立てることにならないようにしたい訓練だが、さまざまな方法を確認する機会としていきたい。


メンバー:堀尾(L) 高森 山崎 古巻
山域:奥多摩
山行形態:訓練山行
コースタイム:
訓練開始(9:50)-訓練終了(15:00)
地形図:武蔵御岳
報告者:古巻

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