(天候)9月23日:曇ときどき雨、のち晴
今年の夏は毎週末のように天候不順に悩まされたが、今回も同様で当初22日実施でスケジュールしたものの、どうにも予報が芳しくない。やむなく23日に順延して実施の運びとなった。
天気予報を睨みながら候補地を何か所か検討したが、結局、安達太良山麓の温泉地帯を流れる酸川の支流の遡下降をチョイスして計画書を提出した。
前日に、同じ安達太良山系の石筵川に入った丸山パーティ情報では大増水だったらしいが、こちらなら集水域も狭いし何とななるだろうととりあえず現地に向かう。
前泊を道の駅猪苗代としたが、季節が一気に進み涼しくて快適を通り越して肌寒いほどの気温だった。今回は、諸般の事情で車を2台としたが、23時前に石田、星野両名と合流して軽く前夜祭を挙行。翌朝は朝食後に中ノ沢温泉を抜けた先の赤留橋まで車を走らせる。
途中、長瀬川の本流は茶色い濁流が流れていて絶賛増水中だ。大丈夫か?と少し懸念しながら赤留橋右岸の広場に車を停め、橋から流れを見下ろす。やや増水気味かなという感じではあるが、水に濁りもなく遡行はできそうでひと安心。
今回は赤留川を遡行し中ノ沢を下降する周回ルートだが、下山地の中ノ沢沿いの林道入口から赤留沢までの車道がかなりの登りで帰りはちょっと苦労しそう。せっかく車が2台あるし、中ノ沢側にも車をデポして楽をすることにした。早速中ノ沢の林道入口まで戻って、幅の広い路肩に古巻車をデポして赤留橋へと戻る。すると、さっきまでいなかった仙台ナンバーの車が1台停まって3人パーティが準備中だった。沢登りのようだ。こんなところで別パーティとかち合うとは思わなかったが、それは先方も同じようで、話しかけてきた年配の男性は仙台の方ということだった。話好きらしく、東北のほかの沢の情報などをタブレット持参で写真付きの解説をいろいろと聞かせていただいた。
広場で身支度を整えていると、一足先に3人パーティが出発。道路を渡った橋の下流側から沢に降りて行く。広場横からも入渓できそうだったが、何度か来ていて慣れていそうな先人の後を追うことにした。
道路を渡って下を覗くと、緩い斜面が沢に続いている。枝が繁っていて降りる前には気付かなかったが、現道の下流にもう1本橋が架かっていた。旧道だろうか。現在は使われていないようだ。
遡行を開始してしばらくは何ということもないゴーロが続く。少し歩くと小さな堰堤がある。一跨ぎで越えられる高さなので目的は何なのだろうかと不思議な構造物であるが、そのすぐ先でゴムパイプが横切っており、それと何か関係があるのかもしれない。
この区間は側壁が立っているところもあり、ここのところの雨のせいか壁から滝となって水が流れていたり、小さなルンゼ状のところにも水流があったりする。おそらく普段はこんなには水流がないのだろう。
小さなCSの滝を越えて進むと、先行する3人に追いついた。右岸には大きな岩小舎がある。お先しますと挨拶してこちらが先行する。その先、小滝を2つほど越えると左岸から水流のある枝沢が出合う。
枝沢を過ぎると岩の堆積した滝のような落ち込みのような滝。右手は激シャワーなので、水流のない左から越えようとしたら、手前の釜が意外と深い。
「わー深いっ」と言いながら、よじ登ろうとしたのだがうまく体勢がとれない。石田さんが見かねて下からショルダーで支えてくれたので、辛くも突破。
越えてから振り返ると、左岸に巻き道があったようで目印が付いていた。どうもいらぬ苦労をしたのかもしれない…。ただ、件の3人パーティも同じところから登ってきたので、正規ルートはこちらなのかもしれない。今日は水量が多くて釜が深かっただけで…。
入渓から1時間15分、Co1085で左岸から枝沢を迎えるとナメ床が現れて、その先に大きな滝が見えてきた。
Co1110付近15m2段の滝だ。直登している記録も多いが、今日の水量では激濡れ確定だし安全を考えて巻くことにする。
右岸の小尾根に取り付いて落ち口の高さくらいまで直上し、右へトラバースしていくと比較的簡単に沢床へ復帰できた。
15m滝を越えたところで、予報通り雨がポツポツと降ってきた。降ってきたなあと少々憂鬱な気持ちになりつつ、休憩を兼ねて雨具を着用する。
すぐ先で左岸からナメで枝沢が出合うがその前後が倒木帯になっていて越えるのがちょっとめんどくさい。
越えた先にスラブの4m滝が懸かるが、その先は右岸にスラブの斜面が広がっており、沢は段々に小滝を懸けながらトイ状のスラブの流れが続いている。おお、これはなかなか見事。ところどころ傾斜の急なところがあるがフリクションが効くので楽しく登って行ける。長さにして200mくらいはあるだろうか。20分ほど登るといったんスラブ帯が終了するが、先方にゴルジュの雰囲気が。
ゴルジュの中に岩の詰まった滝が現れる。水流沿いは水量も多く直登が難しそう。左手の岩をよじ登って上段の滝を偵察する。上段の滝は、下から見ると素直にそのまま登れそうだったのだが、実際には深い釜に阻まれている。左岸の微妙なトラバースで抜けられるかと思ったが、ドボンすればずぶ濡れ必至。面倒なので、胸くらいまで水に浸かって越えられそうか見ると、何とかなりそうなので、待機してもらっていた石田さんに上がってもらって、ザイルを引いて登ることにした。
再び滝の下まで釜に浸かりながら進み、微妙なスタンスを使って体を引き上げる。そのまま左へトラバースして滝の中に入るが、水量がものすごくてかつちょっと滑る。上まで登る前に、左手の岩でいったんピッチを切ることにした。細っこい灌木に支点を作って後続を確保。それぞれビレー点まで登ってもらう。上の滝は水流中ではなく岩の隙間からうまく抜けられそうなので、石田さんに偵察してもらう。ザイルを畳んだりしているとOKのホイッスルが鳴った。了解の意味で、こちらもホイッスルを鳴らして星野、古巻の順で岩の隙間を抜けて滝の上に。
石田さんに聞くと、右岸に巻き道あったよということなので、巻いてしまえば労せずに抜けられるのだろうが、まあいい練習にもなったということにした。ただ、ここで結構水に浸かったため、それからは少し寒い思いをした。
さらに小滝を一つ越えると岩壁から落ちる大滝が見えた。比高は20m位だろうか。水量は少ないが見上げる高さから落ちる様はなかなか見ごたえがある。ただ、左右は岸壁に囲まれており高巻きも容易でなさそうだ。滝の直前まで行って滝見物後左右を見上げるも、ここからは左右に岸壁がそびえており巻けるようには見えない。
少し手前に戻ると小尾根状に張り出した左岸斜面に何となく人の歩いた跡のような箇所があったので、そこから高巻きを始めた。その踏み跡に沿って登って行くと岩壁の基部に出る。左右にトラバース可能なバンドが続いているが、左へ行っても勝算はなさそうなので、右に進むと岩壁の切れるあたりで踏み跡が上に続いている。岩壁の縁を木の根につかまりながら登ると、うまい具合に上部の台地に到達した。
台地上は背丈ほどの笹薮に覆われているが、それまで伺えた踏み跡が見当たらない。やむなく上流方向へと藪を漕ぐが、体感時間で結構な距離を進んだと思った頃、なんだか右側に谷がある様子だ。これ大丈夫なやつか?と思いつつも左側の様子をうかがいながら進むと、やがて樹林が同じくらいの高さまで上がってきている。そこから思い切って左手の斜面を下っていくと、すぐ下に沢床が見えて無事沢に復帰。下流を振り返ると、目の前に滝の落ち口が見えた。おお、素晴らしい。高巻き大成功である。高巻き所要時間は正味20分ほどだったが、どうして台地に踏み跡ないんだろう??少し不思議な感じもする。
大滝を越えると等高線の間隔が一気に広がって傾斜が無くなる。と同時に、いかにも源頭部風の穏やかな渓相に。しばらく平凡な流れを辿ると奥行きのある6mほどの滝が懸かるが、ちょうどCo1260の分岐付近のようだ。水量が多くて直登すると濡れそうなので、右の枝沢に入ってから本流に戻るかたちで高巻く。
だんだんと水流が細くなりヤブ沢化してきた沢を遡行してもあまり面白くなさそうなので、滝を越えたあたりから中ノ沢側へ乗っ越すことにしたのだが、後から思うともう少し辛抱して本流を辿ったところから乗っ越した方が楽だったようだ。中ノ沢のCo1230付近で出合う枝沢に入ると楽そうなのだが、その枝沢がもう少し赤留川に近づいたところで乗っ越した方が藪漕ぎが少なく済んで、結果的に時間の短縮となったと思われる。
ネットでは枝沢まで13分とかいう記録もあったのだが、我々は1時間近くを費やしてしまった。ここは完全にルートファインディングの失敗だ。さっきの大滝の高巻きの加点は相殺されて、実質マイナスだ。素直に反省したい。
ともあれ、藪漕ぎから枝沢に到達したところで大休止しカロリー補給。藪漕ぎ、結構すごかったぞ。石田さんなどは、登山道があったらそのまま下山しようとか言い出すし…。幸いに登山道らしき所になぜか子供用の橇のようなものが落ちてはいたが、ほとんど藪に埋もれて道形が判然としない状態だったので、そのまま藪漕ぎを継続することになった。中ノ沢の景観はなかなかよろしかったので、結果としては登山道がなくてよかったとも言える。
さて、大休止後枝沢を下降する。本流に合流する直前に少し傾斜が出てくるが、下降自体には問題もなく本流に合流できる。合流する直前に本流の赤いナメ床が見えるのだが、ぎょっとするほど赤い。ペンキで沢床を塗ったのかと思うほどだ。
本流に出るとナメふぇち好きの星野さんは大喜びである。テンションもMAX、駆け出しそうな勢いでどんどん先行してしまうが、まあ危ないところもないし、見ていて面白いからいいか。
でも、実際この赤ナメは見事だ。増水気味だからなかなか迫力もあって、苦しい藪漕ぎで折れかけていた心を癒してくれた。ところどころ滑りやすい感じのところもあるが、概ねフリクション良好で傾斜のあるところも普通に下っていけるのでなかなか楽しい。
しばらく下って大き目の斜瀑を降りきるといったん赤ナメ地帯は終了して、ゴーロっぽい渓相になる。楽しくない。テンション下がる…と思っていると、Co1100付近で右岸から枝沢が出合うとまたナメ地帯になる。今度は赤くなく、普通の色(ってどんな色?)のナメだが沢幅いっぱいのナメはやはり楽しい。ところどころ巻き下る必要はあるがザイルを出すこともなく快適に下降を続ける。
その後はゴーロっぽいところとナメが交互に現れて、枝沢から30分ほどで岩盤が発達したトイ状の流れになる。ところどころ深いところがあり、そこではスリップしたくないぞ。流れは速くないので危険はないけれど、これ以上濡れたくないな。
下降中盤以降は、ときどき陽が差すようもになってきた。木漏れ日が水面に届いていい雰囲気だ。
思い思いに歩きやすそうなところを進むと前方に何やら橋が見えてくる。目を凝らすと水管橋だ。何用か不明だが温泉でも引いているのだろうか。
こんな設備、絶対に管理用の道あるだろと思い、橋に登って右岸に渡ると、思った通り下流に道が続いている。地図上の林道よりは少し上流だが、今日は午前中の雨とシャワークライミング気味の遡行で寒い思いをしており、既にパーティ全員の心は温泉に飛んでいるので沢下降はここで終了してこの道を辿ってみることにする。
すぐに道形は踏み跡程度から、かつては車が通っていたんだろうくらいの幅に広がったので、このまま辿っても問題なさそうだ。しっかりした道を元気に歩いていると登り坂…。地図上の実線路につながるのかと思ったら、どうもそうではないらしい。尾根の方へ上がっていくが、もう車道までいくらも距離がないので、構わず進む。分岐が2か所ほどあったがどちらも左を選択。そして橋から30分で、無事古巻車をデポした林道の入り口に出てきた。
とりあえず、古巻車に乗り込み赤留橋まで行くと、仙台の皆様は既に撤収した後だった。星野さんはもう一度会って話をしたかったようだが残念。
ここで、片づけをして温泉を目指す。帰り道は中ノ沢温泉街を通るので、目についた最初の旅館で日帰り入浴をやっているか確認すると、やってるよ~ということで700円也で入浴。中ノ沢温泉はPH2前後の強酸性の温泉ということだが、ややぬめりのあるお湯で気持がいい。露天風呂は大きな庭園に面していて開放的だがちとぬるめだった。露天風呂を満喫した後に少し熱い内湯で仕上げて身ぎれいになり、そのまま宿の駐車場で解散となった。
急遽決めた安達太良エリアの沢の遡下降だったが、思いの外楽しむことができたので良かった。
赤留橋右岸広場(7:40)-Co1030枝沢出合(8:18)-Co1085枝沢出合(8:55)-15m2段滝上(9:15/25)-大滝上(11:15/25)-赤留川乗越開始点Co1270付近(11:45)-中ノ沢枝沢(12:45/13:05)-中ノ沢本流Co1225付近(13:25)-Co1100枝沢出合(14:20)-水管橋(15:00)-中ノ沢林道入口(15:30)