笛吹川東沢鶏冠谷左俣三ノ沢

(天候)6月22日:晴のち曇

伊藤さんリーダーの鶏冠谷左俣シリーズもラストとなる三ノ沢。鶏冠尾根の下降はちょっと気が重いのだが、コンプリートしないのもモヤモヤするのでメンバーにエントリー。
前夜、星野さんをJR八王子駅でピックアップして集合場所の道の駅みとみへ向かう。
翌朝は、朝5時に道の駅から西沢渓谷駐車場へ車を移動させて、身支度を整えて出発。
二俣の吊り橋では、恒例の鶏冠尾根の写真撮影。

笛吹川二俣の吊り橋から望む鶏冠尾根
二俣の吊り橋を通る度に同じアングルで撮ってしまうので、何枚あるかわからない鶏冠尾根の写真。

鶏冠谷出合で一息入れてから、本流を徒渉して鶏冠谷に入る。早朝なのでまだ陽が差し込まない渓の中は少し薄暗い。出合からしばらくはゴルジュっぽい流れに小滝が段々と懸かっているが、段々の段差が大きいので乗り越えるのがちょっと大変。魚留の滝は定石通り左岸の踏み跡から巻いて越える。
飯盛沢の出合で小休止。奥飯盛沢出合の大滝は、いつ見てもつい見上げてしまう。そのすぐ先の3段のナメ滝は1段目を左岸から巻いて落ち口へ降りて、そのまま右の縁をスリップに注意しながら越える。

鶏冠谷序盤に懸かる魚留の滝
魚留の滝は左岸斜面を上がってトラバース気味に高巻く。
3段のナメ滝上部は、右端を登攀
3段のナメ滝上部は、右端をスリップに注意して登攀。

逆さくの字滝は右岸から巻くこともできるが、この巻きが結構悪く時間がかかる。本日は、巻かずにリーダーがザイルを引いて通常ルートを登りザイルを固定。2番手以降はそれぞれ固定ザイルを手掛かりにして登攀。ぼくは毎度のマイクロトラクションをお守りにした。普通に登攀・確保を繰り返すよりもこの方法が確実で早いようだ。もっとも、ある程度全員が沢慣れていることが前提だけれど。

逆さくの字滝の登攀
逆さくの字滝は、トップが固定したザイルを掴みながら登る。

逆さくの字滝の先で左岸のスラブ斜面を見上げながら進むと、入り口で右岸から滝で小沢が出合うゴルジュになる。ここはきれいな景観でかつ楽しい区間だ。へつったり小さく巻いたりしながら進む。ゴルジュ出口のスラブの斜瀑は深い釜を擁しているが、右岸の水中スタンスをうまく拾って越えることができる。4回目なんだけど、最後のスタンスが見つからない。あれあれ?と足を探っていたら、後ろの高森さんが「もう少し深いところ…」と声をかけてくれた。ちょっと腰をかがめて右足を延ばすと、あったあった。最後のスタンスは記憶より深いとろにあったのだった。次からは間違わないぞと思ったが、次、また来るのか??
ゴルジュを越えるとナメが続き、すぐに二俣。間のテーブル岩でいつものごとく休憩する。

水中のスタンスを使ってへつる
水中のスタンスを拾って突破する。
鶏冠谷二俣の休憩適地
鶏冠谷の二俣。いつもの場所で小休止。

左俣に入り、崩壊地のところに懸かる滝を浮石に注意して左から越えると、次のアトラクション、ヌメヌメの滝。ここは高森さんがリードに立候補。右端のクラック沿いにザイルを延ばすが、ところどころすごい格好で登っている。ってヒトのこと言えないんだけれど。
クラックの中に手はたくさんあるんだけど、なにしろ足元がヌメヌメつるつるで決まらない。何とか足を置けるところを決めて、腕で支えて伸び上がるように身体を持ち上げていく。左側のちょっと乾いたところを登れるといいのだが、そちらへ移る途中が悪く、結局クラック沿いに落ち口に抜け出してほっとひと息。はあ、汚れた…。

滑る滝をリードする。
高森さん、ヌメヌメの滝のリードにチャレンジ!

ヌメヌメ滝を越えると一ノ沢との出合である。ここは大変ダイナミックな景観で、左俣随一の景勝地ではなかろうか。一ノ沢出合の大滝は本谷の滝よりも高さがある。本流の滝は登って登れないこともないらしいが登ったことはない。無理せずとも左岸をうまく巻ける。巻くルートの取りつきがちょっと悪いと言えば悪いが、慣れていれば大丈夫。
大岩に乗ってすぐ上の灌木を掴んで体を引き上げると、台地の斜面に乗れるので、木の根や灌木をたよりに高度を稼いで、あまり上りすぎないうちに左へトラバースしていく。踏み跡もあるので、踏み跡に従って斜面の縁を歩くと、左に大滝を見下ろしながら落ち口のすぐ上に上手に降りることができる。正味10分程度である。続く5mほどのスラブ滝は左岸を小さく巻いて越える。

一ノ沢出合に懸かる本谷の滝の高巻き
本谷側の滝の巻きはここから。トラバースできるところまで登るが、ちょっと急斜面だ。
巻き終わりは簡単に沢に戻れる。
巻き終わりは簡単に沢に戻ることができる。

一ノ沢からは20分ほどでニノ沢、さらに15分で三ノ沢の出合。三ノ沢は本谷側が階段状の小滝、三ノ沢はトイ状の4m滝で出合っている。二俣以降休憩を取っていなかったので、ここで小休止。カロリーと水分の補給をして本番に備える。そしていよいよ最終課題、鶏冠谷左俣三ノ沢である。

ニノ沢の出合
ニノ沢の出合。本谷側は数段の滝が懸かっている。
三ノ沢出合
三ノ沢はトイ状の滝で出合う。

出合のトイ状は手足豊富なので問題なく越えると…おぉ、大きなナメ滝が続いている。
本谷との出合にこの大ナメ滝があれば目を惹くのだろうが、末っ子はちょっと奥ゆかしい性格なのかもしれない。数段に分かれて20~30mほどのナメ滝となっているが、ひとまず最下段を中央付近に取り付いて登り始める。滑ったところに注意すれば登って行くことは可能である。が、2段目以降はちょっと危なっかしい。安全優先で、そこからは右岸にトラバースして右岸の樹林を巻いて越えた。

三ノ沢最初の大ナメ滝
出合のトイ状の滝を越えると、見応えのある大ナメ滝が懸かっていた。

最初の大滝を越えたあたりで沢に戻りその先のナメ小滝は快適に越える。しかし、もう少し闊達なナメの続く沢かと想像していた三ノ沢だが、ちょっと荒れ気味で殺風景な感じだ。

少し荒れた渓相
最初の滝場を越えると、少し荒れた渓相となる。

出合から30分ほどで、狭い岩溝の流れとなる。狭い隙間に体をねじ込むように登って行く。登るにつれて少しずつ隙間が広がって登りやすくはなるが、最後は右から巻き気味に越える。

狭い岩溝
狭い岩溝に身体をねじ込むようにして登る。
岩溝の幅は徐々に広がる
登って行くと徐々に幅が広がって登りやすくなる。

Co1800の二俣は右に入るが、右はスラブ帯の登りが続く。傾斜は結構あるが、乾いたフェイスを登ったり、脇のクラック状のところに活路を求めたりして高度を稼ぐ。少し傾斜が落ちたところでCo1900の分岐となるが、ここで大休止。

三ノ沢Co1800二俣
Co1800の二俣は右に入る。
Co1800から上流のスラブを登る
上流のスラブのクラック沿いを登る。

さて、この分岐はどちらに。
ぼくと高森さんは左に行くものと思っていたら、リーダーは右を選択。
右は幅の狭いスラブ滝。手足豊富なので、無心に登って行くと順調に高度を稼げる。振り返ると怖そうなので上だけを見て登って行くとだんだんと樹林が近づいてくる。

Co1900分岐右に懸かるスラブ滝
Co1900を右に入ってすぐの滝は手足豊富である。
だんだんと傾斜が増してくる
だんだん傾斜が急になるが、何とか登って行ける。

次の分岐でリーダーは右に入りたかったようだが、ちょっと厳しそうだったため、一旦左に入って何とか回り込めないかルートを探るが、どうも難しそうだ。やむなくそのまま左を登って行く。ところどころでお助けが出るが、安定した場所が狭いので、後から登ってリーダーを追い越して先に安定したところまで登って…と何度かトップが入れ替わりながらとりあえず少し広い場所で集合。いったん右との中間尾根に上がって右側を覗くが、ちょっと急で登るのは難儀そうだ。尾根に上がってしまったし、このまま藪を漕いで稜線を目指すことにする。

よじ登るように高度を上げていく。
よじ登るように高度を上げていく。
尾根に取りついて稜線を目指す
尾根に取りついて稜線を目指すことにした。

かくして左俣お約束の急な藪漕ぎに突入。シャクナゲ多めの藪を息を切らせながら喘登。
途中でザレた斜面の縁に出て、掴むものが乏しくなる。伊藤さんと星野さんはそのまま登っていたが、右の藪に入るとうっすらとした獣道のようなところを辿れそうだ。先行する伊藤さんに声をかけて右の藪に入った。うん、こっちの方が安心。
そのままとにかく高みを目指して進むと、ようやく稜線の登山道に飛び出した。2177m峰の少し南のCo2090付近である。13時15分、まあまあの時間だ。少し休憩して息を整えた後に下山開始。ここからも長い。

鶏冠尾根の登山道に出てちょっと休憩
鶏冠尾根の登山道に出たところで一休み。

鶏冠尾根は距離のわりに時間がかかる。鶏冠山も目の前なのだが、山頂までは登ったり下りたりと下山開始から45分かかった。山頂はほんのちょっと道から外れるが、眺めがいいのでつい寄り道。
第三岩峰はう回路から巻いて基部まで鶏冠山から30分。そこからしばらく岩稜が続く。リーダーが丁寧にザイルを出してくれるので、ありがたく頼って降りたが、やはりちょっと時間がかかる。チンネのコル(第一岩峰のコル)に着いたら16時半近くになっていた。

眺めのいい岩峰
周囲が開けた岩峰で眺めを楽しむ。
鶏冠尾根を振り返って
よくこんなところを「登山道」と称して紹介するものだと…。

ここからも長いんだよなあと疲れた体を少し休ませて、足早に下山を再開。大変なところは過ぎたのだが、コルの直下は急降下が続くので、それはそれでなかなかにしんどい。
左右から沢の音が聞こえてくると出合は近い。もうすぐ終わるぞと気持ちに活を入れて最後のジグザグを降りて鶏冠谷に降り立つ。出合の本流を徒渉して、終わった~とひと息入れる。何とか明るいうちに下山できた。

予想より遅くはなったが、伊藤さんと共に鶏冠谷左俣シリーズの最終章を飾ることができた。
うん、そういう意味では”達成感あり”である。支流だけなら高森さんもコンプリート達成だ。
個人的にはもう鶏冠尾根を歩くことはないのだろうな…と思うとちょっとしんみりとした気分とほっとした気分がない交ぜになった気持ちになる。最初の鶏冠尾根の下降から十数年経つ。その後しばらく鶏冠尾根は眺めるだけだったが、2021年のニノ沢2023年の一ノ沢、そして今回の三ノ沢と隔年で歩いてきた。それぞれいろいろな思い出があるが、ひっくるめるとどうもどの支流も同じような渓相だったようにも感じる。スラブ主体だが、ちょっと荒れていて決して美しいばかりではない。落石の危険もあるし、滑落すれば結構ダメージがあるだろう。詰めの藪漕ぎも(藪漕ぎの少ないルート取りはできるみたいだけれど)急峻かつなかなかハードだ。コンプリートに拘っておいて何だという話だが、一ノ沢かニノ沢か三ノ沢かどれかひとつ登れば、”以下同文”として終了でよさそうにも思ったりして…。

ほぼ車のいなくなった西沢渓谷駐車場で片づけを済ませて、お風呂は高森さんお気に入りのはやぶさ温泉へ。久しぶりだ。疲れて汚れた体を清めて帰路に就く。
中央道の渋滞もほぼ解消していたので、順調に星野さんを送り届けて帰宅。あー疲れた。
翌月曜日は体がだるく頭の回転の悪い人になって、仕事を何とかこなしたのでありました。


メンバー:伊藤(L) 星野 古巻 高森
山域:奥秩父
山行形態:沢登り
コースタイム:
駐車場(5:15)-二俣分岐(5:45)-鶏冠谷出合(5:50/58)-飯盛沢出合(6:38/45)-奥飯盛沢出合(7:05)-逆さくの字滝(7:20/35)-二俣(8:10/20)-一ノ沢出合(9:19)-二ノ沢出合(9:41)-三ノ沢出合(9:55/10:05)-Co1900二俣(11:15/40)-鶏冠尾根Co2090付近(13:15/30)-鶏冠山(14:15)-第3岩峰基部(14:44)-チンネのコル(16:25/40)-鶏冠谷出合(18:05/15)-駐車場(18:58)
地形図:金峰山
報告者:古巻

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