(天候)7月21日:晴; 22日:晴(山頂周辺のみ霧)
夢の浮島から花の浮島へ
利尻山に登った翌日、礼文島へ移動し、7月21日に桃岩展望台コース、22日には内路から礼文岳を往復するルートを歩いた。それぞれ日帰りのお手軽ハイキングだが、礼文島のお花畑と森を楽しむことができた。
21日は、利尻鴛泊発9:20のフェリーで礼文島へと向かう。約45分の船旅だ。鴛泊港を出たフェリーは、ペシ岬を回って北へと進む。鴛泊港出航の際には、利尻富士がきれいに姿を見せていたのだが、沖に出るにつれて手前の雲が山体を隠してしまい少し残念であった。
10時過ぎには礼文香深港へ着岸。礼文島の宿はフェリーターミナルから徒歩数分なので、一旦大きな荷物を置きに行く。
今日は、桃岩展望台コースを登山口から島南部の知床まで辿り、バスで香深まで戻ってくる計画だ。フェリーターミナル内の寿司店で早めの昼食を取り、11時34分発のバスで桃岩登山口まで行く。乗車時間は10分弱である。10人くらいの同乗者が登山口で降りる。
桃岩展望台登山口から花と展望のトレイルへ
バス停から進行方向へ少し進むと旧桃岩隧道だが、現在は坑口がべったりとコンクリートで塞がれており通行不能である。桃岩展望台への登山道はその手前左手に入口がある。

登山口から10分も登ると車道が横切り、さらにひと登りで桃岩展望台だ。目の前には桃岩が大きく見えるが、こちら側からだとあまり桃っぽくない。因みに、桃岩の頂上にも一等三角点があるらしい。

展望台でしばし展望を楽しんだ後、元地灯台方面へと進む。道はしっかりしているが、何分狭いところが多いので、すれ違いや追い越しには気を遣う。
目の前はすぐ海で、地図を見ると登山道は標高200mほどであるが、本州であれば高山植物に分類される花々があちこちに咲いている。利尻島で見た花もあるが、見なかった花もある。ただ、種類の同定は結構難しい。種類が違う似たような花も多く、素人目には区別がつかないのである。…もっとも、あまり真剣に同定しようとしていないからということもあるのだが…。




ところどころレブンウスユキソウも見られる。

桃岩展望台から、小山を越えて少し下ると「キンバイの谷」と標識のある所へ出る。キンバイの花は見られなかったが、いかにもお花畑風な周囲の様子が好ましい。木道が海の方へ延びているので、少し立ち寄って景色を楽しむ。キンバイの花期は6月のようなので、やはり6月に来ないと見られない花も多そうだ。

そこから、海沿いの崖の上までしばしの急登である。上り詰めた233m標高点付近は「ツバメ山」と呼ばれているようだ。振り返ると桃岩から歩いてきたルートが見渡せる。

ツバメ山から元地灯台まではほぼ平坦な道だ。灯台の前からは利尻島もよく見えるが、雲もだいぶ切れてきて利尻富士の姿もはっきりしてきた。折よく、沓形へ向かうフェリーだろうか、海の上を進む船の姿も見えて、ちょっと絵になる風景だ。

灯台からは30分ほども歩くと、南の終点・知床口へ到着する。そこからバス停へ直行してもいいのだがまだ少し時間が早いので、北のカナリアパークへ寄って行くことにした。「近道」の表示から10分ほどで到着。売店でソフトクリームを買って、外のベンチで食べながら寛ぐ。正面に利尻富士が立派に見えて、映画のロケ用とは言え随分といいところに作ったものだと感心する。

ロケに使われた建物が残っていて中を見学できるので、ぐるっと一回りしてからバス停へ向かう。「第二差閉」という変わった名前のバス停であるが、「差閉(さしとじ)」が部落の名前で”第二”は本家差閉とは違うもう一つのバス停といった意味のようだ。香深まで戻る間に「第二○○」という名前のバス停がいくつかあった。
宿に戻ってからは、宿から5分ほどの日帰り入浴施設へ行って汗を流す。宿でチケットをくれるのでありがたい。
内路コースで礼文岳を往復
翌22日はレンタカーを借りる。午前中に香深から北へ10kmほどの内路にある礼文岳登山口から礼文岳を往復し、午後はレンタカーで島の北部を周遊しようという予定である。
宿から車で5分ほど走ると、礼文島唯一のセイコーマートがあるので、昼食やおやつの買い出しをする。フェリーターミナルからは少し離れるが、観光客・地元の方含め結構な賑わいである。セイコーマートからさらに10分ほど北上すると、内路の礼文岳登山口に到着する。
利尻山と違い日本百名山ではないからか、登山口もいたって静かである。自転車と車がそれぞれ1台づつ停めてあるだけだった。

登山口は駐車場の奥にある。階段を数段登り擁壁の上に出た後はジグザグに高度を稼いで尾根に乗る。15分程度のアルバイトである。
昨日の桃岩展望台コースは、花の浮島の代表ルートとも言える花に彩られたトレイルだったが、礼文島の最高峰・礼文岳の登山コースは比べるとだいぶ地味である。そもそも標高が低いということもあるが、コースの大半が樹林帯で花の種類も多くない。
かつて礼文島は緑の多い、森におおわれた島だったらしいので、ある意味そもそもの礼文島らしさを体験できるルートといえるのかもしれない。尾根に乗った後は、ゆったりとした傾斜の道を登って行く。林床に小さな花が咲いているが、それよりもキノコがよく目についた。もしかすると、秋になるともっとキノコが出てくるのだろうか。



1時間ほど登ると、起登臼コースとの分岐点に着くが、起登臼コースはもはや廃道となっていて使われていないようだ。そちら方面へはロープが張ってあり立ち入り禁止となっていた。
分岐付近から少しずつ樹林が低くなってきて見通しが良くなるが、山頂方面にガスが湧いてきていて、ちょっと前途に不安が出てきた。

樹林帯を出て山頂手前の410m圏ピークに差し掛かる頃には、ガスで何も見えない状況に。おまけに風も10m/sを越えるくらいの強さで吹いており、遮るものが何もない吹き曝しの状態が続く。海が近いので風に乗って海水も飛ばされてくるのか、何となくベタッとする風である。

展望のない強風吹き荒れる頂上で一息入れていると、男女のペアが登って来た。二人と目を見合せてお互いに苦笑いであいさつすると、女性の方が関西方面のイントネーションで「な~んも見えん。ゼロやん。遠路はるばるやってきたのに~~」と声を上げていたが、いやあ全く同感である。
しばらく様子を見てもガスが晴れたり風が収まったりする様子は見られなかったので、15分ほどで下山を開始する。

来た道を淡々と降るが、410m圏ピークを過ぎ、樹林帯に入ると周囲のガスは切れて風も収まってきた。しばらく降った箇所で山頂部を振り返ると、山頂部だけに雲がかかっている様子が伺えた。翌23日に礼文島を離れたのだが、稚内に向かう船から見るとその日も礼文岳山頂部のみにガスがかかっていたので、雲のかかりやすい地形なのかもしれない。

礼文岳から降りた後は、車で澄海岬、スコトン岬、金田ノ岬と岬めぐりをしてから、休止中で半ば廃墟のような礼文空港を見て、最後にセイコーマートでビール、つまみを仕入れて宿に戻った。
山頂からの展望を楽しみにしていた礼文岳だったが、残念ながら楽しみは次回への宿題となった。次回はぜひ6月に訪れて、今回見ることのできなかったレブンアツモリソウやレブンキンバイソウなども見てみたいと思う。
ハートランドフェリーがドローンで撮影した礼文岳の動画を公開しているので紹介するが、晴れていれば礼文岳は本当に展望の山で、今回と異なり、きっと気分爽快だろう。
[7月21日]桃岩展望台登山口(11:45)-桃岩展望台(12:00/05)-元地灯台(13:00/05)-北のカナリアパーク近道分岐(13:40)-北のカナリアパーク(13:45)
[7月22日]内路登山口(8:53)-起登臼コース分岐(9:43)-礼文岳(10:35/50)-起登臼コース分岐(11:38)-内路登山口(12:20)