片品川根羽沢原沢~中ノ岐沢東岐沢支流

はじめに

(天候)8月28日:曇ときどき雨

根羽沢流域と言えば、ガイドブック等にも多く紹介されている大薙沢湯沢がよく歩かれている。しかし、下流部の支流は遡行の記録が見つからずどんな渓相なのか不明だ。地図を見る限り、あまり変化のある渓相にも思えないが、


…原沢や大薙沢左俣は多分滑床、滑滝の続く快適な沢ではないのだろうか・・・・・・。

『帝釈山脈の沢』市川学園山岳OB会・佐藤勉編著(白山書房・2001年5月)

という記述を読んで興味を惹かれた。確かに、大薙沢の左俣はなかなか変化に富んだ遡行ができるし、並列に扱われた原沢ももしかしたら…と思い、計画書を提出しておいた。一方で、ネット上には「原沢は過去の記録によると遡行価値が少なく…」という情報もあり、果たしてどっちなんだろう??とちょっと楽しみに山行当日を迎えた。

原沢入渓

大清水の駐車場に車を停めて、8時半過ぎに根羽沢沿いの林道へ入る。頭上を送電線が横切った先で原沢が林道を横切るはずなのだが、先月大薙沢を遡行した時の記憶を辿っても、沢が横切ったという記憶がない。どうなっているのだろうか。

20分ほど林道を辿ると送電線が頭上を横切る。地形を見ながら原沢を探してここだろうと当たりを付けたのだが、沢?どこ?という風景だ。何となく谷が刻まれているようにも見えるけれど、藪に覆われた窪地があるだけだ。

林道から原沢へ入渓...
原沢への入渓点は笹薮で沢らしい様子が見られない…
藪を漕いで入渓?!
藪を漕いで沢へと進むが、果たして沢登りになるのか??

既に水がないのか…。いや、少なくともそこそこの距離を流下しているので、水がないという事はあり得ない…ハズ…。数々の疑問を胸に、取り敢えず窪地に向けて笹薮を抜ける。水ないなあ…。今日は尾瀬沼までハイキングかなあ…。と、思いながら少し先へ進むと、奥の方からかすかに水の流れる音がする。…やっぱり水あるのかなと思いながら、水音の方へ進むと、なんと!!

林道を地下から越える導水路への入り口
林道を保護するためか、水流はいったん導水路に集められて根羽沢へ注いでいるようだ。

なるほど、林道だか旧金鉱行き軌道だかの保護のためだろう。沢の水を地下の導水路に誘導していたのであった。最初水流がなかったのも、林道を沢が横切る記憶がなかったのも、こういうことか…。いやあ、水があってよかった。そこからは、まあまあの水量で沢が続いていているようで一安心。

原沢遡行

出だしで思いきり不安を掻きたてられたが、水があったことでほっと胸をなでおろして遡行を開始した。しかし、5分ほど遡ると前方に堰堤が現われた。やっぱりあったか…。最初の堰堤は左岸斜面を上がり巻いて越える。すると、さらに上流にも堰堤が見える。いったん沢に降りて、次の堰堤は右岸から越えるが、右岸には堰堤を造った時の工事用道路のなれの果てのような台地が続いていた。結局、堰堤は全部で4基あり、2つ目以降は、全てその右岸台地より巻いて越える。

地形図では、下流部にしばらく崖記号が続く箇所があるが、そこは堰堤地帯で特にゴルジュのような地形ではなかった。堰堤地帯を越えると平凡な渓が続く。ところどころ、踏み跡も残っており、人が入っていなくもないようだ。ただ、魚はあまり見かけなかったので、釣りというわけでもなさそう。

穏やかな流れが続く原沢
原沢は穏やかな流れが続く。水涸れまで、ほぼこんな感じの渓相だ。

左右が開けた森の中の静かな流れを淡々と遡行する。穏やかで眠気を誘う…。左右から水流の細い枝沢を何本か迎え、1時間半ほど遡ったところで綿貫さんが、「あ、きのこ」と声を上げた。見ると、おぉ、食べられるやつだ。押し合い圧し合い生えていて大変に密だ。綿貫さんが、大喜びで収穫に励む。この先にも、食用菌があるかと思って気を付けていたが、どうもここワンポイントのみだったようだ。

ヌメリスギタケ見つけ!
流れの傍らの倒木に食べられるヤツが密生していた。

淡々とした遡行をさらに30分ほど続けると、既に水涸れの雰囲気が漂う。尾根を乗っ越して東岐沢方面へ下降する計画のため、念のために水を汲んでおく。

渓が少し狭まってきた
渓が少し狭まってきたものの、雰囲気は相変わらず…
もうすぐ水涸れ
想定よりもだいぶ早く水が涸れてしまいそうな雰囲気に…

水を汲んでしばらくは水の音も聞こえていたが、ついに静寂が訪れ、代わって笹薮が覆いかぶさるようになってくる。ところが、足元には踏み跡のような軌跡がずっと続いている。人が頻繁に訪れるとも思えないので、おそらく獣の通り道になっているのだろう。上半身は笹薮を漕ぎながら、足元は踏み跡(獣道)を追うという不思議な詰めである。

綿貫さんはというと、初めての本格的な笹薮漕ぎに苦労している様子。あまり先行してしまわないよう、ゆっくり目に登っていく。それにしても、予想より水涸れが早かった。標高差でもう100mくらいは行けそうに思っていたのだが、想定外である。
おまけに、どうも計画の沢筋から左へ外れているようだ。水を汲んだあたりで左に引き込まれたようだが、分岐があったようにも思えない。水の流れている方へ進んでいるので、計画で詰めるつもりだった沢筋は水がなかったのか?地形図だと、1870.7m三角点と1975m峰の最低鞍部に詰め上げる沢筋が一番明瞭に見えたのだが、どうも実際の地形ではそう単純でもなかったようだ。多少余分なアルバイトをすることになるが、リカバリ不能なほどルートを大きく逸脱した訳でもないのでそのまま進んだのだが、後から思うと「多少の余分なアルバイト」は「プラス1時間の藪漕ぎ」と同義で、綿貫さんには苦労を強いてしまったかもしれない。

水が涸れると藪漕ぎに突入
足元には獣道らしき踏み跡があるが、上は背丈ほどの笹薮が続く。

頭上に明かりが見えだしてしばらくでやっと尾根に到達してほっと一息。ところが、詰め上げたのが枝尾根だったので、方向を見定めるのにしばらく行ったり来たり…。何とか、主稜に到達して反対側にすぐ乗っ越してしまったのだが、ここも最低鞍部まで尾根を下ってから下降した方が藪漕ぎが少なかったかもしれない。

東岐沢支流から東岐沢を下降

下降した沢筋は、等高線が開いてもいるのでしばらくは水が出ないだろうと思ってはいたが、降れども一向に水が出てこない。通常は、10~20分も下降すると水が流れ出すことが多いのだが、延々と藪漕ぎを続けて凡そ1時間。やっと流れの傍らに飛び出した。綿貫さんは、ここで藪漕ぎから解放されて心底ほっとした様子だった。

藪漕ぎ1時間。やっと東岐沢支流の水流へ到達
下降の藪漕ぎも飽きてきたころ、やっと流れのあるところへ出てきた。

水汲みからここまできちんと休憩もしていなかったので、ここで大休止。行動食をお腹に入れて、藪漕ぎで消耗した気力を取り戻す。東岐沢の本流まで、さほどの難所はないだろうと思っていたが、休憩後歩きだしてすぐに2mの滝があっただけで、想定通り30分ほどの下降で東岐沢の本流に出合う。

本日、唯一の滝
東岐沢本流への下降中に現れた滝。本日唯一の滝である。 右岸を巻き気味に下降可能。

本流は、広い谷に思ったよりも水量豊かに流れていたが、左右の台地を縫って下降できるので楽ちんだ。おまけに要所にピンクテープでマーキングしてあり、細々と踏み跡が続いている。帰宅後に、いろいろと資料を漁ってみたら、かつて東岐沢の右俣から鬼怒沼へ抜ける登山道があったことが分かった。

東岐沢本流の様子
東岐沢本流は広い河原の中を流れる。旧登山道跡にはピンクテープが….

出合から10分ほど下降すると、こちらも水量豊かに猿沢・ブナ沢が合流する。さらに20分で前方にスーパー林道の橋が見えてきた。どう林道へ上がろうかと思って左右を見ると左岸沿いに平場が続いているのを確認。上がってみると、明らかな車道跡である。ここを辿って数分で東岐橋の袂に到達。ここから1時間半ほどの林道歩きが待っているが、「結局、何にもなかったねえ」「どこで、詰めのルートを間違えたかねぇ」などと今日の山行を振り返りながら、大清水への道を辿った。

そうそう、帰りの林道でも山の収穫を少しいただいて、綿貫さんの夕餉の食卓は賑わったようである。そういう意味ではめでたしめでたし(…だった?)

まとめ

さて、結果として、最初に引用した『帝釈山脈の沢』の原沢に関する記述は全く的を射てなかったわけだが、結果を確認できたことも収穫である…とか言ってみたりするのは、まあ負け惜しみである。一昨年あたりにコロナ禍のため冴えない沢登りを続けていた頃を思い出したりもしたのだが、おかげでコロナ禍前後に入会した会員は、ちゃんと藪漕ぎするような沢登りをあまりしていないことにも気づかされた。そういう意味では、期せずして綿貫さんの「藪漕ぎトレ」となってしまった今回の山行だが、山行後に前向きなコメントももらってもいる。綿貫さん含め、新入の会員各位においては、是非これからいろいろな経験を積み、一層レベルアップに励んでいただき、会を盛り立てていただければと思うのでありました。


メンバー:古巻(L) 綿貫
山域:尾瀬
山行形態:沢登り
コースタイム:
大清水駐車場(8:35)-原沢入渓(8:57)-Co1480分岐(10:34)-Co1590水涸れ(11:00/11:05)-稜線(12:20/13:00*)-東岐沢支流Co1650(14:15/50)-東岐沢本流(15:25)-東岐橋(16:03)-大清水駐車場(17:30)
*稜線を乗っ越す際に、ルートを探して暫し彷徨う。
地形図:三平峠
報告者:古巻

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