泉水谷小室川谷松尾沢

天候:晴

以前、丹波川の支流ムジナ沢トノ沢を遡行し、小室川谷の枝沢を下降した際に1458m峰(砥沢山)の裾を巻く立派な山道を横切った。その山道がどこへ通じているのか気になっていたが、新型コロナ対応の安近短シリーズを調べる中で、大菩薩丹波山道の追分と三条新橋を繋ぐ道であることが判明。ならば歩いてみようと今回の計画を立てた。
せっかくなので、沢登りと組み合わせることにして、小室川谷を遡り、S字峡を越えたところで出合う松尾沢を詰めて、サカリ山付近から件の道を三条新橋へと下山する計画とした。
週末は中央道も奥多摩も混雑しそうだし、ここのところ、毎週のように山行を続けていて、そろそろ家族の目も厳しくなりそう…。夏季休暇がまだ残っているし、金曜は休めそうだ。ならば平日山行ということで、9月4日に計画を実施した。

平日なので、三条新橋の駐車スペースも空いているだろうと思ったところが大間違い。
8時過ぎに到着すると、すでに7~8台が駐車している。うーむ、釣りの人々なのか…。駐車の余地はまだ数台あるので、何とか車を停めて身支度を整える。

出発しようとすると、もう1台自動車がやって来たが、沢装束らしき男性1名が乗車している。一般的には、小室川谷か大黒茂谷かだろうけど、どっちかな~、などと思いながらゲートの脇を抜けてひと足お先に林道に足を踏み入れた。
小室向の標柱は、少し倒れ掛かっており、初めて見た頃の新しさは無くなっている。そろそろ更新時期かもしれない。それはともかく、そこから山道を辿り、泉水谷へ下降。と、見慣れた木橋が見当たらない。大増水しているわけではないので、徒渉に問題はないが、橋は流されてしまったのだろうか。それとも、わざと撤去したのか?2年前には、立派に架かっていたのだけれども…。
適当に泉水谷を渡り、後ろを振り返ると、若い男性の単独行者が追いついてきていた。出発するときに、車で到着した人のようだ。若そうだし、いずれ抜かされるだろうと思ったが、松尾沢の出合まで再会することはなかった。少し時間をおいて歩いてくれたのだろうか。別ルート(どこ?)だったのだろうか…。
しばらくの間は河原歩きだが、水量は微妙に多い気もする。最初の2段の滝は、上段に倒木が横たわっており、倒木沿いに登れるか?としばし観察するも、確実なラインを見いだせず、定石通り左岸の残置ロープ沿いのルートを越えた。次の7m滝は、トイ状に落ちる流れの右側が階段状で、釜をへつって右から越える。最初の滝場を越えると、穏やかな渓相となる。やがて、右岸に台地が現れ、ワサビ田跡のある枝沢が出合う。数年前に、ムジナ沢から乗っ越して来て、ひと晩泊ったところだ。Co940付近で、右岸に印象的な滝で出合う枝沢。両岸からのしみ出しの流量なども含め、やはりやや水量多めな印象だ。S字峡は巻きかな~などと考えながら歩を進める。S字峡手前の5m滝は、はてどう登ったっけ?一見ゴルジュの奥に岩を割って流れ込んでおり、高巻かなくてはダメかと思ったが、写真を撮ろうと正面に回ると、水流右手の岩場が階段状になっており、簡単に越えられた。

何となく、両岸の壁が高くなってくると、前方にS字峡最初の滝が現れた。水量は多いが、奥を覗くと、高巻くまでは必要なさそうだ。大釜の右岸を腰まで水につかりながら越えて、最初の滝の基部に立ち込んでから、さらに奥を偵察する。問題なさそうだ。右足を一歩上げて、左手の岩を手掛かりに、最初の滝を登り、ゴルジュの中へ。水も冷たくないので、積極的に水線沿いにゴルジュ内を進む。なかなか楽しい。出口の3m滝のみ左手を小さく巻いて、S字峡を抜けた。すぐ目の前に松尾沢が流入している。松尾沢との水量比は1対4ほどか。出合で水分補給をして一息。

S字峡入り口の滝
S字峡入り口の滝は釜の左端を腰まで浸かって取り付く。左壁の手掛かりを使って水流左を登る。
S字峡出口の滝
この滝を越えればS字峡はお終いで、すぐに左から松尾沢が出合う。

小室川谷の最初のハイライトを抜けて、最初に出合う松尾沢は、記録に名称の言及は多いのだが、遡行したという記録はとんと見当たらない。小室川谷は、ここから上流も見どころ豊富な秀渓だし、わざわざ松尾沢を登ろうという篤志家もいなかろう。エスケープに使うにも稜線までが長いし、小室川左岸には巡視路も通っており、そちらを下る方が確実で早いだろう。松尾沢自体に面白いところでもあれば、記録にも残るだろうが、まあ平凡な渓か。しかしながら、ちょこっと未知な経路なので、楽しみでもある。

松尾沢三連小滝
松尾沢に入って直ぐの三連の小滝。これを越えると、しばらく平凡な沢歩きに…

出だしは、ゴーロ歩きだ。水量もぐんと減ってしまって、既に「詰め」の様相である。しばらく歩くと、小さな滝が続いている。Co1030付近で右岸からの小さな流れが出合うところに、くずれかけた石垣が残っていた。ワサビ田の跡だろう。こんな奥地にまでワサビ田を作って栽培していたのかと、しばし感慨にふける。作業のための往復はどこを通っていたのだろうか。何時頃まで、現役だったのだろうか。
更に進むと、さらに大きな石垣の名残が続いていた。松尾沢はワサビの谷だったのかもしれない。源頭のサカリ山は、別称山葵谷山とも言うようだし、このあたり一帯では多くのワサビ田が現役で管理されていたのだろう。そのための山道も多かったのではないだろうか。

ワサビ田跡の石垣
ところどころに崩れた石垣が残っている

渓は、ところどころナメっぽいところもあるが、概ねゴーロが続いて、標高を上げていく。そして、想定通り平凡だ。
松尾沢出合から45分で、二俣となる。水量は同程度なので、最初はCo1140付近の二俣かと思ったが、形状と方位が地図と一致しない。どうも、その手前の右岸枝沢のようなのだが、水量が地図から想像するよりかなり多い。黒川谷のように、水量豊かな湧き水が水源なのかもしれない。

Co1130右岸枝沢
Co1130右岸枝沢。水量が本流と同じくらいあるが、源頭はどうなっているのだろうか。少し気になる。

そして、そこから数分歩くと、Y字型の二俣に出る。左3対右1くらいの水量比で、ここがCo1140の二俣のようだ。サカリ山方面へ行きたいので、ここは左に入る。左俣は、すぐに多段の小滝を懸けて、細い水流ながら印象的な情景である。

Co1140二俣
Co1140二俣は左俣の方が水量が多い。多段8mの滝で合流する。
6m3段の滝
滝らしい最後の滝は、6m3段の滝だった。

水量はほんとうにチョロチョロになってしまったので、滝場が一段落したところで、水がなくならないうちにと、しばしの昼食タイム。
昼食後、いよいよ水が涸れそうになったので水を補給した。Co1300の奥の二俣は、左に入るつもりだったのだが、どうも右へ入ってしまったようだ。最後の分岐で、高度と方向を確認した時にあれ?と気づいたが、敢えてやり直す必要もないので、そのまま稜線へ詰め上げた。サカリ山北側のコルへ出る予定だったが、南東の稜線に詰め上げたようだ。標高で50mほど余計に登ったことになる。地形図をよくよく見ると、Co1300の分岐は左の方が谷が開けているので、切れ込みの深い右へ誘導されてしまったのかもしれない。高度計を気にはしていたが、明瞭な分岐があったようには感じなかった。
詰め上げて、左へ数分で「サカリ山」と木に札が括りつけられている場所に出る。三角点も埋設されているので、現在地が特定できた。

サカリ山山頂にて
サカリ山山頂には山名板が木に括り付けてあった。眺望は、樹木に遮られてあまりない。

さて、予定ではサカリ山北のコルを乗っ越して鞠子川源頭部の巡視路に出る予定だったが、もしかしたらと想定していた通り、山頂から北へ続く踏み跡と赤テープがあったので、ひとまずコルまでは稜線を辿り、踏み跡が続くようなら、巡視路が尾根を乗越すところまで、稜線を歩いてしまおうと現場合わせで予定変更。
下りはじめは木につかまりながらの急降下だ。傾斜が緩むとすぐに当初目指していたコルに到着。踏み跡は、なおも続いているので、そのまま稜線伝いに前進した。結局、1458峰(砥沢山)手前のコルで巡視路が稜線を横切っていた。そこには、境界標も立っており分かりやすい。

1458m峰(砥沢山)南方のコル
1458m峰(砥沢山)南側のコルで、追分からの仕事道と合流する。尾根伝いに1458m峰へ向かう踏み跡もあるが、仕事道は西の山腹を巻くように付いている。

巡視路は、登山道と見まがうほどの立派な道で、数年前の記憶がよみがえる。ここから、巡視路に入るが、歩きやすく分かりやすい。数分で窪状を横切る箇所に。最初に、この道と出会ったのはこの地点であろう。そのままどんどん巡視路を進む。途中、クマの落とし物らしき物体が…。しばし様子を探るが、近くにいる気配はなかった。

尾根の西側を巻くように付けられた仕事道
尾根の西側の山腹を、幅広で歩きやすい道が続いている。周囲の森もブナなどの広葉樹林で、明るく好ましい。

Co1250付近は、尾根の幅が広がっており踏み跡が判然としないが、尾根を外さないように進むと、すぐにまたはっきりとした踏み跡になる。巡視路が高度を落とし始めて、サカサ川の源頭を大きく回り込んだ先に、突然フェンスが現れる。食害防止用だろう。道もさらに整備されて登山道と変わらない。途中に、厳重に封鎖された扉があり、紐どめされたネットの紐を解いて通り抜けるのだが、4~5箇所ほど紐を解かなければならず、少々手間である。その扉が2箇所ある。

サカサ沢のヒノキ林
サカサ沢のヒノキ林とは、この辺りのことか。動物の侵入防止ネットが張り巡らされており、通り抜けるのにはちょっと面倒な作業が必要だ。

さらに進むと、十字路。沢の上流から下流に横切る道と、直進は、さらに稜線沿いに進む道だが、沢へ下る道が一番踏まれている様子だし、三条新橋に戻るには、沢沿いに降りるのが正解のような感じなので、沢沿いの道を下る。
つづら折れに道がつけられ、大変合理的で歩きやすい。ぐんぐんと高度を落とすと、泉水谷の谷間が眼下に見えてくる。幅広の河原に降りて、木橋2本で泉水谷を渡り、右手に回り込むように進むと林道へは階段とスロープで上れるようになっていた。

泉水谷を渡る木橋
泉水谷を木橋で渡る。対岸の斜面を登ると、すぐに泉水谷林道だ。

入り口には「サカサ川のヒノキ林」の看板が。ネットで保護されていた付近がヒノキ林だと思われる。最後は、林道のカーブを曲がりものの1分で三条新橋広場のゲートに到着。それを抜けると車に到達である。

安近短も第4弾になり、そろそろ飽きてきた。まだ、探せば人の歩いていない沢はあるだろうが、都内の感染状況も、まあ平衡状態のようだし、そろそろWithコロナな沢登りを検証していこう。帰りの車の中で、そんなことを考えながら、家路に就いた。

遡行図(20200904_泉水谷小室川谷松尾沢)
遡行図(20200904_泉水谷小室川谷松尾沢)

メンバー:古巻
山域:大菩薩連嶺
山行形態:沢登り
コースタイム:
三条新橋P(8:37)-小室川谷出合(9:06)-松尾沢出合(10:47)-Co1140二俣(11:49)-Co1200付近(12:00/15)-稜線(13:07)-サカリ山(13:12)-砥沢山南鞍部(13:53)-三条新橋P(15:25)
地形図:柳沢峠・丹波
報告者:古巻

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