天候:曇りのち小雨のち曇り
せっかくの3連休、伊藤さんを誘って日帰りで幸ノ川へ行くことにした。当初は私がリーダーを務める予定だったが、3日前に火打石谷を遡行した疲れもあり、事前に記録を読むと私には荷が重そうだと感じたため、伊藤さんにリーダーをお願いした。さらに石田さんも誘うと快く参加してくださり、金曜夜に出発。石田さんの車で道の駅「日義木曽駒高原」へ向かい、伊藤さんとは途中のセブンイレブンで合流した。伊那ICを下りるとセブンイレブンが2店舗あり、最初の店舗はおにぎりが完売していたが、次の店舗で翌日の行動食を無事調達できた。
当日、道の駅から見上げる空は曇っていてガスに覆われていて遡行できるか少し不安になる。午後には一時雨予報となっていた。ちなみに私は前回の火打石谷でスマホを水没させてしまい故障中。そのため天気予報などの情報は同行者頼みだった。
コガラ登山口駐車場へ向かう途中、かつてスキー場だった木曽駒冷水公園はオートキャンプ場へと姿を変え、多くのテントで賑わっていた。避暑地らしい高原の朝を横目に登山口へ到着する。現在は綺麗なトイレも整備されているようだ。沢装備を整え出発した。

キャンプ場を抜けるとすぐに分岐があるが左へ行くのが正解。右へ進んでしまってすぐに引き返すが時間のロスをしてしまった。入渓までは標高差約250mの登り。朝から汗だくになり登山道と幸ノ川が交差する地点でようやく一息ついた。入渓点から上流を望むとガスに覆われ何も見えない。
入渓してすぐに堰堤が現れるが右岸から容易に越えられる。赤茶色の岩が特徴的で、触ると指先に赤い粉が付着した。何の成分なのだろう。最初に現れるのはCS2段5m。左側のガバ豊富な岩を快適に登る。沢全体は黒い斑点のある花崗岩だが、右岸側には硯石のような黒い岩がありラバーソールの二人はかなり滑ると言っていた。ほどなくゴルジュ状となり、右岸から二本の枝沢が流れ込む景色が美しい。伊藤さんも石田さんも以前遡行しているそうだが、「全然覚えていない」とのこと。トイ状4mを越えると、いよいよ幸ノ川を代表する美しい連瀑帯が始まった。最初の6m滝は左壁をロープで登攀。初手が悪く伊藤さんも慎重にムーブを探る。途中でカムを設置しながら支点を構築し、二本のロープを連結して確保してくれた。続く滝はフリーで越えられるものもあるがヌメリがあり慎重さを要する。その後もトイ状滝や二段滝が連続し、少し高巻いて一旦枝沢に降りる。10mの懸垂下降で本流へ復帰。景観も素晴らしく、この沢のハイライトと言える区間だった。

1840m二俣では右に進む。すぐに左岸から細い15m滝が落ち、本流にはくの字15m滝。泥壁混じりの右岸を高巻く。続く6m滝では右壁からロープを出す。右リッジを登ってから水流側へトラバースするのだが、この一歩が遠い。私は恐怖心から足が出ず一度テンションを掛けてもらい突破した。上部はガバが豊富だったが、この頃には精神的にもかなり消耗していた。続くY字5m滝は見た目ほど難しくなく、ホールドも豊富。高度感はあるものの気持ちよく登れた。ここで早めの昼食をとる。日差しがなく、シャワーを浴び続けた体は思った以上に冷えた。





2020m二俣では水量比5:1で左俣へ。ここからも滝が次々と現れる。遡行図を書く余裕もなくなるほど滝が連続し、疲労感は一気に増していった。左岸のガレ斜面を巻いた場面では精神的にもかなり削られ、登り終えたところで伊藤さんから「唇が青いよ。」と言われた。寒さと疲労、そして終わりの見えない連瀑帯。そりゃ青くもなるわ…。
少し休憩をもらい、おにぎりを食べて気持ちを立て直した。
後半も二度ロープを使用。一か所は激しいシャワーを浴びるトイ状滝。もう一か所はボルダーのようなムーブを要求され、沢でデッドポイントをすることになるとは思わなかった。2300m付近を越えるとようやく滝もなくなり、沢は終盤の様相となった。




2400m付近で登山道へ脱渓する。沢中のケルンと左岸のピンクテープはすぐ見つかったものの、右岸側の踏み跡が非常に分かりづらい。しばらく探すと、少し下に草木に隠れるようにトラロープを発見。3~4m下に伸びている。それを辿っていくとここが正解だった。その先では小さなピンクテープも確認。対岸には朽ちた木橋の跡が見え、以前はこちらが登山道だったことがうかがえた。
避難小屋で休憩するとアブが多くおでこやまぶたを刺されてしまった。下山は概ね順調だったが、徒渉点の手前の登山道が泥土で滑り歩みが遅くなってしまった。駐車場まで約2時間半。沢を終えた後としては、なかなか長く感じる下山だった。
下山後は帰路で偶然見つけた「木曽駒天神温泉 清雲荘」で入浴。500円とは思えない良い温泉で鉄分を含んだ茶褐色のお湯が疲れた体に染みた。帰宅後に調べると日本では珍しい天然炭酸泉とのこと。
幸ノ川は、想像以上に滝が連続する沢だった。一つ一つの滝は極端に大きいわけではないがワンポイントで難しい場面が多く、休む暇もなく緊張が続く。フリーで登れる滝もある一方でロープを出した場面も多く、体力だけでなく精神的にも消耗した。当初は自分がリーダーを務める予定だったが、実際に遡行してみると到底その余裕はなかった。終始ルートを判断し、必要な場面でロープを出してくれた伊藤さんの存在は本当に心強かった。
記録では「ロープ不要」「巻きは容易」と書かれているものも見かけたが、今回のコンディションではその印象とは異なった。水量やパーティーの力量によって難易度が大きく変わる沢なのだろう。
終日曇り空だったため寒さはあったものの、そのおかげで猛烈な暑さに苦しまずに済んだとも言える。美しい花崗岩の渓相と次々に現れる滝。決して楽な沢ではなかったが、充実感のある一本となった。






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