東沢本棚沢

2021.10.23 快晴

「丹沢のラスボス」こと東沢本棚沢に行くことが出来た。
じつは9月に丸山さんから計画が立ち、参加希望だったのだが例の緊急事態~のお陰で泣く泣く参加を断念していた。その時は4名で実行したのだが台風の影響による増水で直登が出来ずに不完全燃焼だったらしい。いわば今回はその時のリベンジ山行と言える。
その記録はこちら→「予想以上に豊富な水量の西丹沢・中川川東沢本棚沢を遡る | 渓人「流」 (mizuyuki-sawa.com)*入渓点までの記録は9月の記録と同じなので端折らせていただく。
前回と違うのは気温の低さと土曜日なので林道に工事関係者がいたことか。

7時40分、ビジターセンターをスタートした時にはこの秋一番の冷え込みではないかと思うくらいに寒かったが、さいわい風は無く、陽射しもあり登山道に入るとすぐに体が温まってきた。入渓点までのアクセスで通るつつじ新道から小ピーク経由で林道への降り口が工事関係者の集合場所であった。朝一で山から突然現れた私たちにびっくりされていた。驚かせてしまったことを詫びつつ挨拶がてら少しお話しして先へ進んだ。
ビジターセンターから約1時間で入渓点のたなさわ橋に到着、残念なことに橋の約50m手前で日陰ゾーンになった。身支度をしているとあっという間に体が冷えてくる。入念にストレッチを行ってから沢へ降りた。

入渓点 ドキドキワクワク
すぐにユイバシ沢が合わさる
F2 10m しょっぱなから気合いが入る

沢を歩き始めて10分ほどでF2 10m滝に到着
ウォーミングアップというか足慣らしをすっ飛ばし、いきなりスリルと楽しさを味わうことが出来るこの滝は必ずと言っていいほどガイド本や遡行記録に出てくる。
画像では、一見すると「いうほど難しいのかな?」という印象だが実際は足の置き場が傾斜しているのと滑りの強弱が掴みにくく、いつ滑るか分からない怖さがある。それと、しっかりしていそうなホールドに見えても不意に「ボロッ」と剥がれてしまう物があり印象より嫌らしかった。寒さで悴みそうな手を温めながら右側から上がり上部で水流の方へ移動する定番ルートで登った。トラバースの一歩は勇気がいるが丸山リーダーにフォローしてもらっているので安心だった。滑りそうに見えた足の置き場は思いのほか良くグリップした。

いきなりのチャレンジングな滝でテンションが上がったが、その後のゴーロ歩きで心を落ち着かせることが出来た
ふと空を見上げると雲一つない青空が広がっている、いい天気だ。
木々の葉は紅よりも黄色が目立つ。この辺りの紅葉はまだこれからのようだ。

左からカル沢が出合う
F3 25m本棚 前回は増水で断念した滝
巻きは左のガレから滝上に回り込む
若干水量が多いらしいが今回は行けた

カル沢を左に見送るとほどなく本棚に到着する。
この滝は前回増水で直登を断念した滝だ。今回水量はそれほど多くもなく登攀できるようだ。良かった。ロープを2本使用し1本を荷上げ用に使った。
ただ、通常は左からスタートし中段上で水流を右へ渡るロートを取るようだが寒いためなるべく水に近寄らず左直上にルートを取ることになった。
これにより難しくなったのか易しくなったのか分からないが結果として無事に通過出来たので大満足。
残置ピンが各所にあるが不足と思われる個所にはハーケンを打ち支点を足した。
回収時に一か所とてもよく効いたハーケンがあり、ハンマーをしつこく叩いて回収したが時間が掛かってしまい水流際に置いた右足がびしょ濡れになってしまった。しかし必死だったので寒さも何も感じなかった。きっと無の境地に近づいていたかもしれない(インナーにフラッドラッシュのショーパンを履いていったのは内緒だ)本棚を巻くには左のルンゼを登り途中から落ち口に向かい右へトラバースするようだ。木も豊富だし危険は無さそう見えた。

本棚上のトイ状 巻くと見えないらしい
続く3m

痺れた(震えた?)本棚をクリアすると安堵して大きく息を吐いた
きっと興奮して丸山リーダーに喋り捲っていたと思う。それくらい私には刺激的だった。幸運なことに水量が少なく気温も上がって挑戦できたことに感謝した。
本棚の上にはすっきりとしたトイ状の滝と低めの可愛らしい滝がある。巻いた場合には見えないある意味貴重な滝だ。

F4 10m 3段にも見える
取りつきが悪いのでロープを引く

この沢は流程が短い中に滝が続くため一息入れる暇がないくらい楽しい。
次の10m滝はとりつきがやや悪いためロープを出した。
今回用意したロープは50mが2本。このため低い滝で長いロープを出すことが面倒だと感じる方もいるかもしれないが我々の会は安全第一で遡行している。ロープを使うことを厭わない代わりにロープの準備、収納に時間を掛けないように指導を受けている。

F5 10mナメ滝 倒木がいただけない
V字状のゴルジュ すぐ先から陽が当たり明るい

陽が当たらないゴルジュの出口が感じられるようになる頃、前方に巨大な白い岩が見えた。そして右側には20mくらいの岩壁(F6)も現れ特徴的な景観に見惚れる。
分かりにくいが本流はこの岩壁だ。この段上に沢が続く。
直登は不可能なので左から巻くがルートが2つある。1つは大岩を登るルート、もう一つは大岩とF6の間の泥ルンゼを攀じ登るルート。
ルンゼルートが良く使われるようだがこちらとて楽に登らせてくれない。
やはりリーダーがロープを引き先行する。前回、ここで登攀中に軽い落石をしてしまったらしく事前に注意を受ける。「大丈夫、逃げ足は速いほうなので」とは言えず素直にアドバイスを受けた。私が登る時まで石は落ちてこなかった。
私が登る番になり取りつくと下部は落ち葉が付いてはいるがグリップの良い岩なので比較的スイスイ登れた。しかし、進むにつれ土が被るようになり嫌らしくなってきた。それでも滝と違い水や苔も無く突然グリップを失う怖さも無く、何よりロープで確保されている安心感が強い。感謝です。

F6 右の岩壁が20m滝となっている 普段はほぼ流れが無いらしい
大岩とF6 の間のルンゼを登る 上部が悪いらしい
F6 20m 前回は見ごたえのあるシャワー滝であったようだ

泥ルンゼを登り切ってから20m滝上を目指し右へトラバースすると広い滝上に出た。対面にくっきりとした山並みが広がり気分爽快。
ここからさらに水量が減り、というか枯れてしまった。
すぐ先の40m涸棚下で昼食予定なのでちょろちょろの水流から何とかボトルに水を確保していよいよ本命の滝へと進んだ。
滝下で食事をとりながらこれから登る滝を見ながらふと思った。
そう言えばF2から先、私の脳内には「川口探検隊のテーマ」がずっと流れっぱなしだ、気が付くと口の中が乾いてたこともあった。いよいよここがクライマックスなのかな?ファンファーレが鳴り響く。けれども詰め上がるまでおちゃらけたり冗談は口にせず集中していこうと改めて気を引き締めつつ箸を置いた。

F7 40m涸棚 この沢の最大目的  本格的なクライミングが楽しめるようだ
今回は50mのロープを2本使用した
この滝を巻くには左の沢型から右に回り込むようだ それほど困難ではないらしい
涸棚を横から見る ステップ、ホールドとも問題なく取れるように見えるがさていかに

食事を終え、いよいよ登攀準備に入る。
ここはクライミングシューズで登ると快適とのことで私も久しぶりにシューズに足を通した。ベルクロを締めると少しきつめの感触が気持ちいい。
ここではロープの流れをスムーズにするために50mを2本使用する。
ダブルロープのビレイは初めてなので事前にリーダーからレクチャーを受けてから臨んだ。周囲が静かでお互いの声が良く聞こえるので「してほしい事とする事」両者のコミュニケーションも問題なく取れたと思う。
50mロープのため途中でピッチを切ることなく終了点まで抜けた。次は私の番だ。ビレイ中に手の指が軽く攣ったので水を飲んでからスタートした。
クライミングシューズでの登攀はフェルトの沢靴とは違い岩肌に対するタッチが硬く、登り始めは少し違和感を感じた。
中段まで来ると手の指が両手とも攣り始めた。緊張に加え力み過ぎだ、情けない。
丁度この頃から足の置き場も考えないと手が届かなかったりするのでルートをしっかり確認してからでないと一歩が出せない。
手ごわい登攀に来たことを後悔しそうになったが、天気と景色の良さとリーダーの視線が私に勇気をくれた。
充分に足を乗せられるポイントでレストしつつ攣っている指を伸ばし深呼吸してからラストスパートをした。終了点が見える最上部ではボルダリングのように一手一手順序良く持たないと体を持ち上げられない箇所もあった。何手かは腕の長さを活かしズルをした個所もあったがなるべくA0をしないで登りたかったので良しとする。指の攣りはいつの間にか収まっていた。
登りきるとリーダーの柔らかい笑顔が迎えてくれた。応える私の顔はおそらく引き攣っていただろう。それでも顔を上げ景色を楽しむくらいの余裕は残っていた。落ち口から対面を見るとそれは晴れやかな富士山がドーンと鎮座していた。もう少し若かったらきっと泣いていたと思う。

滝上からの富士山 いやー痺れた。下から見るより怖かった 達成感たっぷり

感動と興奮、そして半泣きの枯棚の上には5mと10mのやはり涸れた滝が続く、クライミングシューズのまま軽やかに登った。

F8 10m枯滝 陽当たりも良く気持ちよく登れる
続く5m こちらは上部で一か所考える箇所あり

二つの枯滝を超えたら一安心(40m枯滝巻きあがり点)。リーダーと健闘をたたえ合った。右の尾根からつつじ新道を目指し詰めあがる、大体15分くらい。

退渓点 右の尾根を登りつつじ新道を目指す
登山道合流 あとはひたすら降る
つつじ新道はよく整備された歩きやすい道

つつじ新道を降ること約1時間30分でビジターセンターに戻った。

今回の山行は故障明けの本格的な登攀沢であったため再発の不安や高度感への恐怖心が少なからずあったが、それを克服しながらチャレンジできたこと、ロープを2本使った登攀のビレイの経験を持てたことなど大きな収穫があった。
とにかく丸山リーダーの足を引っ張らないようにフル回転の一日であったが結局頼りっぱなしだったかな。
リーダー、ありがとうございました。

遡行図


メンバー:丸山(L) 牛久
山域:丹沢
山行形態:沢登り
コースタイム:
西丹沢ビジターセンター(07:40)ー林道(08:30)ー入渓(09:00)ーF2、10m(09:30)ーF3本棚(10:10)ーF4、
10m(11:20)ーF6、20m(11:45)ーF7涸棚(12:40昼食13:20)ー涸棚上(14:30)ーつつじ新道(15:00)ー西丹沢ビジターセンター(16:40)
地形図:中川
報告者:牛久

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