北秋川白岩沢

冬の沢登り第1弾として北秋川最奥の沢を訪れた。武蔵五日市からのバスの終点藤倉からさらに北秋川を上流へ辿り、月夜見沢を分けて風張峠南側の浅間尾根上部を源頭とする白岩沢が今回のターゲットである。因みに読み方は「しらやさわ」が正しいらしいという情報も散見されるが、地元の小学校の副読本や古い戦前のガイドブックには「しらいわさわ」とルビが振ってあったりするので、地元では「しらいわさわ」と呼ばれているようにも思われる。

以前、同じ北秋川の支流でシンナソーと言う変わった名前(「ソー」は多分「サワ」の転訛と思われるが、「シンナ」は??)の沢を遡行してこの周辺に興味を持ったので、その際の同行者で今回の山行リーダーである星野さんにそんな話をしたことがあったらしく、それを思い出して今日の計画が練られたようだ。

アプローチ

何時もはアプローチにマイカーを使うことが多いのだが、北秋川のどん詰まりエリアは駐車場所の選定が悩ましいので、今回は公共交通機関を使ってのアプローチである。

早朝JR武蔵五日市集合という計画書の指定であるが、本日乗車する「藤倉」行のバスは7時40分発なので、遅れないよう早めの行動を心掛けたら妙に乗り継ぎがよくて、武蔵五日市着6時58分…。早すぎた・笑。当然リーダーはまだ来ていない。手持無沙汰なので、駅前のセブンイレブンでコーヒーとパン売り場でちょっと目を惹いたシュガーバターパイとかいう甘いパン?を買って、バス停のベンチでコーヒータイム。空のカップをセブンイレブンに逆戻りして捨てて戻ったら、星野さん登場。バス停にザックをデポしたままだったのだが、星野さん曰く「もしかしたら古巻さん遅れるかと思ってたけど、来たらザックがあった…」と。えーえーどうせ朝苦手ですよ~だ・笑。

高校生だか大学生だかの集団が後ろに並んでいたので、藤倉行のバスは全員が座り切れないくらいの満員で発車した。早めに並んでいたので座れてよかったのだが、こんなに混むのは予想外。みんな(特に10代の集団)はどこへ行くのかなあと思っていたが、払沢の滝、千足で何人かが降り、白倉でも何人か降りた後、”集団”は小沢で下車。湯久保尾根から御前山あたりへ行くのだろうか。そしてここでバスは我々ふたりの貸し切り状態に。小沢からは15分ほどで終点の藤倉に到着する。バス停前のトイレを借りて、北秋川沿いの道をさらに奥へと進む。空気がひんやりとして涼しい…というか寒い。お天気はいいのだが、谷底まで日光が届かないためだが、山の斜面の上の方は陽が当たって暖かそうで羨ましい。

入渓と最初の滝場

白岩沢入渓点
入渓点付近は少し荒れた様相

径の終点で支度をして、目の前の沢へと歩を進める。穏やかな流れではあるが、入渓してしばらくは荒れた渓相で左岸には壊れたコンクリート護岸が続く。沢床は広めなので、右岸の台地を歩いて行くとやがて前方に滝が見えてきた。手前に4mほどの三条になった滝、奥に幅広の6m滝が続く。手前の滝は何ということもなく越えられるが、奥の滝はちょっとめんどくさそう。

第一の滝場
入渓後10分ほどで最初の滝場が見えてくる
6m滝
最初の滝場の出口に懸かる6m滝

濡れるのも嫌だしヌメっていそうなので、左岸を巻こうとしたが滝の真横付近が大きく崩落していてトラバースがちょっと悪そう。しばし思案したが、安全を期して一旦仕切り直し。4m滝の下まで戻り、左岸の植林帯から巻くことにした。植林帯にはしばらくは仕事道が続いていたが、奥の滝に近づくと結局崩れた斜面のトラバースを強いられる。トラロープが張ってはあるが、落ちると嫌なのでロープを出してトラバースした。崩落個所は足場も悪くちょい悪であった。滝を越えたところで、道から懸垂下降で沢へと戻る。まさか、こんなところでロープを出すことになるとは思わなかったし、思ったよりも時間がかかってしまった。因みに、帰宅後にネットの記録を見ると、滝の水流右は普通に登れたようだ。見た感じ、上の方がのっぺりしていて行き詰ると嫌な感じがあったのだが…。

6m滝の高巻き
6m滝の高巻きルートは後半に嫌らしい崩壊斜面のトラバースがある
第二の滝場が見えてきた
最初の滝場を越えて15分ほどで次の滝場が見えてきた

大滝登場

6m滝を越えると、また滝場が出てくるがここは問題なく越えて行ける。30分ほどで顕著な二俣。まだCo825ではないだろうと思って左へ進むが、途中でGPSを確認した星野さんが怪訝な顔で立ち止まっている。画面を覗き込むと、あれだいぶ上まで来てるじゃん…。Co825を通り過ぎてしまった。やれやれと先ほどの二俣までもどって右俣の仏岩沢へ進む。Co825二俣より下流の枝沢は気づかずに通り過ぎてしまったようだ。地形図からは分かりずらい分岐とも思えないので、ちょっと釈然としない。

第二の滝場にある小滝を越える
第二の滝場にある小滝を越える
第二の滝場最大の滝
第二の滝場はさほどの労なく越えて行ける
中間部のナメ地帯を行く
第二の滝場を越えると、しばらく雰囲気のいいナメ地帯となる

仏岩沢に入ってすぐ、のっぺり気味の滝が続く奥に大きな滝が見えてきた。水量があまりないので迫力には欠けるが、仏岩沢の大滝と言ってよさそうな規模である。帰宅後にネットの記録などを見直すと「下出の滝」と名前が付いている滝のようだ。公称18mとなっていたが、そこまではなさそうな感じもする。15m弱ぐらいだろうか。滝の下までのっぺり気味滝の連瀑となっているので、滝を間近に見ようとするとのっぺりを登って行かないといけない。滝本体は直登困難なので高巻かないとならないが、さてどちらから…と左右を見ると、右の植林から高巻くのが良さそうにも思える。ただ、記憶の片隅に右から巻いて苦労したという記録を見たような気がしてしまい、右岸巻きを選択したのだが、後から分かった通りこれは失敗だったようだ。大滝のすぐ下で写真を撮ったりした後、左へ回り込みながら右岸尾根を登ったのだが、ここが岩壁でザイルを出しながら結構無理やりに上部の樹林帯まで登った。登り切ったところからは沢床まで10mくらいあろうか。降りられない斜度でもなさそうだが、灌木もまばらな斜面なので、安全を期して2度目の懸垂下降で沢床に戻った。降り立ったところは、ちょうど大滝の落ち口だったが、左岸を見るとうっすらと踏み跡が通っている。踏み跡を逆に辿ってみると、踏み跡自体は植林帯をずっとトラバースしているが、下の植林帯の作業道らしき踏み跡が斜面の下の方に続いている感じだ。最後まで確認はしなかったが、どうものっぺり連瀑帯の下から左岸斜面に取りつくと、安全かつ楽に高巻いて来れそうだ。記憶にあった記録については、帰宅後にいろいろと調べてみたのだが、どうもそれらしい記録に行き当たらない。記憶違いなのか、それとも違う”白岩沢”の記録を読み間違ったのか…。何はともあれ無事高巻けてよかったが、変な記憶に引きずられずに現場を見ての判断を信じるべきだったと反省。思わず時間を取ってしまったが、後は何もなさそうなのでここで大休止。

のっぺりした連瀑帯の先の大滝
のっぺりした小滝群の奥に大きな滝が落ちているのが見えた
白岩沢最大の大滝
水量は極少だが、なかなか立派な滝が懸かっていた
大滝右岸の急斜面を高巻く
ここから右手の急斜面を登るが、岩尾根で少し苦労した
大滝の落ち口
高巻いて沢に戻ったところは、ちょうど大滝の落ち口だった

仏岩

休憩後は10分でCo920の分岐。ここは左へ進むと左岸の斜面に壊れた小屋掛けを見る。そこから10分強で沢の中に大岩が鎮座している。石灰岩だろうか、表面に滑らかな凹凸がある。裏に回ると表とは違う表情。深く抉られた穴がたくさん。横に寝ている状態でこんな穴が開くことあるのだろうか。昔は穴のある方が上を向いていたのか…。何とも不思議な岩である。開いた横穴で寝泊まりができそう。まさに奇岩と言っていいだろう。この岩は「仏岩」と呼ばれており、沢の名称もこの岩に由来するものと思われる。仏岩のすぐ上流で沢は二手に分かれている。

左岸の倒壊した小屋掛け
左岸に倒壊した小屋掛けが見える
沢を塞ぐようにせり出した大岩
前方で沢を塞ぐように大きな岩がせり出している
仏岩に開いた不思議な穴
仏岩の裏に回ると、大きな横穴が開いていて驚かされる

下山と温泉

計画では風張林道へ詰め上げて藤倉へ戻るルートを考えていたのだが、帰りのバスの時間を考えると南秋川方向へ降りた方が時間の効率がよさそう。Co1030分岐で最終的に左へ入り、奥多摩周遊道路へ詰め上げてから浅間尾根を少し辿って仲の平バス停へ下山するルートに変更した。詰めは水流も無くなり、窪状からやや傾斜のある斜面に変わる。上の方にコンクリートの構造物らしき姿が見えるが、道路の擁壁かと思ったら堰堤だった。結構大きな堰堤だが、喘ぎつつ左端を乗っ越すと、上流方向は土砂に埋まっている。道路を作った後にだいぶ土砂が堆積したのだろう。ただ、現状では堰堤の用は成していないようにも思える。今後追加の堰堤を作ったりするのだろうか。Co1030分岐から20分ほどでようやく奥多摩周遊道路へ飛び出す。スポーツタイプの車やバイクが結構なスピードで通り過ぎていく。

源頭にあるコンクリート堰堤
コンクリート堰堤が行く手を阻む…
奥多摩周遊道路に出た
最後は急斜面を登って奥多摩周遊道路へ

しばらく車道沿いを歩き、浅間尾根駐車場の少し先で登山道に入るが、駐車場からの眺めはなかなか良かった。空気が澄んでいるせいか都心方面が意外と明瞭に見えた。

浅間尾根駐車場から都心方面を望む
浅間尾根駐車場では都心方面の眺望が広がる

駐車場から数分で登山道の入口となる。最初少し登りがあるが、最初だけで後は下り基調である。御林山(おはやしやま)のピークはトラバース気味に巻いて登山道が続いている。駐車場から20分ほどで古びた道標が立っている分岐。「数馬バス終点へ」と読めるので、そちらへ進むと結構な急降下で道が降っている。ところどころ踏み跡が乱れているが、尾根通しに進めば問題ない。分岐から35分で仲の平バス停。車道脇の駐車スペースの片隅を借りて装備を解除して、数馬の湯へ向かう。降り立った登山口からは徒歩数分である。

仲の平バス停近くの浅間尾根登山口
仲の平バス停近くの登山口まで降りて来た

数馬の湯は少し料金が高めに感じたが、コロナ禍後は燃料費や人件費の高騰と相まってどこの温泉施設も値上げが続いている。今後はこのくらいの料金が相場になっていくのかもしれないとも思った。

まとめ

白岩沢は滝場があるという事前情報を入手していたが、それぞれ思ったよりも通過に手間取ってしまい全体に時間がかかった。沢自体は北秋川の最奥部だが、詰め上げると奥多摩周遊道路だったりすることもあってか意外と人臭さが抜けない感じも受けた。最初の滝場は、恐らく斜面の崩落がなければ問題なく高巻けたと思うが、現状だと他の方の記録のように滝本体右壁を登った方が早くて安全だったのかもしれない。また、大滝の高巻きは間違いなく左岸の植林帯を巻くべきだろう。ただ、大滝の直下まで行ってしまうと、その下の連瀑を戻って来なくてはならず、手足の少ないつるつる滝が多いので下降に少し苦労するかもしれない。いろいろと苦労した割に充実感は薄かったが、まあそれも経験ということで、リーダーを務めた星野さんには感謝と慰労の気持ちを伝えたい。


メンバー:星野(L) 古巻
山域:奥多摩
山行形態:沢登り
コースタイム:
藤倉バス停(8:35)-落合橋(8:42)-入渓点(9:10/35)-6m滝上(10:50)-Co825二俣(11:20/45)-大滝上(13:10/40)-Co920分岐(13:50)-仏岩(14:10/15)-Co1030分岐(14:20)-奥多摩周遊道路(14:39)-浅間尾根駐車場(14:55)-仲の平分岐(15:15)-仲の平バス停(15:50/16:05)-数馬の湯(16:05)
地形図:猪丸
報告者:古巻

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