リシリヒナゲシ

利尻山


(天候)7月20日:晴

家族が珍しく7月に夏休みを取れそうだと言うので、まだお花を楽しめそうな時期でもあるし利尻・礼文へでも行くかね…と提案したのだが、利尻山の登山までは想定していなかった。礼文島のお花畑でもブラブラして雲丹を食べて帰ってこようかというつもりだったのだが、家族から「登らなくていいの?」と焚きつけられて、それならばと5月・6月に家族の足慣らし・トレーニング山行を実施して利尻山に登ってきた。
結果としては、まずまずの天候の中、思ったよりも順調に山頂を往復でき、日本最北の「富士」を堪能した。

夢の浮島「利尻島」・花の浮島「礼文島」を目指して北上

7月19日の早朝自宅を出て羽田空港へ向かう。今日から利尻島2泊、礼文島2泊の日程で登山・トレッキングを楽しむスケジュールである。これまで北海道の最北部には足を踏み入れたことがなかったので、それだけでも楽しみだ。新千歳空港からは一度札幌へ出て、丘珠空港からは小さな双発プロペラ機に乗り換えて利尻へ向かう。雲は少し多いが、プロペラ機なので下界までの距離が近く、窓からの眺めも楽しい。利尻が近づくと空からの利尻山が絶景なのだろうけれど、しまった、席が右側でよく見えない…。ということで、空からの利尻山の絶景を楽しみたい場合は、左側の席を取ることをお勧めしたい。

石狩川河口付近
石狩川を見下ろす。札沼線石狩川橋梁と国道337号札幌大橋
利尻空港に着陸
無事利尻空港に着陸。残念ながら利尻山は雲の中である

利尻空港からは、宿泊先の送迎で今日・明日2泊する民宿へ。荷物を置いて早速周辺を歩いてみる。鴛泊港までは近いのでそちらに向かうと、ペシ岬という小山が港のそばにあって遊歩道が整備されていた。白い灯台などもあり、眺めが良さそう。ブラブラと登ってみると、周囲の眺めも開けて気持ちがいい。利尻山は残念ながら雲に隠れてしまっているが…。
登り詰めると立派な三角点標石が設置してある。大きさから一等点だよなあと確かめると、確かに一等三角点と刻まれている。「おーすごい、一等点だ」とちょっとはしゃぐ。国土地理院のデータを見ると、基準点名「鴛泊」、標高は「92.67m」である。何故か標石の上面には小銭がこんもりと小山を成しており、なんだか可笑しい。みんな三角点を何だと思っているのだろうか?

夕刻のペシ岬
夕刻のペシ岬
ペシ岬頂上の1等三角点
ペシ岬を登り詰めると1等三角点が置かれていた

ペシ岬からの帰り道は、道すがらのお店を何件か覗きながら宿に戻った。

鴛泊コース前半は樹林の中の登り

さて、翌20日はいよいよ利尻山登山の日である。朝4時30分に宿の送迎で北麓野営場に向かう。途中、登山口へ歩いて向かう登山者を何人か追い抜いた。標高0mからの登山を目指す人たちだろうか。こちらは、そこまでのこだわりはないので少し楽をしてエネルギーを節約した。
鴛泊登山口周辺は、ツアー登山らしきグループをはじめとして、これから利尻山へ向かうであろう登山者で結構にぎわっている。
今日は準備と言っても、靴ひもを締め直してザックを担ぐぐらいなので、早速登山道を歩き始める。10分ほど歩くと「甘露泉水」の標識のある水場だ。ここで水を汲み先へ進む。すぐにポン山コースとの分岐で標柱に3合目と表示されていた。そして、ここからは本格的な登山道となる。最初は樹林の中のトレイルである。
40分ほど登ると、4合目の標柱のある小広場に着く。椅子状の丸太などが置かれているので、一息入れて宿で作ってもらった朝食のおにぎりを頬張る。同じタイミングで休憩していたライダーのおじさまから、1週間ほど天気の様子をうかがっていたが、今日は天気がいいはずなので登りに来たという話や、北海道は本当は6月が一番雲が少ないんだという話などを伺う。1週間も待機する余裕があるのはうらやましい限りだが、そんな人が狙って登る同じ日に登ることができたのはなかなか幸先が良いと言えそうだ。

朝食を食べて先に進むが、だんだんと樹林の背が低くなってきて空が見えるようになってくる。下界は雲海が広がっているが、上空は晴れているので、おじさまの言う通りお天気はよくなりそう。雲海も徐々に無くなるだろう。下山が長いので、登りで体力を使い切らないようゆっくりと登って行く。単調と言えば単調だが、およそ1時間くらいごとに展望の開ける休憩ポイントもあり、また、お花もそこそこ多くみられるので、写真を撮りながら進むと単調さを感じさせない。

4合目から第一見晴台と呼ばれる標高760mの6合目まで約1時間。6合目の広場に立って歩いてきた方向を見るとポン山辺りまではよく見えるが、それより下の眺めはまだ雲海に遮られたままである。
それまでの樹林帯と違い、この辺りはハイマツ帯と言ってもいいくらいの植生だ。樹林帯からハイマツ帯へ、登るにつれて早いテンポで変化する植生は特徴的で印象的だ。
先を見上げると尖ったピークが見えるが、長官山だろう。まだまだ先は長い。

6合目の広場から見上げる
6合目の広場から、長官山に続く斜面を見上げる

6合目からはハイマツ帯になり眺めが開ける

6合目からはおよそ50分で第2見晴台、そしてそこからは正味20分で8合目・長官山に到着する。
ここまで来てようやく頂上付近が目に入ってくる。天に向かってぐーんと延びる頂上へ続く稜線のカーブはなかなか姿がよく見惚れてしまう。

長官山から頂陵部を見上げる
頂上へ続く稜線はなかなかカッコイイ

長官山から一登りで9合目。標柱には「ここからが正念場!」と書かれている。ただ、この辺りはお花も多いし、周囲の景色を眺めたり、写真に撮ったりしながらの登りはさほど苦にはならない。

9合目の広場から長官山にかけての稜線
9合目の広場から長官山にかけての稜線。中央に赤い屋根の避難小屋が見える

9合目を過ぎ、沓形コースへの分岐の少し手前で登山道の右側にリシリヒナゲシが一株咲いていた。先行する男性がかがんで写真を撮っている。男性の撮影が終わるのを待ってこちらも写真を撮るが、今日リシリヒナゲシを見たのはここだけだった。気づかなかっただけかもしれないが、山頂部の崩壊も進んでいるようで、数がだいぶ減っているのだろう。

日本百名山でもあり、花の時期にはリシリヒナゲシをはじめとした固有種が沢山花を開く花の山でもある利尻山は、登山者にとって魅力のある山だろう。そのために登山者は多く、環境への負荷は多い。沓形コースは、鴛泊コース合流点~三跳山間の崩壊が激しく時々通行止めになるなど難コースとなっており、鴛泊コースにかかる負荷は今後増えそうだ。下山時に沓形コースから登ってきたという男性と会ったが、登山口を午前5時に出発して、鴛泊コースへの合流点に11時少し前到着となっており、だいぶ荒れていて時間がかかる道だということであった。コースが事実上1本というより、少しでも分散して負荷を減らした方がいいようにも思うが、現地の様子を見るとなかなか一筋縄ではいかなそうだ。low-impactを心掛けたいが、本気で取り組まないといずれ登山できなくなる日が来るのではないかと考えさせられた。

沓形コース分岐から見下ろす鴛泊港
沓形コース分岐付近から鴛泊港を見下ろすと、ちょうどフェリーが出航したところだった
頂上直下のザレた斜面
頂上直下は崩壊の激しい斜面になっている

頂上周辺は崩れやすい斜面が続いている

沓形コース分岐から上部は赤茶けたスコリアがむき出しで崩れやすい地質である。補修の努力もされており一定の成果はあるようだが、自然条件も厳しく、回復には忍耐強い努力と長い時間が必要だろう。

山頂まではあと僅か
もうあと僅かに登れば山頂だ

沓形コース分岐からはほんの一登りで北峰頂上に到着する。頂上には厳しい風雪に耐えてきたであろうお社が祀られている。目の前には、有名なローソク岩と北峰より少し標高の高い南峰が見えるが、南峰へのやせ尾根は現在通行禁止である。
雲は多少多いが、海を隔てた礼文島は望むことができるし、利尻島内は雲も切れて眺めはいい。鴛泊港を出入りするハートランドフェリーは、休む間もなく稚内・礼文・利尻を結んでおり、大活躍だ。利尻の空港も眼下に見えるのだが、残念ながら登山中には飛行機の発着がなく、山上から機体を眺める機会がなかった。

南峰とロウソク岩
利尻山南峰とローソク岩
剥れそうな岩峰群
今にも剥れそうな岩峰が連なっている

下山も長いが、眺めを楽しみながら順調に降る

山頂で海を眺めながら、札幌で購入したパンで昼食とする。北峰頂上はそれほど広くないのだが、かなりの賑わいである。1時間近く山頂で寛いで、とても名残惜しいが10時30分に山頂を後にする。
同じ道を降るのだが、登りと降りとでは眺めも異なり、陽の差す方向も変わるので、また違った景色を楽しめる。
9合目、8合目長官山と降りて小休止。昨日、ペシ岬を登ってから調べると長官山にも一等三角点があるはずである。しかし、記念碑のある広場にはそれらしき姿が確認できない。記念碑の裏手の藪に踏み跡があるので、藪を掻き分けて数分尾根の突端へ向かうと、藪に埋もれかけた標石を見つけた。利尻山頂ならともかく、わざわざ藪を掻き分けてまで三角点を確認する人も多くないだろう。往路は忘れてスルーしてしまったが、帰りに三角点を確認出来たのでちょっと満足・笑

長官山1等三角点
踏み跡を辿ると、藪に埋もれて1等三角点の標石が設置されていた

長官山から登山口までは、登山道から山頂部を望むことができないので、振り返って山頂部を記念撮影。やっぱりかっこいいなあ…。翻って下界を見ると、眼下には利尻空港、そして海を隔てて礼文島も見える。

利尻空港と礼文島
長官山から見下ろす利尻空港と海を隔てて礼文島

記念撮影後、約1時間で6合目・第一見晴台まで降りてきた。周囲の眺めがいいのもここまでである。6合目からは徐々に樹林の中の道となり、林床の小さな花などに慰められながら淡々と降って行く。帰りにも水場で水を汲んでいこうということで、甘露泉水で再度水を汲む。持参した2Lと1Lのプラティパスいっぱいに水を汲んでザックに入れるとちょっと重いが、まあここからは整備された広い道を10分で登山口である。
最後に甘露泉水をカップに取って喉を潤す。この水は通年ほぼ5.5度の水温らしい。冷たくておいしい水だ。

甘露泉水の水場
甘露泉水は、看板の1段下から湧き出ている

水を汲んだ後は、だらだらと広い道を降りて登山口。宿に電話をして迎えを頼む。休憩時間を入れて往復ちょうど10時間。もうちょっと時間がかかるかと思ったが、想定以上に順調に歩くことができた。素晴らしい景観で楽しい登山だったが、オーバーユースの問題などいろいろな面で考えさせられる登山でもあった。

鴛泊のセイコーマートの背後には利尻山が間近だ
鴛泊のセイコーマートからは、間近に利尻山が望める

帰宅後改めて深田久弥の『日本百名山』を読み返すと…

ところで、北海道から戻ってから改めて深田久弥の『日本百名山』を繙いてみた。読み返すと、山の紀行文としてとても魅力的であることを改めて感じた。「百名山ブーム」と言われて既に久しく、百名山を目指す登山者は多い。いわゆる百名山ハンターと呼ばれる登山者?の山の登り方については賛否両論あるところではあるが、この名著を読むと、紹介されたその山に行ってみたくなる気持ちはわからないではない。
ただ、深田久弥が登った時代と現在とでは山を巡る環境も、ところによっては山自体も大きく変わっており、彼が目にした百名山の風景は既に見ることのできない風景になってしまっているのだけれども…。

海上から利尻島を振り返る
海の上に大きく浮かんだ山、利尻山を礼文島に向かうフェリーから

稚内へ向かって船が島から遠ざかるにつれて、それはもう一つの陸地ではなく、一つの山になった。海の上に大きく浮かんだ山であった。左右に伸び伸びと稜線を引いた美しい山であった。利尻島はそのまま利尻岳であった。

『日本百名山』(深田久弥・著、新潮文庫版)

山行実施日:
2023年7月20日
メンバー:
古巻 ほか会員外1名
山域:
山行形態:,
コースタイム:
鴛泊登山口(4:43)-甘露泉水(4:50/55)-4合目(5:22/5:41)-第一見晴台(6:45/50)-7合目(7:10)-第二見晴台(7:40/45)-長官山(8:05/10)-9合目(8:52)-沓形分岐(9:22)-利尻山北峰(9:42/10:30)-9合目(11:11)-長官山(11:55/12:10)-第一見晴台(13:07/12)-甘露泉水(14:27/30)-鴛泊登山口(14:40)
地形図:
鴛泊
報告者:
古巻

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  3. お疲れさまでした 声を掛けていただきありがとうございます。 おかげで記憶に残…

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