10月15・16日の2日間で南会津の大博多山に秋の集中山行で行ってきた。
秋の集中山行は、当会「流」で毎年行っている会山行で、今年の秋の集中山行は7名が参加した。
7人のメンバーは3班にわかれ、それぞれの班が別のルートを辿り、2日目の12時半に大博多山山頂で合流する。それが今回のゴールだ。
この投稿では、B班の報告をさせていただく。
大博多山??
大博多山は福島県南会津町に位置する標高1,315mの山で、新うつくしま百名山に登録されている。
いわゆるマイナーな山に値するのだろう。福島県で生まれ育った、今回の報告者のわたしもこの集中山行で初めて耳にした山だ。
登山者もまばらな山だが、沢登りとなるとなおさらだ。
Webで検索しても、大博多山の遡行記録はほとんど見当たらない。
つまり、どんな沢なのか事前に把握することが困難なのだ。
初級の沢しか登ったことがない沢初心者な自分は、ここで不安がよぎる。
「果たして自分に登れるのだろうか?」
とんでもない大滝が出現したらどうするんだろうか?手がかりも足がかりもない滝ばかりなんじゃないだろうか?おそろしく険しいツメだったら登り切れるのだろうか?
そんな不安ばかりが募った。
(後で知ったのだが、地形図で「ここなら初心者でも行けるだろう」と当たりをつけて大博多山を選んだそうだ)
B班の計画
不安を覚えながらも、前夜発で南会津へ向かう。
途中、道の駅で一泊し、翌日入渓点の滑沢まで移動する予定だ。
今回のB班はルートは、1日目に滑沢を遡行し、富沢との出合い付近で一泊。翌日、富沢を遡行し大博多山へ登頂する計画である。
入渓
山行初日の朝、滑沢まで車で移動する。
林道を車で進み、すこしひらけたスペースに駐車する。各自、身支度を終え、
8:07 林道を歩き始める。
歩くこと20分ほどで沢筋と合流した。さぁ入渓だ。
浅い!歩くとチャプチャプと音が立つほど浅い。
先出ししておくと、1日目の滑沢では滝らしい滝はひとつも出現しない。あえて言えば滑沢と富沢の合流点にひとつ登場するぐらいだ。
「とんでもない大滝が出てきたらどうしようか」と心配していた自分は何だったんだろうか?そう思いながら、遡行を開始した。
沢登りというより沢のハイキングといった印象だが、それはそれで楽しむことができた。
沢幅が狭いこともあり、樹々までの距離が近く、森のなかを歩いている感じがする。
くるぶしの少し上ぐらいの深さしかない釜(釜とは呼ばないかもしれない)には、イワナが泳いでいた。それも結構たくさん泳いでいる。
迫力のある滝に出くわすことはなかったが、平和な沢歩きを楽しんでいた。
イワナを愛でたり、キノコを採ったり、まさに平和そのものだった。この時までは…。
行く手を阻むのは
Co810m 遡行開始から2時間ほど経ったところで、沢の水が枯れ始めた。
特別疲れているわけではないが、早着しすぎてもアレなので、時間調整も兼ねて休憩を取ることにした。
シンと静まり返る山の中。
すると、大塚さんがなにかの物音に気づいた。
休憩をとっている僕らの15メートルほど先から、ブンブンと音が聞こえる。
目を凝らすと黒いものが飛んでいる。
ハチだ。結構大きい。オオスズメバチだ。
少し距離は離れているが大きめの黒い個体が複数飛んでいるのが見える。
おそらくすぐ近くに巣があるのだろう。巣を守ろうと、近づいてきた僕らを羽音を立てて威嚇している。
巣は我々の進行方向にあると思われ、このまま先に進むとひとたまりもないことになるのが容易に想像できた。
スズメバチを避けるため巻くことにした。少し時間をロスするが仕方ない。
どこから巻こうか?そんな相談をしていたが、当然ハチの耳には届いていなかったようだ。
1匹のスズメバチが徐々にこちらに向かってきた。羽音がどんどん近づいてくる。
すると、ハチは一気に距離を詰め、僕らに襲いかかって来た。
狙われたのは大塚さんだ。
迫るスズメバチ。逃げる大塚さん。
一瞬肩に止まったように見えた。
あっ、刺される。
そう思った瞬間、ハチは踵を返し、巣の方に戻っていった。
威嚇のつもりだったのだろう。逃げる大塚さんを見て満足して戻っていったのだろうか。
幸い、大塚さんも刺されることなく無事だった。
ハチは去っていったが安心はできない。一刻も早くこの場を立ち去るべく、巻き道へ向かった。
「あそこで休憩とってよかった」と話しながら、ハチの巣を巻く3人。
休憩をとらずそのまま進んで行っていたら、威嚇音にも気づかず、オオスズメバチの大群に襲われていただろう。
襲われていたら、ここで今回の山行は終了になっていたかもしれない。
あるいは仮に続行できたとしても、B班の3人だけはボコボコに顔を腫らして山頂の集合写真に写るはめになっていたはずだ。
富沢に合流
無事にハチの巣を回避し、もとのルートに戻った。
このあたりから、登りがすこしきつくなってきた。
地面も泥で滑りやすく、足に踏ん張りを効かせて登る。
45分ほど歩き続け、
11:00 972mピークの東側鞍部に到着した。
ここから富沢まで下降する。下りもやや急な斜面になっているところがあり、灌木などに捕まり慎重に降りていく。
下降すること約1時間半。富沢との合流点には8×10mの滝があった。この日最初の滝らしい滝だ。この滝は下降せず、左に巻いて降りる。
12:41 富沢との合流点に到着。
合流地点は陽の光が差し込む明るい場所で、水が反射してきれいだった。
水量も増え沢幅も広くなり、やっと「沢登り」という感じがしてきた。
数時間歩いた末にたどり着いた沢らしい沢という背景もあり、喜びもひとしおだった。
ここで昼食を摂ったあと、テン場を探しながら富沢を遡行し始めた。
3〜4mほどの滝が続く。
14:20 テン場適地見つけ、荷物をおろし、タープを張り、薪を集め始めた。
2日目、富沢遡行
昨夜は、焚き火を囲み、夕食はモツ鍋を楽しんだ。すこしボリュームが多すぎた夕食の残りを朝食にする。
8:10 2日目の遡行開始。2日目は富沢を遡行し大博多山へ登頂し、下山する予定だ。
幕営地を出発ししばらくすると、2〜3mの小滝やナメが続く。
富沢の釜ではイワナを見かけることはなかった。釣り人に釣られてしまったのだろうか。
イワナはいないがキノコは健在。ナラタケ、ムキタケ、ブナハリタケなど。
滝のバリエーションも豊富で、遡行していて飽きることがない。
稜線が見えてきた。山頂付近の樹々はだいぶ紅葉が進んでいる。
何度かロープを出してもらいながら滝をクリアしていく。
難しすぎることもなく、簡単すぎることもなく、いい塩梅に楽しめる3〜4mの滝が続く。
Co1010m 沢の水が涸れはじめた。
時間は10時51分。大博多山山頂の集合時間は12時半。あと1時間半ほどで到着できるだろうか。時間も気になるが、安全第一で進んでいく。
しだいに沢型も消えはじめ灌木帯に入る。登りも一層急になってきたように感じる。
この辺りからは写真を撮っている余裕もなくなる。
地面は泥だ。滑って滑落しないよう、灌木にしがみつき稜線に向けて最後のツメをツメ上がる。
11:55 大博多山の北側尾根に到着。
大博多山山頂へ
稜線上は秋の色に色づいた樹々の紅葉がきれいだ。眺望もあり山並みが見える。
が、頂上までの稜線には藪が立ちはだかる。藪は苦手だ。
軽く休憩をとり、頂上を目指しはじめ藪を歩き始める。12時半まであと30分。
稜線上は踏み跡もあるが、そこそこ藪で、そこそこ歩きにくい。
頂上はすぐそこに見える。先に到着しているメンバーの声も聞こえてくる。
力を絞り出し、藪を抜け、
12:36 頂上に到着。A班とC班はすでに到着した。B班は最後の到着となったが、おおよそ時間通りの到着。なにより全員が無事に到着できてよかった。
山頂で昼食を摂り、集合写真を撮ったあとは、さて下山です。
B班には下山のプランが2つある、一つは初日の滑沢へ下り、沢を下降し入渓点へ戻るプラン。こちらがメインプラン。
もうひとつは登山道を下山するプランで、こちらはサブプランだ。
なお、A班とC班は登山道を下山する予定のようだ。
どちらのルートで下山するか?判断はリーダーの大塚さんに委ねられている。
大塚さんが選んだ下山ルートはサブプランの登山道を下山するプランだ。
滑沢を下降すると言い出すんじゃないかと内心ひやひやしていたが、安心した。
もはや、滑沢に戻り沢下降する気力も体力もない。なによりモチベーションが皆無だ。
こうして、登山道を下山し、B班の秋の集中山行は無事終了した。
まとめ
当初、大博多山という未知なる山(?)にビビっていたが、結果的に非常に楽しむことができた。
個人的には今年行った沢の中では、1番良い沢だった気がする。
何が気に入ったかと言われると、「雰囲気」とかそんな曖昧な回答になってしまうが、美しい景観の中歩くことができた。
集中山行という山行形態もイベント感を楽しむことができたし、紅葉もきれいだった。
スズメバチに追いかけ回されたのも、今となってはいい思い出だ。(追いかけられたのは大塚さんだが)
「伊南川滑沢~富沢」のルートは、ほとんど人の入っていないマイナーなルートのようだが、会内外問わず沢登りをする人におすすめしたい沢の一つである。
遡行図
[10月15日]駐車スペース(08:07)-入渓点(08:26)-スズメバチの巣(10:07)-尾根(11:00)-富沢出合い(12:41)-幕営地(14:20)
[10月16日]幕営地(08:10)-富沢左俣分岐(08:29)-Co1010m(10:51)-Co1130(11:30)-大博多山山頂から北方の尾根(11:55)-大博多山山頂(12:36)-横向沢沿い林道駐車スペース(14:15)
スズメバチは恐いですよね~
ご無事で何よりです。
ちょうど紅葉も見頃できれいでしたね。
会津は四季折々楽しめるところがたくさんありますので、時・所を変えてまた行きましょう。
パンケーキのようなキノコはツキヨダケかな?とすると毒キノコです。
これがツキヨダケでしたか。いつか光っているところを見てみたいです。
紅葉の時期に沢登りするの初めてでしたが、だいぶ気に入りました。またよろしくおねがいします。
キノコは、写真からだとムキタケのようにも見えますが…
見分け方はいずれ現場にて
沢も季節ごとの楽しみがあります。同じ沢でも季節が変わると印象も随分変わると思いますよ。
ただ、今回のエリアは春・秋が一番楽しめる季節だとは思いますけれども…。