中川川大滝沢マスキ嵐沢

天候:曇時々雨

体験山行2回目は、すっかり初めての沢の定番となった「マスキ嵐」。台風接近に伴う雨予報でもあり、昨今の登山事情から推測すると、山に入る人は少なかろうと思ったのだが、沢は大違いだったようで…。なんと、我々のほかに、学生と思しきグループが3パーティ(総勢20名以上)も入渓するという、前代未聞のカオスな状態になった。案の定なエピソードについては、後ほど少し触れるが、まずは当会の体験山行であるので、そちらの記録から。

当日朝、JR谷峨駅に集合して西丹沢行きのバスで大滝橋まで移動。
雨予報のせいかバスはガラガラ。バス停から大滝沢沿いの林道に入ると、ゲートの手前に車が3台ほど停まっており、沢登りらしいグループが支度をしていた。

この辺りで沢登りというと、マスキ嵐沢のほかには、大滝沢の本流筋も考えられるが、支度中のグループは若いメンバー主体だったので、やはりマスキ嵐沢なんだろうと予想。
冒頭にも書いた通り、実際には、このグループ以外にも入渓するグループがあり、昨今では、沢の中としては珍しい状況に相成った。(それとも、夏場の首都圏近郊ってこんなもの?)

我々は林道から大滝沢沿いの登山道に入り、道がマスキ嵐沢を越えるところで身支度を整える。支度中もぞくぞくと沢登りのグループが到着して、なんだかうんざりした気分になるが、仕方がない。
丸山さんが、まず体験のお二人に簡単なガイダンスを実施。
沢の装備についての説明と、今日使うロープワークの実習をして、いよいよ本番。2グループが先行したところで、少し間を空けて入渓した。

入渓前のガイダンス
体験者のお二人には、丸山リーダーから簡単なガイダンスがあった

入渓してしばらくは、ナメと3~5mほどの滝や岩の段差を快適に越えていける。1箇所、念のためロープを出して登る。

下流部の4m滝を登る
下流部の4m滝を登る
念のためロープを出して登った滝
岩の堆積したようなこの滝は、念のためロープを出して左壁を登った

歩き始めて25分ほど、上段・下段の間に左からスラブの枝沢が合流する2段滝(ガイド等ではF3と紹介されている)で、先行パーティが登攀中。順番待ちのために休憩していると、2番目に先行しているグループのメンバーが滝の中央で立ち往生。
丸山さんが見かねて、既に登ったパーティに声をかけてロープを下してもらい、立ち往生のメンバーを何とか引き上げてもらう。

2段の滝では、先行パーティが登攀中
2段の滝では、先行パーティが登攀中だったのだが…

このグループ、ロープは持参しているようだが、正しい使い方を知らなかったようだ。丸山さんは、下に残ったメンバーに声をかけてから待機させ、ロープを引いて先行した後、我々のロープを使い後続のメンバーを確保しながら登らせた。このグループは、ロープワークも沢の経験もともに不足なのは見た目に明らかだったが、先の様子を丸山さんからアドバイスされた後、先行した。

さて、続いて我々も順番に滝を登る。中央水流沿いではなく、やや滑っているが、傾斜の穏やかな右の斜面を登って全員落ち口に到達した。体験のお二人は、体格にも恵まれており、登攀には有利で羨ましい限り。

順番待ちの後、2段の滝を登る体験者
先行する学生パーティに登ってもらった後、我々の順番に…

さて、後続のパーティも某大学のワンゲルとのこと。指導者と思われる年齢の方も同行しており、ならば世話を焼くこともなかろうと、こちらが先行させていただく。

続く小滝を越えた先の6m滝では、先行パーティがザイルを出して登攀中。登攀が終わるのを待って、こちらも、体験者のためにザイルを出して登る。
ここは、水流のある中央を登る方が簡単だが、丸山リーダーは、濡れるのを嫌って右壁を3~4m上がり、途中で中央へトラバースして越えて行った。このルートはなかなか難しく、後続はほとんど中央水流沿いに濡れながら越えたのだった…。「足、ありますよ」とは丸山さんの弁なのだが…。

このルートはちと難しい...
丸山さんの登ったルートを行こうと思ったが、ちと難しく、結局仕切り直して水流沿いを登ったのであった…

そして、ここでもちょっとしたハプニングが。
後続の某大ワンゲルが、我々がロープを出して登っているところに割り込んで登攀を始めてしまったのだ。
我々は仕方なく、彼らが登り終えるのを待ってから登攀を再開したが、前代未聞の出来事に全員が唖然としたのは言うまでもない。
おまけに、そのパーティは確保支点にするためか、ハーケンをやたらに打ちまくる。ナチュラルプロテクションが使えるのに、ヤケのようにハーケンを打つ音が周囲に響き、マスキ嵐沢が気の毒になった。ハーケンを打つ練習にしても、やりすぎだっちゅうの。
こちらは呆れて、危うきに近寄らないよう彼らを先行させて、後からのんびり行かせてもらうことにした。

その先は、しばらくザイルを出すこともなく快適に進む。
4つほど滝を越えたところで、雨降りの最中だが、昼食休憩に。なるべく雨に当たらないよう、梢の下を選ぶが、ちょうど雨足が強くなり、なんとなく落ち着かないまま、おにぎりやパンを黙々と食べる。まあ、「黙食」がトレンドなので、ちょうど良かったとも言えるが…。

昼食後は、Co840の二俣までナメと小滝が続く穏やかな渓相だ。
幸い、雨も小降りになって来たようだ。ちょうど一番雨足の強いときに昼食休憩だったという間の悪さはまあ仕方ない。

上部もナメ、ナメ滝が続く
上部もナメ、ナメ滝が続く。お天気が良ければ、きれいなのだろうが、今日はあいにくのお天気である

Co840から先は水流も極端に細くなり、ほぼ涸れ沢状。
丸山リーダーは、最後の涸棚はパスしてエスケープしちゃおうか、とちょっと思案していたが、結局通常ルートを行くことにして、涸れ沢状を淡々と歩く。

Co875の分岐は、右に入り、すぐの5m涸棚は階段状なので、快適に越える。

Co875を右に入ってすぐの5m涸棚
Co875を右に入ってすぐの5m涸棚は、階段状で快適に登れる

5m涸棚から5分ほど進むと、最後の10m涸棚となる。ちょうど件の某大ワンゲルが登攀中。さらに先行していたパーティは、右手の斜面から巻き上がっていた。こちらも、何とか無事だったようで、ひと安心。中には、安定した姿勢で滝を登っていた学生もいたので、しっかりとした技術を習って、長く山を続けてほしいと思う。

予想に反して追いついてしまったが、この涸棚を登るつもりでこちらへ来たことだし、巻かずに登っていきましょうと、我々は休憩タイムに突入した。

休憩中、某大ワンゲルの登攀を見ていたが、その登り方はなかなか奇抜。一本のロープに2人・3人が数珠つなぎになって登っている。フリクションノットやタイブロックなどでバックアップを取るでもなく、途中でザイルが弛んでいても気にしていない。経験者と思われる年配の方、ロープを結んでの登攀はしたことないのだろうか…。
そもそも、先ほど抜かされた時も、その方々が若者に、抜かして先行しろと指示したようにも感じる。ハーケン然り、ロープワーク然り、この先もきちんとした技術を教えられずに登り続けるのだろうか。安全面からの懸念も覚えるが、何より若者たちが不幸せに感じられて不憫である。若い人が、山の活動に参加することは大いに賛成だが、特にクライミングや沢登りは、しっかりとした技術をもった人に教えてもらって、正しい道へ進んでくれることを願うばかりだ。

ということで、閑話休題。

危なっかしい登攀が終わり、我々の番となった。
丸山さんがリードするが、星野さんは確保の練習ということで、丸山さんからトップの確保の仕方の説明を受けての練習となる。
星野さんは、少し緊張気味だが、丸山さんの説明を熱心に聞いて、練習に臨んだ。

最後の涸棚をリードする丸山リーダー
最後の涸棚は、リードする丸山さんを星野さんがビレー

この涸棚、下部が少し被り気味だが、上部ではホールド・スタンスが豊富になる。
下部の一歩が難しい場合に備え、途中にランニングビレーで使った、ヌンチャクをぶら下げたままにしたので、不安であればそれを使うこともできた。
落ち口直下は極端に幅の狭いチムニー状で、無理やりずり上がる感じで抜けた。
体験参加のメンバーも無事に登り切り、ひと安心。

この上の一歩がやや遠い
この上の一歩がやや遠く、乗り越すのに少し苦労する

この涸棚を最後に、本当の詰めとなる。落ち葉の積もった窪状を稜線めがけて急登する。最後のザレた急斜面には、固定ロープがぶら下がっており、ありがたく利用させていただく。

稜線直下の急登
稜線直下の登り。藪はないが、ザレた急斜面だ

今日は、想定外が何だかいろいろとあったが、体験のお二人にも意味のある山行になっただろうか。幸い、昼を挟んだ短時間を除き、それほどの雨にもならずに山行を終えることができてよかったよかった。

そう言えば、下山に使った権現山の登山道、数年前と比べて、随分歩きやすくなっていた。一時、西沢本流の登山口に通行止めの看板が出ていたと思うのだが、今はどうなのだろうか。
その歩きやすくなった道を快調に下り、西丹沢自然教室前で装備を片付けた後、いい具合に到着したバスで山北駅前まで移動。
いつものさくらの湯で汚れを落としてさっぱりとしてから、駅前で軽く食事をして解散となった。

中川川の吊り橋を渡れば、すぐに西丹沢自然教室だ
中川川に架かる吊り橋を渡り、西丹沢自然教室へ。バスの時間にも、余裕で間に合いほっと一息。

遡行図(20210628_丹沢・マスキ嵐沢)


メンバー:丸山(L) 坂部 星野 古巻 ほか体験者2名
山域:丹沢
山行形態:沢登り
コースタイム:
大滝橋BS(8:35)-マスキ嵐沢入渓点(9:10/10:20)-2段滝・F3(10:45/11:30)-6m滝(11:35/12:00)-Co810付近・休憩(12:13/28)-Co840分岐(12:38)-Co875分岐(12:55)-10m涸棚(13:00/14:00)-稜線(14:15)-西沢本流(14:53)-西丹沢自然教室(15:17)
地形図:中川
報告者:古巻

“中川川大滝沢マスキ嵐沢” への4件の返信

  1. こんにちは
    体験させていただいた池内です
    おかげさまで、とても楽しい沢登りができました
    是非またご一緒させていただきたいと思います
    どうもありがとうございました

    1. 体験山行の感想をお寄せ頂きありがとうございました。無事に完了できてホッとしております。

    1. 記録担当者です。
      コメントありがとうございます。

      概念図=遡行図と解釈して、返信しますが…
      ご指摘の通り、確かに少し手を加える必要のある仕上がりと思います。

      ただ、山岳会のホームページですので、当会の広報活動の一環ではありますが、活動の記録を公開というかたちで残しているアーカイブでもあります。
      初心の会員の、少し「適当」な記録や遡行図が掲載されることもありますが、ガイドブックではありませんので、その辺りはご寛恕いただければと思います。しかし、決していい加減に作ったものではありません。

      とは言え、公開する以上はある程度の精度は必要だろうという議論にもなりましたので、遡行図に関しては、山行リーダーと記録担当者で事前にレビューをしてから公開することとしました。

      ご指摘のおかげで、会員間のいい議論のきっかけになりました。

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