ノロ川桃洞沢-中ノ又沢-岩屋沢-石黒沢

森吉山の山麓には、九階滝、桃洞滝、安の滝等の特徴的な滝や長大なナメ・おう穴・淵をともない優雅に流れる沢があり遡行してみたかったが、計画しても天気が合わなかったり遠いのとでなかなか実現しなかったが今回やっと実施できた。しかし、桃洞沢~中ノ又沢を遡行し、ハプニングで岩屋沢~石黒沢を下降することになり、原計画の赤水沢を下降して九階滝に立ち寄ることは果たせなかった。

10/5(土) 曇り時々晴れ

前日に新幹線で秋田駅に行くと小雨模様の天気で少々増水の不安があるが、カーシェアで道の駅五城目でSBした。翌日、コンビニで朝食を済ませ、森吉山鳥獣保護センターに向かう。鳥獣保護センターはオープン前だったが、奇麗な施設で下山後時間があったら情報収集に立ち寄りたい施設だ。身支度をしていると施設の職員の方の車がきて施設の方に向かう。我々は、8:30頃に出発する。

桃洞滝までは遊歩道になっていて、黒石川にかかる橋を渡る。ここらへんはブナ林でアカゲラの生息地ということだがドラミング音は聞こえず全く気配がない。静かな森をキノコを少し採りながら歩を進めていく。途中、ナラタケを数個手に持っている鳥獣保護センターの職員と思われる方に行程を尋ねられたのでぐるっと回ることを伝えた(今回は騒ぎにならないように、車に10/6下山予定と計画書をフロントグラス下に置いておいた)。結局、今回の山行で出会ったのは遊歩道であったキノコ採りのおじさんと職員のおばさんのみであった。

遊歩道を小又峡(こちらも素晴らしい景観が展開するルートのようだが、ちと厳しい)への道を見送り、立川橋を渡って少し行くとノロ川の流れが沿うようになるが、薄茶色の流れで結構深く入渓する気にはなれない。赤水沢への分岐で一度ナメ状の川原に降りたつが、やはり結構深いのですぐに遊歩道にもどる。幅広でスダレ状の優美な横滝(2x3m)がかかるポイントで川原におりて滝の左側を通過するが、その先も結構深く遊歩道に戻った。

結局その先の水深が低くなるポイントから入渓し、しばらくナメ状の流れを行くと丸太を並べたポイントとなる。遊歩道を右岸に導く構造物だが、ボルトで丸太を岩盤に固定してあった。右岸には30年前ごろに発破で美しいスラブを自然破壊して作ったという遊歩道が神秘的な女滝と言われる桃洞滝までつながっている。我々は、遊歩道は使わずナメと両岸に展開するスラブを楽しみながら進む。

少し行くといよいよ桃洞滝が見えてくる。左からは六段ノ滝が流れこんでいる。

六段ノ滝は4段目(3, 3×6, 10×12, 8m)ぐらいまでしか目視確認できなかった。おそらくその上にも滝があるのだろう。

本流にかかる桃洞滝(30x45m)は、素晴らしいスダレ状滝でしばし写真撮影タイムをとる。その後、右側にステップが切ってあるのでそれを利用して快適に登る。ちょっと増水しているようで、上段のステップに水流があり気になったが問題なく通過できた(下降用?の残置支点が終了点に2個あった)。

水の色が薄茶色~薄緑色なのが少々残念。

桃洞滝の上は幅広のナメが展開されるが所々おう穴がある。注意して歩を進めていたが、川面の反射で判別がしにくく後続の高森さんが早速足のつかない深いおう穴にはまり洗礼を受けた。

緩やかにスラブ・ナメ・小滝・おう穴が繰り返される他にはない景観が続き別天地にいる様な感覚、歩きやすいのでどんどん歩を進めてしまうのがもったいない。

桃洞沢ではちょっとした滝の通過にはステップが岩盤に切ってあり通過は容易であった。

日帰りルートの左沢を見送り右沢を詰めていくと、大分尾根筋が低くなってくる。尾根上には桃洞・佐渡の原生杉が1本ずつ並んで生えているのが面白い。

八段ノ滝を伴う枝沢が右から合わさるポイント。鞍部まですぐに行けそうだ(が、実は結構奥深い)。

流れが一旦30cmぐらいに絞られ淵となる地点を通過する。

すると中ノ滝がすぐに出てくる。2m、幅広4m2条の2段滝の構成で、下段は右、上段は左のステップを拾って容易に越えられる。上段には下降用の支点が埋め込まれていた。

続いて、幅広のナメの奥に男滝、5mと2mの2段スダレ滝が展開するポイントとなる。こんなに幅広のスケール感のあるナメは初めてだ。下段、上段ともに右のステップとトラロープを利用させてもらいこの滝も通過は比較的容易だ。

その先は大きな滝はなく、延々とナメとおう穴を伴う小滝が続く。

おう穴ポイントに泡が円形にまとまりゆっくりとクルクルと回っているのが面白かった。

これだけの円形泡に成長するのにどれだけ時間がかかったのですかね。

この先もナメ状が続くが、地図読みして目的の鞍部を目指す。途中の枝沢に赤テープがあったので、そちらの方向に詰めていくと鞍部で裏安歩道に行き合う。

この付近の登山道は尾根筋についているので、桃洞・佐渡の原生杉がまじかに見られる。

登山道を北西方向に少し行き、シシ穴トヤバ沢に下降した。この沢もナメ状が続き下降しやすい。

中ノ又沢の出合いで10x15mのスラブ滝がかかり、残置スリンゲを利用して懸垂下降した(左岸のブッシュを掴んで下降することが可能な程度の斜度であったが念のためロープを使用した)。下降したところが平滑ノ滝上であった。

ここから中ノ又沢を安(やす)の滝上まで下降してみる。平滑ノ滝はほぼ両手を使わずに下れる斜度のポイントを選んで下降する。

その先は、広いナメとスラブが少し続く。

安の滝上部に到着。高低差90mのスダレ状巨瀑で日本の滝100選において選考時に第2位にランクされた滝だ。ぜひ下から見てみたいところだが、山道をつかってここから往復3時間以上かかるので今回はやめておいた(下から1時間程度でアプローチもできるが、林道が工事中で現在通行止めになっている)。

滑り落ちると確実に死んじゃうので近づくのはここまでにしました。

平滑ノ滝に戻り、その先を詰めていくと、おう穴と淵が連続するようになる。ところどころ立っていて、通過に気を使う。自分はスタンスとした苔がズレて滑り、痛恨の濡れパンになってしまう。

右から金兵衛沢が流入する出合いには、金兵衛滝(15x40mの六段滝)がかかり独特の景観を醸し出している。

金兵衛沢出合から中ノ又沢は甚兵衛沢と名前を変えるが、渓相もナメからブナ林の中の流れに変わり、イワナもちらほらと走るようになる。テン場適地が早速見つかりここで幕とした。

10/6(日) 晴れ

翌日は、7時過ぎに赤水沢源頭を目指して幕場を出発する。ブナ林の中に細い流れが、くねくねと続き、イワナも良く走る。安の滝は魚は登れないので、昔の人が放してこの狭い流域に生息するようになった貴重なイワナと思う。GPSに細かい地形図をDLするのを忘れ現在地の判別がしにくいので、地形図とコンパスを駆使して慎重に進み、目的の最後の枝沢を詰め上げた。

詰め上げたところは、なだらかなブナ林の広がる薄い藪の斜面で、岩屋沢の方に行かないように、コンパスで東にルートをとり、赤水沢源頭とおぼしき沢形に下降した。

少し下降すると、スラブ滝15x20mとなり右岸の潅木帯を巻き降りていく。赤水沢源頭の地形図ではもっとなだらかに思えるが、地形図等高線は10m間隔なのでこのようなこともあるのだろうとそのまま下降を継続する(ここで岩屋沢に入りこんでいると気づけば良かったのだが、赤水沢と思い込んでいた)。

その先は、イワナの走るなだらかなナメが続く渓相がしばらく続く。枝沢の流量比が高度計から想定される現在位置の地形図と一致しない箇所が何ヵ所かあったが、そのまま下降していった。

すると、完全にヤブ化した林道が横切る鉄管トンネルが出てきた。赤水沢にこんなものがあると想定していなかったので驚いたが、昔林業で使っていたものだろうと考えそのまま下降を継続する。

渓相はイワナの走るナメがいつまでも続き中々良い。林道跡から1時間程度下ったところで1:1で枝沢が右側から流れ込んできて、赤水沢だとするとありえないことに気付き、大雑把なGPSによる位置をみると岩屋沢側に入りこんでいることが判明した。この時点で11時過ぎで引き返すとヘッデン下山か赤水沢でビバークになる可能性が高く、国道まで5km程なのでこのまま下降した方が良策と判断し下降を継続することにした。(この時点で本日中の帰京がかなり危うくなったので会社を翌日休めるか確認する。)

更に1km程ナメを下降していくと、段々両岸が立ってきて大きな滝となって前方が切れていた。

クライムダウン出来ないので、右岸の泥斜面を登り岸壁の弱点を通過して滝の右岸側に出て懸垂下降(5m+20m)でフリーで下降可能な斜面にでて滝下に巻き降りた。

振り返ると前衛の8m滝とその奥に20m滝を備える結構大きな滝であった。このような滝がいくつか続くと今日中に下山できなくなるので、正直青くなったが、幸い大きな滝はこれだけだった。

この滝からは、しばらく大きな岩が転がる比較的斜度のある地帯の通過となるが難しいところはない。

大滝から40分程度の下降で石黒沢と合流し再び穏やかな渓相となる。

ナメっぽい所も時々出てくるが、上流のナメと異なり良く滑る。うっかり滑って今日も濡れパンになってしまう。

石黒沢に入るといくつか10m以下の滝が出てくるが、クライムダウン可能か無理な滝も比較的明瞭な巻き道がついていた。

左10m、右が10x15m2段滝。右岸側に巻き道がついていた。

川原に釣り師と思われる踏み跡が見られるようになりかなり安心した(もう禁漁期なのでキノコ目当てですかね)。

最後は堰堤を右から巻き降りると国道はすぐそこであった。

石黒沢出合の渋黒川右岸側の駐車スペースに山道が続いていたが、その入り口には熊による人身被害が多発している地帯で入山禁止の措置がとられていた(熊に出合わないで本当に良かったです)。

そこから渋黒川沿いの国道を1時間程度かけて新玉川温泉入口まで登るとスマホが通じる様になったので、タクシーを呼んで出発地点に戻ることができた。しかし、かなり遠回りになり、結局秋田駅で終電に間に合わず翌日帰京することになったのでした。

今回の失敗の主因ですが、①赤水沢にいると信じてしばらく疑わなかった思い込みによる方角確認の欠落、②地形図の肝心な鞍部地点に標高を書き込み地形の微妙な変化が読み取れなくなっていたことによる源頭部でのルーファイミスにあると思います。源頭部はかなりいりくんだ複雑な地形だったのでよくよく慎重にルートが正しいか何度も確認すべきでした(GPSの地形図もちゃんとDLしておかないといけませんね)。
結局、九階滝にも赤水沢にも行けなかったので、それは次回の楽しみとなったとしよう。


山行最終日:2024年10月6日
メンバー:坂部(L) 高森
山域:太平山・森吉山
山行形態:沢登り
コースタイム:
10/5:森吉山鳥獣保護センター(8:30)-桃洞沢・赤水沢分岐(9:30)-桃洞滝(10:08)-裏安歩道co870m付近(12:39)-シシ穴トヤバ沢経由中ノ又沢入渓(13:50)-co870m付近幕場(15:46)
10/6:co870m付近幕場(7:15)-co950m付近鞍部(8:58)-岩屋沢林道横断地点(10:15)-石黒沢(13:47)-国道341号(15:33)-新玉川温泉入口(16:46)
地形図:玉川温泉
報告者:坂部

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