こんにちは、牛久です。
恒例のゴールデンウィーク紀伊半島遠征で大峰の舟ノ川イブキ嵓谷に行って来ました。丸山さんから今年はイブキ嵓谷と聞いたのは昨年の秋のレスキュー訓練の時だったか。
なじみのない関西の沢なので名前を聞いてもピンとこなかったが会の他のメンバーから「憧れの沢だ」と聞いたりしたので期待が膨らんだ。それに丸山さんと一緒に行けるまたとない機会なのでその時に参加を決めていた。 調べてみるとなかなか刺激的な内容の沢だったので、体重を絞ったり歩荷トレをしたり体調管理にも気を配った。装備も少しずつ軽量化を進めた。
天気予報がコロコロ変わり実施が危ぶまれたがどうにか行けそうだと連絡が入る。5月1日、前泊地に向けて出発。少しでも高速代を浮かせたくて新富士インターまで下道を使った。家からここまで強い雨が降っていて通り過ぎる川は増水し濁っていた。高速道路を快調に進み浜松辺りから雲間から太陽がのぞきだした。
新東名、東名阪とも特に渋滞は無くスムーズに走れ、天理市に17:00ころ到着。途中で夕食を取るつもりだったが上手くタイミングが合わなくて気が付くと町を離れてしまい営業しているお店が無くなったのでコンビニ弁当で済ませた。
待ち合わせの高野辻休憩所には19:30に到着。困ったことにトイレや水道が無い。しかも外灯も無いので真っ暗だ。丸山さんはまだ来ていない。仕方ないので一人で入山祝いを始める。風がビュービュー強く吹いているので車内に入るが時おり車が揺れるくらい強く吹いた。待ち合わせ時間の22:00を過ぎても到着する気配がないので先に寝ることにした。
翌2日、朝4時ころ目が覚める。強い風に車が揺すられてあまり寝た気がしなかった。後ろに丸山さんの車があるのを確認し安心して二度寝に入る。
5時になり起き出して挨拶に行く。丸山さんは車中でなくテントを張ったがやはり強い風に寝られなかったとこぼしていた。

空は雲が多いが東の空は晴れている。6時前に出発。舗装はされているものの狭い林道には木の枝や落石が転がっていてその都度端に退かせながら約40分で湯の又登山口に一台デポしてから入渓点の七面山登山口駐車スペースに到着した。

舟ノ川の濁りは無く、約6cmの増水。手を浸けるとそれほど冷たくはなかった。6時40分、いよいよ2日間の沢旅のスタート。出だしは癒しの渓相。ただ、苔が付いているわけではないのにやけに滑るので慎重に歩くが気を遣った。左右岩壁から枝沢が滝となって落ちている、とても奇麗だ。




癒し系だったのは出だしだけで直ぐにゴルジュになった。両岸が陽射しをさえぎり冷んやりしてくる。なるべく水に浸かりたくないなぁーなんて思ってもそんな優しい沢ではない。
沢幅が狭くなり水深が深くなると泳がないまでも腰上まで浸からないと進めなくなった。いよいよだ、覚悟を決めてさあ行くがやはり「ナニコレめっちゃ気持ちいい!」とはならない(笑)特徴的な函は右をへつった。


有名ポイントのアメ止滝は手前に二つ淵があり、その奥に6mの滝からなっていた。遠目から見ると手に負えないようだった。奥に見える滝の様子を見に少し進んでみたが手前の淵が深そうだったので諦めて右手から巻いた。巻きの途中、上から滝を覗きこむと淵はそれほど深くなく最後の滝も左から回り込むと取りつけて登れそうに見えた。落ち口にはビレイ用のためか残置スリングが垂れていた。



8:30 不意にそこに辿り着いた。桶側滝2段25m。少し増水しているのもあり写真で見るよりもはるかに威圧的でデカい。水は上段から落ちてから右側にくりぬかれたトンネルを抜けて流れ出ている。渕尻から奥を伺うとトンネルの先に光が射している。抉られた空間の大きさに言葉も出なくただじっと見入ってしまった。深い淵を泳いでこの穴の奥まで行きたくなった。トンネルを抜けた先から眺める滝の姿はどんなに見ごたえがあるだろうかと思いをはせる。これを生で見ることが出来てほんとに良かった。
余りの迫力にこの滝を登るイメージすら湧かなかったが過去に猛者たちが落ち口直下まで登っている記録もある。一段目は右に残置ロープが垂れていたので比較的容易に登れそうだった。


ロープを出して右岸から巻きに入る。斜面には草木がそれなりに生えているがこれが何しろ弱くて荷重を掛けるとあっけなく抜けてしまうのであてにすることが出来なく気を使った。一つ上のS字スライダー状斜瀑も一緒に巻き滝上で休憩(9:30)
次の2m滝も丸く深い釜を持っていて取りつくのが厄介だった。のっぺりした右にワイヤーが垂れていたのでこれを使って左にトラバースするのが早そうだったが丸山さんがワイヤーを使い1mほど上がったところで何とワイヤーが切れてしまった。仕方なく油断するとドボンしそうな傾斜している足場をへつるが私が足を滑らせ絵に描いたようにドボン!壁に手を伸ばすが上手いホールドが無く復帰できない。体が水流に引き寄せられ岸から離れていく、泳いで壁に戻ろうとするが荷物の重さもあり取りつけない。仕方なく流れに任せて釜を回るように渕尻まで戻された。渕尻が浅いのを確認していたので落ち着いていられた。リトライはより慎重にへつり無事に突破出来た。
10:25 Co810カラハッソウ谷出合に到着。白っぽい岩がS字状にゴルジュを形成していてこちらもいい雰囲気だ。左のイブキ嵓谷に進むと直ぐにくの字滝。悪くてここも右岸高巻き。ルート取りのせいかこの巻きも怖かった。11:15に沢に復帰。


11:45大きな釜を持つスライダー状。もう巻くのに疲れて来たのとちょっと泳げば時短になるので気合いを入れることにした。ところが釜の半分くらいまでは立って歩けたので泳いだのは6mくらいだけだった。思ったよりも離水も簡単だった。ロープを引いたまま足場が安定するところまで上がり丸山さんと荷物を引き上げた。
小休止後、Co860巨岩が積み重なる滝。またまた右岸から巻く。なるべく小さく巻こうとするが上手い具合にトラバースできそうなルートが見つけられないまま上へ上へと追いやられる。この巻きも1時間食った。この後は巨岩ゴーロ帯が続く。なかなか一筋縄ではいかせてくれない。傾斜もあり体力を使った。

Co945で昼休憩。この辺りは一旦穏やかになり幕営適地があった。ただなるべく黒滝近くまで進みたかったのでスルー。「早く荷物を降ろして吞みたい。」こればかり頭に浮かんだ。

インゼルにニョキっと立つ岩柱(これがローソク岩?)に面白がったりすると本日の核心となる3つ俣に到着。本流は右沢だ。出合の30m滝は登れないので真ん中涸れ沢から上がり右にトラバースするルートを選択したが進みたい方は岩壁が続きトラバースに移れないままかなり上部までガレを登らされた。踏み跡とも獣道ともとれる跡がうっすらついていてかえって悩まされた。この巻きも1時間程度食った。かなり大きく巻いたので15m滝と25mも一緒に巻いてから沢に復帰。この後伏流となり前方に黒滝が見えてきた。



他の方の記録でこの伏流は黒滝直下まで続くとあったのでテンバは水が戻ってから探すことにした。
16:30水流が戻り黒滝基部まで幕場を探すがなかなかいい場所が見つからなくて苦労した。少し下流に戻りどうにかツエルトを張れるところを拓き荷を下ろした。
焚火を起こし夕食を楽しんでいると妙な違和感が。。丸山さんが「地震だ」と言ったかと思うとグラグラ横揺れしだした。10~15秒くらいか?揺れが収まったと思ったらテンバの少し下流側のルンゼの上部から音を立てて石が落ちて来た。危なかった。近いものはツエルトから10m離れていなかったと思う。辺りに石のこすれた匂いが立ち込めた。
夕食は個食。ご飯を炊きキャベツベーコン、ソーセージ、いわしの缶詰め、味噌汁と大変豪華なメニューとした。焚火を囲み、二人で色々話が出来たのも良かった。
その後、心配された余震は無く20:00頃シュラフに潜りこんだ。
翌3日、5:00起床。6:30出発の予定が少し遅れ7:00出発
朝一から核心の黒滝脇のルンゼ登攀だ。入念にストレッチをした。先人の記録を見ると通過時間がまちまちなのはルート取りによるためか?丸山さんは水流右手のルンゼ左脇から取りつき、1ピッチの後右に乗越てルンゼを頭まで一直線に抜けるルートを取った。水流の右にピナクルがありその右を抜けるようだ。とても悪く見え、時間が掛かることが予想できた。

出だしから悪く5mほど上がったところで行き詰まり戻ってきた。作戦変更し丸山さんが空身でリード、私はフォローで荷上げを頑張った。
万が一落ちたらどこまで行くか分からないのでビレイも気を抜けない。うまい事ハーケンが打てると安心したがなにぶん足場が悪いうえに荷物が重くてバランスを保つのが難かしく回収には苦労した。
苦労した1ピッチ目の後3ピッチ目までは怖いながらも順調に行った。4ピッチ目からさらに壁が立って来たのでフラットソールに履き替えた。セカンドの私はうまく体を引き上げられないところもありロープを固定してもらってごぼうで登る場面もあった。



5ピッチ目。いよいよ頭が近くなる。最後、岩が被っているのが下からでもわかる。厄介そうだ。丸山さんは少し試行錯誤していて私はうまく無事に抜けてくれと願うしかなかった。意を決して進みだした。ロープが伸びていく。あと少し。やった突破した!「ビレイ解除」のコールが誇らしげに響く。ホッとした。
これが最後の荷上げだと思い気合いを入れてスタート。狭い岩の間を体をくねらせて抜ける。いよいよ頭直下のハングパート。左の壁に足を乗せながらハングをかわし上へ抜ける。高度感もあり緊張した場面だった。
ルンゼを抜けるのに5時間かかった。途中、滝の飛沫だか雨だかわからないが少し濡れることもあったが大きな支障にはならなくて良かった。眼下にあのピナクルが見える。
靴をはき替えながら休憩。ホッとして顔もほころぶ。ここからは癒しの沢歩きだね、などと軽口も飛び出す。
眼下の沢には続く25m滝が見えたのでこれを巻いてから沢に復帰することにした。滝上は水量が少なくなったが傾斜はきつく2~4mの垂直の滝が続く、中には登れず巻くのがめんどうなものもあり疲れた。


長い詰めに疲労も溜まり、二人とも無言になるが休むことなく歩く。一歩一歩進むと稜線は確実に近づく。ようやく明星ヶ岳直下の登山道にでた。丸山さんと固い握手を交わす。山頂は風が強くガスっていたのでニコパチ写真は撮らないで直ぐに下山にはいった。



山頂から南西に伸びる尾根には五条市による距離標識が立てられていてラクチン下山を期待していたが踏み跡はところどころ薄くなり四方八方に進んでいて時おり尾根を外してしまい時間が掛かってしまった。
途中で開けた場所があり、遠くの山中にくっきり浮かぶ黒滝が見えてちょっと感動した。
デポした湯ノ又登山口に降りたのは暗くなり始めた18:50だった。入渓点まで移動しもう一台を回収し解散した。
てんこ盛りの内容でとても充実した2日間だった。
今回、巻や直登時にバイルを多用した、頼りになる相棒だ。さらに愛着が湧いた。
丸山さんと、あと何回一緒に沢に行けるか分からないがこの時間を大切にしたいと思った。
2日間ありがとうございました。






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